全国対応可

東京 | 横浜 | 名古屋 | 大阪 | セミナー情報

03-5369-2930お電話 お問合せ
スリランカ進出支援

税務・税法

目次

1. スリランカにおける税務の概要 ■スリランカにおける租税法体系 ■スリランカにおける税金の種類 ■国税と地方税 ■直接税と間接税
2. 個人所得税 ■個人所得課税の概要 ■居住性と課税範囲 ■税額計算 ■申告・納付期限
3. 法人所得税 ■課税期間 ■納税義務者 ■課税所得(Taxable Income)■所得計算に関する損金規定 ■法人所得税率 ■申告納付 ■ペナルティー ■法人税法上の優遇措置
4. 付加価値税 ■納税義務者 ■税率 ■納付税額の計算 ■申告納付
5. 輸出入関税 ■輸入関税 ■輸出関税
6. 経済サービス税(ESC:Economic Service Charge) ■納税義務者 ■税率 ■申告納付
7. 国家建設税(NBT:Nation Building Tax) ■納税義務者 ■税額 ■申告納付
8. 日スリランカ租税条約 ■PEの定義と課税(日スリランカ租税条約第2条) ■特殊関連企業(第4条)
■使用料(ロイヤルティ等)に対する課税(日スリランカ租税条約第8条)
■短期滞在者に対する人的役務所得(日スリランカ租税条約第11条)
■二重課税の排除(日スリランカ租税条約第15条)
■二重課税に対する相互協議(日スリランカ租税条約第18条)

1. スリランカにおける税務の概要

■スリランカにおける租税法体系
スリランカの租税法については、日本のように税目単位で本法、施行令、施行規則、基本通達といった法体系は整っておらず、所得税については、内国歳入税法2000年の第38号、付加価値税については付加価値税(VAT)法2002年の第14号においてそれぞれ制定され、その後の改正によって順次規定されています。

■スリランカにおける税金の種類
スリランカの国内法においては、以下のような種類の税金が定められています。

【スリランカにおける租税の種類】
科目
直接税 法人所得税(Corporate Income Tax)
個人所得税(Personal Income Tax)
経済サービス税(Economic Service Charge)
印紙税(Stamp Duty)
相続税(Estate Duty)
株式取引税(Share Transaction Levy)
間接税 付加価値税(Value Added Tax)
国家建設税(Nation Building Tax)
物品税(Excise Duty)
輸入関税(Import Duty)
消費税(Goods and Services Tax)
賭博・ゲーム税(Betting and Gaming Levy)

税金の体系については、大きく「国税」、「地方税」に分かれており、その中でさらに「直接税」と「間接税」に分かれています。

■国税と地方税

●国税
スリランカの税金については、税目の大部分が国税であり、財務省内の内国歳入局が個人並びに法人の所得税、付加価値税、経済サービス税、国家建設税、印紙税等を徴収し管轄しています。
●地方税
地方税とは、個人や法人などに対する税金で、地方自治体への納付が義務付けられている税金です。地方税には、地方自治体税、地方公共団体税、及び遊興税等があります。

■直接税と間接税

●直接税
直接税とは、税金を納める「納税義務者」と、税金を実際に負担する者が同じである税金をいいます。スリランカにおいては個人所得税、法人所得税、経済サービス税などがこれに該当します。
●間接税
間接税とは、直接税と異なり、納める人と実際に負担する人が異なる税金をいいます。税金の負担者が直接ではなく他の納税義務者を通じて間接的に国に税金を納付するため、間接税と呼ばれます。付加価値税、国家建設税、物品税などが該当します。

2. 個人所得税

■個人所得税の概要
スリランカにおける個人所得税は、2006年に施行された内国歳入法第10条規定と、その後内国歳入改正法により2007年に改正された第10条、2008年に改正された第9条、2009年に改正された第19条、2011年に改正された第22条に基づいて課税されます。
個人所得税を計算する場合、まずその計算対象となる人が「居住者」であるか「非居住者」であるか、つまりその対象者の居住性の判定が重要となります。それぞれ区分ごとの定義については、以下の通りとなります。

