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企業買収後の諸課題 |中国進出コンサルティング

企業買収後の諸課題

出口戦略(エグジット・ストラテジー)

中国内国会社への投資の後に外国会社に生じる リスクと、当該投資から完全に撤退する方策について、以下に解説します。
投資の後の外国会社に生じるリスクとしては、政治リスクや人事労務リスク等があり、外国会社が投資から撤退する場合の具体的な出口戦略としては、株式の売却、会社の清算 、事業譲渡等による事業の売却などがあります。

■ 外国会社に生じるリスク

[政治リスク]
中国における最大のリスクは、政治の透明度と予測可能性が低いことです。いうまでもなく、政府の政策の動向は企業買収時のみならず買収後にも大きな影響を与えます。2010年9月の尖閣諸島中国漁船衝突事件後に中国が行った事実上の輸出規制等、法律が都合のいいように整備・運用される傾向のある中国では、企業買収時の計画を全うできない可能性も大いにあります。
これは2012年9月の尖閣諸島国有化の際にも顕著に現われました。具体的には日本からの輸入品の通関の厳格化や遅滞、日系商品の不買運動や日本企業への発注キャンセルや取引停止など、政治の状況により中国はさまざまな報復措置を講じる可能性があります。
さらに、中央政府と地方政府機関の足並みの不揃いや、改善されつつあるものの経済法制度の遅れなど、政治に起因する リスクは依然大きく、 買収後も政府の動向、最新の法規、特に各種許認可・ 審査機関の動向については、常に注目する必要があります。
[人事労務リスク]
企業 買収後に直面する実務面での問題として、人事労務 リスクがあります。経営の有効性と効率化を図って企業買収を行い、その後、人員削減を必要とする企業もでてきますが、中国においては人員削減は特に注意が必要です。
中国には労働者の権利を保護強化するための労働契約法があります。企業に対して、従業員の雇用の延長を図るなどの規定が含まれます。
さらに、中国では法定解雇事由がなければ解雇できません(労働契約法39条~ 41条)。
たとえば労働契約法41条では、人員削減(整理解雇)について次の4つの状況に該当し、かつ削減人員が20人以上、または20人未満だが総従業員総数の10%以上の場合には、使用者には労働組合または従業員全体に対して説明責任が課されています。
  • 企業破産法の規定での企業再編を行う場合
  • 生産・経営に著しい困難が生じた場合
  • 製品業種の変更や、重大な技術革新や経営方式の調整があり、労働契約変更後においても人員削減が必要な場合
  • その他の労働契約の締結時に依拠していた客観的な経済状況に重大な変化が生じ、労働契約を履行することができなくなった場合

実際に人員を削減する際は、労働組合または従業員の意見聴取後に人員削減案を労働行政部門に報告することが要求されています。このように、不当な理由による人員削減を規制し、労働者の権利の保護を図っています。
当該削減の人選についても労働者の権利の保護を図っています。具体的には、比較的長期間の期間の定めのある労働契約を締結している労働者、期間の定めのない労働契約を締結している労働者、世帯に他の就業者がおらず高齢者や未成年者を扶養する必要がある者は、解雇してはならないと規定されています。 このように中国においては機動的な人員削減が困難となることが予想されるため、アウトソーシングを積極的に利用したり、労働契約期間の調整等で対応したりすることを視野に入れる必要があります。
また、整理解雇や破産による解雇等の場合にも、原則として勤続年数に応じた経済補償金の支払が義務付けられる点にも注意が必要です。
2008年1月1日施行の新労働法は、旧労働法と異なり、労働契約期間満了時に従業員が労働契約更新を希望しているにもかかわらず、企業側が労働契約を更新しない場合でも、原則として経済補償金を支給する必要があります。
ただし、企業側が従前と同等以上の条件で労働契約の更新を希望したにもかかわらず、従業員側が退職する場合には経済補償金を支払う必要はありません。

■会社の清算

[株式の売却]
所得税法上 、株式譲渡により取得した対価が株式の取得原価を上回る場合、株式の譲渡会社に対して キャピタル・ゲイン課税がなされます。キャピタル・ゲイン課税が発生する場合、株式の譲受会社はこれを源泉徴収しなければなりません。また、証券取引所を通じて上場企業の株式を売却する場合には、 証券取引税が課されます。
[会社の解散]
会社の解散とは、会社の資産負債を清算し、会社の法人格を消滅させる手続です。会社解散手続は、以下のとおりです。
  • 外商投資企業を意図的に解散する場合、原則として当該企業の最高議決機関が解散決議を行い、所轄商務部門の認可を受ける(会社法104条)。
  • 外商投資企業は、その解散につき所轄商務部門の解散の認可を受領した日から15日以内に、清算委員会を成立させ、清算手続を開始する(184条)。
  • 清算委員会は成立日から10日以内に構成員のリストを工商部門に提出する(186条)。
  • 清算委員会は、債権者に債権の届出を催告し、貸借対照表および財産明細表を作成した後、清算計画を立て、会社の最高権力機関または人民法院に報告し、 審査を求める(185 ~ 187条)。

また、会社の財産で清算費用、従業員の賃金、法定補償金等を支払い、未納の税金も納付し、会社の債務を完済した後の残余財産は、出資者の出資比率に従い分配することになります。

・ 清算が完了した後、清算委員会は清算報告を作成し、会社の最高議決機関または人民法院の確認を得た後、工商部門で抹消登記を行い、会社終了の公告をする(189条)。

なお、抹消登記に必要な書類には以下のものがあります。

  • 清算チーム責任者が署名した「外商投資企業抹消登記申請書」
  • 審査許可機関の抹消に同意する許可書類
  • 法律に基づいて作成された決議または決定
  • 企業権力機構または裁判所に確認された清算報告書
  • 分公司の抹消登記証明
  • 営業許可書の正本と副本

■事業譲渡等による事業の売却
事業譲渡や合併によって、投資先の中国内国会社の事業を他社に売却するという方法も選択できます。
事業譲渡の場合は、売却した事業の対価が出資先の中国内国会社に支払われるので、結局この資金を外国会社株主が回収するためには、当該中国内国会社を清算するなど、さらに手続が必要となります。
合併の場合も、合併存続会社の株式が 割当てられるので、これを処分するための手続が必要です。統合後の人事の重要性などM&Aにはたくさんの不確定要素が伴います。そして、その不確定要素は社員の職業安定性の問題につながるため、合併後の社員のモラル低下を導く恐れがあります。
一般的に、M&Aを行った企業の8割が、M&A後に何の価値も生み出せず、むしろ合併前の企業価値の半分以上を失うといわれています。そのためM&Aを行う際は、計画の早い段階から適切な法律・会計の専門家と協力体制を築くなど、手段を講じる必要があります。M&A終了後も継続して当該専門家等と協力していくことが重要です。特に、中国のように法が不透明かつ未整備の国においては、M&Aの前後において、 リスク管理を入念に行うことに留意する必要があります。

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