税務・税法
目次
1.ラオスの租税法 | ■税目の種類 ■直接税と間接税 |
2. 個人所得税 | ■個人所得課税の概要 ■ラオスにおける所得税額の計算 ■所得税額の計算 ■ラオス人の給与所得の累進税率 ■給与所得以外の税率 ■申告・納付手続 |
3.事業所得税(Profit Tax) | ■納税義務者 ■税額計算 |
4.付加価値税(Value Added Tax) | ■付加価値税の概要 ■納税義務者 ■税率 ■納付税額の計算 ■申告・納税 |
1.ラオスの租税法
■税目の種類
ラオスの国内法においては、以下のような種類の税金が定められています(2005年租税法8条、9条)
税金 | |
---|---|
直接税 | 利潤税(法人所得税、Profit Tax) |
所得税(Income Tax) | |
最低代替税(Minimum Tax) | |
土地税(Land Tax) | |
商業認可料(Business Licenses) | |
輸入税(Import Duties) | |
輸出税(Export Duties) | |
登録料(Registration Fees) | |
天然資源税(Natural Resources Taxes) | |
木材ロイヤルティ(Timber Royalty Receipts) | |
水力発電ロイヤルティ(Hydropower Royalties) | |
間接税 | 個別物品税(Excise Tax) |
取引高税(Business Turnover Tax) | |
付加価値税(Value Added Tax) | |
関税(Customs Duties) |
■直接税と間接税
- ●直接税
- 税金の徴収・負担の方法により「直接税」と「間接税」に分かれており、直接税とは、税金を納める義務がある者(納税義務者)と、税金を実際に負担する者(担税者)が同じである税金をいいます。ラオスでは、利潤税、所得税等がこれに該当します。直接税に関しては、財務省内の租税局が管轄しています。
- ●間接税
- 間接税とは、直接税と異なり、納税義務者と担税者が異なる税金をいいます。税金の負担者が直接ではなく他の納税義務者を通じて間接的に国に税金を納付するため、間接税と呼ばれます。ラオスでは取引高税、付加価値税、関税等がこれに該当します。間接税に関しては、財務省内の関税局が管轄しています。
2.個人所得税(Income Tax)
■個人所得課税の概要
ラオスに居住する個人や日本からの現地駐在員についての個人所得税額を計算する場合、まず「居住者」であるか「非居住者」であるかを判定する必要があります。この居住性により、課税される所得の範囲が異なります。
■個人所得課税の概要
ラオスに居住する個人や日本からの現地駐在員についての個人所得税額を計算する場合、まず「居住者」であるか「非居住者」であるかを判定する必要があります。この居住性により、課税される所得の範囲が異なります。
■所得税額の計算
課税される所得金額を算出した後、所得税率を乗じて所得税額を算出することになります。個人所得税率は、従来はラオス国民であるか外国人であるかによって税率が異なりましたが、2012年1月より、一部の外国人労働者を除き、一本化されています。個人所得税の税率は以下の通りです(2005年租税法60条)。
■ラオス人の給与所得の累進税率
月額課税所得(キープ) | 税率 |
---|---|
1~1,000,000 | 0% |
1,000,001~3,000,000 | 5% |
3,000,001~6,000,000 | 10% |
6,000,001~12,000,000 | 15% |
12,000,001~24,000,000 | 20% |
24,000,001~40,000,000 | 25% |
40,000,001~ | 28% |
※2012年1月以降
■給与所得以外の税率
給与所得以外の所得については、以下の税率で課税されます。
所得の種類 | 税率 |
---|---|
特許権、商標権等の使用料等による所得 | 5% |
利子、投資による配当所得 | 10% |
非営利的な国営建設事業及び社会団体等による所得 | 10% |
土地又は建物等の不動産による賃貸料等の所得 | 15% |
■申告・納付手続
所得税額の算定を行った後、個人所得税の申告、納付手続きを行うことになります。申告・納税については、対象者の収入内容によって異なります。
3.事業所得税(Profit Tax)
事業所得税とは、個人又は法人が事業として物品の製造、販売もしくはサービス等の役務提供の結果として稼得した所得に対して課税される税金です。ここでは、法人の場合を前提に解説をしていきます(2005年租税法30条)。
- ●納税義務者
- 事業所得税の納税義務者は、ラオス国内の法律により設立された全ての法人ならびに外国の法律により設立された法人(以下、「外国法人」という)であり、かつ、ラオス国内で事業を営む法人とされています。また個人で事業を行っている場合も事業所得税の納税義務者となります。これらの区分により、課税される所得の範囲が大きく異なってきます(2005年租税法31条)。
- ■税額計算
- 利潤税の税率は、個人事業主であるか法人であるかにより異なります。
●個人事業主
個人事業主に対しては、0~28%の累進税率が適用されます。
※2012年1月より、最高税率が35%から28%へ引き下げられました。税率 ~3,600,000 0% 3,600,000~8,000,000 5% 8,000,001~15,000,000 10% 15,000,001~25,000,000 15% 25,000,001~40,000,000 20% 40,000,000~ 28% ●法人
個法人に対しては、28%のフラットレートが適用されます。
※2012年1月より、35%から28%へ引き下げられました。
また、正規の会計帳簿を持たない小規模の個人事業者又は法人に対しては、業種によってみなし利益率を用いて課税所得を計算します。そして、計算されたみなし利益額に対して税率28%を適用して事業所得税を計算します。【みなし利益率】 業種 利益率 販売業、貿易業 5% 製造業 8% 運輸業、建設業 10% サービス業 20%
4.付加価値税(Value Added Tax)
- ■付加価値税の概要
- ラオス政府は、2010年4月より付加価値税(VAT:Value Added Tax)を導入しました。現在ラオスは、WTOの加盟を目指していますが、加盟に伴う関税率の引き下げによる税収の減少を補い、税収の安定を図るといった主旨からVATが導入されました。
VATは、ラオス国内における付加価値を課税対象とする税金です。日本の消費税と概ね同様の税金で、以下のような特徴を有しています(2006年付加価値税法2条)。
・商品、物品、サービスの消費に対して課される間接税である
・税金の負担者は最終消費者である
- ■納税義務者
- VATの納税義務者は、下記のいずれかに該当する者となっています(2006年付加価値税法13条)。
・年間売上高が4億キープ以上の企業
・ラオス国内において、目的又は頻度を問わず商品、物品、サービスを輸入している者
・ラオスにおける非居住者、又は税務登録を行っていない者で、ラオス国内で商品、物品の販売、サービスの提供を行っている者
- ■税率
- VATの法律上の税率は、行われる課税対象となる取引の区分に応じて、以下の通り定められています(2006年付加価値税法19条)。
【VAT税率】 適用取引(品目) 税率 国外へ輸出される商品、物品、サービス 0% 国内へ輸入される、又は、販売される商品、物品、サービス 10%
- ■申告・納税
- VATの納税義務者は、納付すべきVATがある場合又は納付すべきVATがない場合にかかわらず、原則としてVATの発生した月の翌月15日までに、所轄税務署へ申告書を提出し、税額を納付する必要があります(2006年付加価値税法33条)。