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M&Aに関する法律・規制 |香港進出コンサルティング

香港におけるM&Aに関する法律・規制

香港において、M&A を行う場合には、関連する複数の法規を横断的に理解しておく必要があります。M&A に関連する法規は、以下のとおりです。

上記の他にも、銀行業、保険業、通信業といった特定の業種、または公害をもたらす恐れのある危険業種については、各種業法による規制があります。

投資規制

■会社条例による規制
会社条例は、設立・登録されたすべての法人およびその事業活動 について規定しています。
香港会社条例は、以前統治下にあったイギリス法制度の影響を色濃く残しており、外国法人や投資家に対する制限もほとんどなく、自由で活発な取引を奨励するものです。 香港のほとんどの企業は有限会社です。有限会社には公開会社と非公開会社とがあり、会社条例では次の事項を定款に定める会社が非公開会社であると規定しています(会社条例11条)。

  • 株式譲渡の制限
  • 株主の数を50名以下に制限
  • 会社の株式または社債の公募の禁止

上記の事項を定款に含めない公開会社の多くは香港証券取引所に上場しています。上場企業には、上場規制が適用されます(上場規制14条:以下、規制)。

上場規制

■証券取引所の役割
一般的に、証券取引所は上場企業の株式売買や買収活動に際して主要な役割はありませんが、合併または買収後に、上場企業として維持されるものかどうかに関する調査は行います。証券取引所は、上場企業の発行済株式総数の25%以上が、当該取引後においても、市場に流通しているかどうかを調査します。 また、上場企業やそのグループ企業による買収活動、上場企業の関係者が行う取引に関する上場規制が遵守されているかどうかも、証券取引所は監視しています。

■取引の種類
複数の取引を1つの取引として捉える場合、企業が子会社になる、または子会社ではなくなる場合の要件を定めた以下のような規定があります(規制14条6項等)。

[株式取引 (Share Transaction)]
株式取引とは、すべての取得比率が5%未満の取引です。対価として上場株式とな ることが予想される有価証券を含む資産の取得を含みます。株式取引 は、 株主総会において承認を受ける必要はありません。
[開示取引(Disclosable Transaction)]
開示取引とは、すべての取引比率が5%以上25%未満の取引のことです。開示取引は、株主総会において承認を受ける必要はありません。
[重大取引(Major Transaction)]
重大取引とは、自己資本比率を除くすべての取得比率が25%以上となる資産の買収または売却をいいます。売却の場合はその売却割合が75%未満で、買収 の場合はその買収割合が100%未満であるものが該当します。この場合、当該取引は株主総会において承認を受けなければなりません。
[重大売却(Very Substantial Disposal)]
重大売却とは、自己資本比率を除くP.194の4つの取得比率すべてが75%以上の売却です。この場合、当該取引は株主総会において承認を受けなければなりません。
[重大買収 (Very Substantial Acquisition)]
重大買収とは、すべての取得比率が100%の買収です。この場合、当該取引は株主総会において承認を受けなければなりません。
[逆さ買収(Reverse Takeover)]
逆さ買収とは、未上場企業による上場企業の買収です。買収が行われた場合、証券取引所は、買収を提案した未上場企業を新規上場申請企業と同様に扱います。この場合、当該取引は株主総会において承認を受けなければなりません。
[関連取引(Connected Transaction)]
関連取引とは、株式売買の関連当事者間における取引です(企業、個人含む)。当該取引は内容に応じて、情報開示や株主総会における承認を必要とする場合があります(規制14条A)。

■ 取得比率

[取引の種類の区分け]
上記取引の種類は下記各種の比率によって分類されます(規制14条7項)。
  • 資産比率:取引の対象となっている総資産が上場企業のグループの総資産に対して占める割合
  • 利益比率:取引の対象となっている純利益が上場グループの純利益に対して占める割合
  • 収益比率:取引の対象となっている収益が上場グループの総収益に対して占める割合
  • 対価比率:支払ったまたは受取った対価の総額が、上場グループの時価総額に対して占める割合
  • 自己資本比率:上場企業によって買収された企業によって支払われた当該取引の対価としての自己資本が、当該上場企業の自己資本の価値に対して占める割合

買収・合併・自己株主取得コード

■ コードの目的
買収 ・合併・自己株式取得 コード(以下、コード)は、証券先物委員会(SFC:Securities and Futures Commission)によって制定され、規制対象は公開会社です。コードは買収、合併、自己株式取得により影響を受ける株主が、公正に処遇されるように、企業に対し情報開示を要求し、適正な取引のための枠組みとして機能しています。
コードは主に株式の取得手続について規定していますが、法的強制力を持つものではありません。しかし、違反があった場合には、違反をした者の公表、行政処分、市場参加者に対して違反者との取引を行わないよう要請すといった制裁があります。

[一般原則]
株式取得にかかわる者は、前述のコードの中で定められている一般原則、規定を理解しなければなりません。
たとえば、ある企業の支配が取得、統合される場合、通常、すべての株主に対して株式公開買付が必要となります。また、そのオファーが実施可能であるかどうかについても保証しなければなりません(コード一般原則2条)。
また、オファーが実施される場合、オファーをする側と受ける側、またそれらにかかわるアドバイザーは、株主が知り得ない情報を株主に提供してはいけません。ただし、この原則は、オファーを受けた企業がオファーをする側に機密情報を 株主に提供する場合は当てはまりません(3条)。
当該取引に係るすべての当事者は、買収 合 併パネル(Takeoversand Mergers Panel)、SFCの企業財務部門の委員長もしくは代表者、公開買付訴訟委員会(Takeovers Appeal Committee)で協力し、関連するすべての情報提供を要求されます(10条)。