■居住性と課税範囲

●課税年度
課税年度とは、所得税の計算対象となる期間をいいます。4月1日から翌年3月31日までの12カ月間が課税年度となります。
●居住性の判定
スリランカにおける居住性の区分については、その個人が最初にスリランカに入国した日から12カ月の期間において、スリランカ国内に183日以上滞在する場合に「居住者」とされます。この滞在期間の計算については、入国並びに出国の日は合わせて1日で計算されます。
上記の居住者の定義に該当しない場合は、すべて非居住者として区分されます。
ただし、スリランカ企業に雇用されている外国人は、雇用開始から起算して3年間は非居住者として分類されます。
ここで注意しなければいけないのが、日本における居住性の判定は、主に「1年以上住所を有しているか」により判定されますので、年の中途において1年以内の短期間の予定で日本を出国した駐在者が、スリランカにおいて12カ月間の間に183日以上現地に滞在した場合、日本・スリランカの両国で居住者という扱いになります。
このような場合には、日本・スリランカ間での「租税条約」に基づき、実態としてどちらに居住性があるかを日本・スリランカの権限のある当局同士が協議のうえ、いずれかの国において居住者として申告等を行うことになります。
■居住区分別の課税範囲
【課税所得の範囲】
居住者 非居住者
スリランカにおいて発生した所得(国内源泉所得) 課税
スリランカ以外の国で発生した所得(国外源泉所得) 課税 非課税

※国内源泉所得の定義

  • ・スリランカ国内における職位、職務によって得た所得
  • ・スリランカ国内の事業所又は事業から生じる所得
  • ・スリランカ国内に所在する資産から生じる所得

つまり、その所得の受領地や居住者・非居住者の区分に関わらず、上記に該当する所得についてはスリランカの国内源泉所得とされることになります。

スリランカにおいて「居住者」と判定された場合、国内源泉所得のみならず、どこで受け取ったかに関わらず、スリランカ国外で発生した所得(国外源泉所得)も含めてスリランカにおいて課税の対象となります(居住者に対する全世界所得課税)。一方で、非居住者となった者についてはスリランカでの国内源泉所得のみに対して課税がされます。
スリランカと日本の両国で課税が行われたときは、個人所得税の確定申告において、「外国税額控除」の規定により、二重に課税されている分の税額を調整することができます。

■短期滞在者に対する免税規定
日本からの出張者などで短期間(182日以下)スリランカに滞在する場合に、給与の支給を日本でのみ行うなど一定の要件を満たす場合には、その期間内のスリランカ国内での勤務に対する給与については、日スリランカ租税条約によりスリランカにおいて課税されず、日本でのみ課税されることになります。

■税額計算
スリランカにおける所得税計算については、以下の手順により計算します。

●総所得金額
まず、その年におけるすべての収入の中から、課税の対象となる所得を把握する必要があります。課税の対象となる所得については、内国歳入法第3条において列挙されています。個人所得税の対象となる主な所得について解説します。
・給与所得
給与所得は現金により受け取った給与だけではなく、現物支給される給与や会社が支払う生命保険料や交通費等の直接現金による支給がない部分も給与所得に含まれます。
・事業所得
事業所得は、事業により得た収入から、それを得るために発生した全ての経費を差し引いた利益部分となります。ただし、株主との取引によって獲得した利益は事業所得に含まれません。
・不動産所得
住宅を賃貸して獲得した家賃収入は、課税の対象となります。不動産所得の計算においては、家賃収入の総額から貸手が支払う固定資産税を控除し、更にその残額の25%を控除することができます。
・配当所得
配当所得は、配当が決議された時点で収入として認識されます。しかし、企業が将来の一定の日を支払日に指定した場合には、その支払日に収入として認識されることになります。配当に対しては、10%の源泉税が課税され、そこで課税関係が完結します(源泉分離課税)。
・利子所得
利子所得は、実際に受け取っているかいないかに関わらず、全額を収入金額に算入します。なお、銀行等の金融機関から受け取った利子で、10%又はそれ以下の税率で源泉税が差し引かれている場合には、そこで課税関係が完結します(源泉分離課税)。
・年金
年金も課税の対象となります。ただし、60歳以上の個人が受け取る年金のうち、一定の要件を満たすものは非課税となります
・その他の所得
上記の他に、保険料、賞金、勝利金、補助金、寄付金等があります。これらの所得がある場合には、税務申告時に詳細を提示する必要があります。

上記の所得を全て合計して、合計所得金額(Total Statutory Income)を算定します。そして、合計所得金額から事業活動からの損失を控除して総所得金額(Assessable Income)を算出します。また、前年度の損失のうち、前年度の税務申告で控除しきれなかった部分は、当年度の損失に合算することができます。この場合、控除可能な損失額は、合計所得金額の35%までとなります。

●所得控除額
総所得金額から、以下に掲げる支出額を控除し、課税総所得金額(Taxable Income)を算出します。
  • 基礎控除額(500,000ルピー)
  • 病人・貧困に関するチャリティー団体や政府系機関に対する寄付金
  • 国家プロジェクトに対する支出
  • 社会保険・生命保険・医療保険等の支払額
  • 映画製作に対する支出
  • 住宅購入に係る支出
  • 株式投資額の50%(50万ルピー以上の投資に限る)
  • 映画館建設費用(2,500万ルピーを超えない部分)
  • ・その他一定の支出
●税額の算出
上記で求めた課税総所得金額に対して個人所得税率を乗じて、所得税額を算出します。
【個人所得税 税率表】(スリランカルピー)
所得金額(年間) 税率 控除額(速算用)
500,000以下 0% 0
500,000超1,000,000以下 4% 20,000
1,000,000超1,500,000以下 8% 60,000
1,500,000超2,000,000以下 12% 120,000
2,000,00超2,500,000以下 16% 200,000
2,500,000超3,500,000以下 20% 400,000
3,500,001以上 24% 540,000

また、所得の種類によっては、上記税率ではなく特別な税率が設定されています。

■申告・納付期限

スリランカにおける全ての居住者は、課税年度の翌年の9月30日までに納税申告書を提出しなければいけません。また、配偶者関係にある夫婦は、それぞれ個別に所得税申告書の提出が必要となります。
確定申告のほか、前課税年度における所得税額を基準に年4回の予定申告を行わなければいけません。
第1期から第4期の分割納付額はそれぞれ、前課税年度における所得税の4分の1未満にならない見積り基準に基づき算出され、所得税の残余額は最終支払として9月30日までに支払われなければなりません。

●早期納付による減税
自己査定による所得税を分割納付の期限の1カ月前に納付した場合には、税額の10%が控除されます。

3. 法人所得税

■課税期間
スリランカにおける法人所得税の課税期間は、個人と同様、4月1日から翌年3月31日までとなっています。
■納税義務者
スリランカにおける法人所得税の納税義務者である法人は、大きく「内国法人」と「外国法人」の2つに区分されます。
スリランカに本社がある会社、スリランカで経営管理されている会社は「内国法人」と判定され、国内源泉所得のみならず、全世界所得に対してスリランカにおいて課税されます。
それ以外は、「外国法人」となり、内国法人と異なりスリランカ国内で生じた国内源泉所得に対して法人所得税が課税されます。
■課税所得(Taxable Income)
課税所得の算定については、確定決算主義が採用されています。まず、スリランカにおける外資系企業には法定監査が求められており、監査済財務諸表の税引前利益を課税所得計算の基礎とし、損金不算入項目や繰越欠損金等の税務上の調整項目を加減算し、課税所得が算定されます。
課税所得を算定するためには、個人所得税と同様に、以下の所得区分ごとの所得を把握する必要があります。そして、これらを合計して合計所得金額を算定します。
  • 事業活動(本業)からの利益
  • 利息・配当収入
  • 家賃収入
  • 年金・ロイヤルティ
  • その他の利益
また、以下の所得については所得金額の計算にあたって、別途規定が定められています。
●利子・配当
利子及び配当金は、原則としてその収入額が課税所得となりますが、受取時にすでに10%の源泉税が差し引かれている利子及び配当金、上場会社から受け取った配当金等に関しては課税所得の計算上、所得に含まれません。
●家賃収入
企業が商業施設の賃貸やリースによって得た家賃収入は、事業活動から生じた利益に含まれます。当該施設の修繕のために支出した費用は、当該家賃収入の25%を限度として損金の額に算入されます。上記以外の家賃収入は、事業活動からの利益とは別に区分・認識されます。
■所得計算に関する損金規定
その事業年度の益金の額から控除することができる損金の額については、原則として事業に関連して生じた全ての費用とされています。しかし、所得税法において個別に規定されているものについては、その規定に従って損金の額に算入する金額を計算する必要があります。以下、所得税法上で定められている主な損金規定について解説していきます。
●減価償却費
会計上は、減価償却方法として定額法又は帳簿価額法のどちらかを選択することができます。しかし、税務上の償却方法は定額法に限定されており、償却率についても資産の種類ごとに細かく規定されています。主な資産の償却率は以下の通りです。
【減価償却率】
資産区分 償却率
建物(2011/4/1より前に取得) 6.70%
建物(2011/4/1以後に取得) 10.00%
コンピュータ及び周辺機器、ソフトウェア等 25.00%
車、家具等 20.00%
機械、備品等(2011/4/1より前に取得) 12.50%
機械、備品等(2011/4/1以降に取得) 33.40%
橋梁、線路等 6.70%
無形固定資産 10.00%
●寄附金
寄附金については、原則として損金の額に算入されませんが、国や地方公共団体に対する寄附金で一定のものについては、損金の額に算入することができます。