■ 公開買付
公開買付は主にコードにより管理され、香港の公開会社に影響を与える買収や合併に適用されます。公開買付には、任意公開買付(Voluntary Offers)、部分的公開買付(Partial Offers:対象企業議決権の100%に満たない買付)、および義務的公開買付(MandatoryOffers)があります。

[任意・部分的公開買付]
一般的に、公開買付は買収企業側から対象企業への申込により行われます。義務的公開買付とは異なり、任意公開買付は任意の条件を付すことが可能です。ただし、買収企業側が一方的に左右できるような条件は認められません(コード一般原則30条1項)。
[義務的公開買付]
次の要件に該当する場合、公開買付によって株式を強制的に取得することが認められます(コード一般原則26条1項、2項)。
  • 株式の取得取引により議決権の保有割合が30%以上になる場合
  • 既に議決権の30%以上50%未満の株式を有している者が、買収から12カ月以内で、最も持分割合の低い時点を基準に、さらに2%以上の追加取得をしようとする場合

■スキーム・オブ・アレンジメント
スキーム・オブ・アレンジメントとは、買収企業が、対象企業の株主のうち買収企業に協力的な株主からその保有株式を取得し、自らの保有株式との合計により、買収を成立させる方法です。株式の取得がスキーム・オブ・アレンジメントによる場合には、以下の要件を満たす必要があります(コード一般原則2条10項)。

  • 株主総会において当該スキーム・オブ・アレンジメントに関係しない株主(以下、非利害関係株主)の過半数、または非利害関係株主が保有する株式のうち、その適正価格の75%以上を有する株主の承認を受けること
  • 非利害関係株主の保有する株式の適正価格の10%以上を有する株主から反対を受けないこと
  • 裁判所などから認可を受けること

これらの要件を満たすのは困難なため、通常の株式所得によるM&Aが一般的です。

証券先物条例

証券先物条例は金融商品取引に関する各種事項の規制と、投資家の保護を目的として、証券や先物商品に関する法律を統合してSFCにより制定されました。主に、インサイダー取引、不公正取引、価格談合、市場価格・株式価格操作および公開買付書類などの開示書類に関する虚偽、または誤解をもたらす記載についての情報開示などを規制します(日本の金融商品取引法における規制に相当)。

■株式・ショートポジションの開示
条例では香港上場企業の取締役、CEO(Chief Executive Officer)およびその総議決権の5%以上の株式を保有する株主に対し、株式の保有状況などの開示を要求しています。
取締役、CEOは、保有株式数やショートポジション※に変更が生じた場合、その都度、情報開示をする必要があります。また、香港上場企業の総議決権の5%以上を保有する株主は、保有株式数が整数%レベルを超えて変動した場合(たとえば、5.9%から6.1%など)や、5%を下回った場合など、それらの事実を開示しなければなりません。
※株式を空売りしている状態を示す

事業譲渡(債権者保護)条例

事業譲渡とは、対象企業の資産・負債を買収 側が譲り受け、一部の事業を承継する方法です。特徴は、買収者が自らの裁量により選択して対象企業の特定の事業に関してのみ取得できる点です。したがって、買収者は一般的に、この方法により買収者は支払金額を制限することができるため、株式取得に比べて金銭面での負担は軽くなります。
事業譲渡条例は、買収者が承継しない債務に関し、債権者保護を目的として制定されました。そのため、譲渡者と買収者は、当該事業に関する税債務を共同して負担することが規定されています。この責任は契約により排除できません(会社条例3条)。この責任を免れるためには、事業譲渡の日の4カ月前から1カ月前までの期間に、官報や新聞に事業譲渡を行う旨の公告を行うなど、本条例所定の手続が必要です(4条、5条)。

印紙条例

印紙税は株式の売 買証明書などの作成に伴って生じるもので、課税文書の作成者が納税義務者となります。香港では 印紙税は貴重な税収源となっており、 法人所得税に次ぐ割合です。 印紙税の支払が行われなかった場合には一定の罰金が科される他、当該書面が裁判上の証拠として認められなくなるなどの不利益が生じます。
印紙税の対象となるものは限られており、主に不動産売買契約書、不動産賃貸借契約書および香港法人株式の売 買契約書などです。

会計基準

香港財務報告基準(HKFRS:Hong Kong Financial ReportingStandards)は、2005年1月1日より国際財務報告基準( IFRS)を全面的に取り入れ、実質的には IFRSとほぼ同一の基準となっています。
ただし、一部発効日や移行日が異なる点や、IAS第27号10項(連結および個別財務諸表)の連結財務諸表作成免除に関して、香港の会社条例にも準拠する必要性がある点(HKAS第27号10項脚注)など差異があります。
IFRSをすべての会社に適用することは負担が大きいため、一定の要件を満たす小規模な会社については、中小企業財務報告基準(SMEFRF&FRS:SME Financial Reporting Framework and FinancialReporting Standard)を適用することができます。
中小企業財務報告基準とは別に、「中小企業(SME)向けの IFRS(IFRS for SMEs)」を一部香港向けに修正を加えた「私的会社香港財務報告基準(HKFRSs for PE)」が、2010年4月30日に発行され、即時適用されています。HKFRSs for PEは、キャッシュ・フロー計算書と株主持分変動計算書の作成が要求される等の点においてSMEFRF&FRSよりも要求される項目が多くなっています。ただし、中小企業に関連の少ないトピックスや開示要件を除外したり、認識や測定の要件の簡素化、開示内容の大幅な削減など、HKFRSより会計上の要件は1割程度と簡便なものです。

香港におけるM&Aトピック

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