上記で把握した所得を合計して合計所得金額(Total Statutory Income)を算定します。そして、当期に損失が発生している場合、又は前期からの繰越損失が存在する場合には、その合計額を当期の合計所得金額(Total Statutory Income)から控除して、総所得金額(Assessable Income)を算定します。なお、控除可能な損失額は、当期の合計所得金額の35%を限度とし、控除しきれない損失は翌事業年度に繰り越すことになります。
そして、総所得金額から所得控除を差し引くことによって課税所得を算定します。所得控除については、個人所得税において適用されている規定を準用します。
■法人所得税率
課税所得に、以下の税率を乗じて税額を算出します。
区分 税率
課税所得が500万ルピー以上の上場および非上場企業、銀行(国外での銀行業務による利益を含む)、公社、および国有事業、ならびにグループ企業の持株会社、子会社、または関連会社 28%
課税所得が500万ルピーを超えない上場および非上場企業(グループ企業に属する企業には非適用) 12%
中小企業 10%
共済会および協会 10%
組合(パートナーシップ) 8%
国内価値付加が65%以上あり、スリランカで特許権を保有するスリランカのブランドを持つ製品の製造事業に従事する事業者に関して、かかる製品の輸出もしくはかかる製品の輸出業者への供給によって得られた所得に対して課される税率 最大10%
第16節に基づく免税期間が終了したあとの農業関連事業 最大10%
保管施設の運営および維持事業 10%
現地でのソフトウェア開発または労働力の供給 10%
ユニット・トラストおよびミューチュアル・ファンド 10%
教育サービス 10%
ベンチャー・キャピタル企業 12%
石油探査 12%
タレントまたは芸術家 12%
輸出事業、観光事業、および建設事業による利益 12%
酒またはタバコ製品の製造・販売、または輸入・販売による利益および所得 40%
宝くじ事業、または賭け事もしくはゲームによる利益 40%
■申告納付
法人所得税の申告については、課税年度の翌年の11月30日までに納税申告書の提出が必要です。納税申告書には、申告書が真実に基づいて正しく作成されている旨の代表取締役の宣言書の添付が必要です。
そして、税金の納付については、以下のスケジュールに従って四半期ごとに均等に予定納税を行います。
四半期ごとの支払額は前期の納税額の4分の1以上である必要があり、年度末の確定申告による年間納税額が、四半期毎に実施した予定納税額の合計金額を上回る場合には、その差額につき追加納税を行います。追加納税の期限は、翌課税期間の9月30日です。
また、年間納税額が予定納税額を下回る場合には、事業年度終了の日から3年以内に税務署長に還付申請を行い、承認されれば還付されます。
■ペナルティー
内国歳入法に規定されている申告納税に関する法令に違反した場合には、以下のペナルティーが課されることになります。
項目 ペナルティー
期日までに納税申告書を提出しない場合 最大50,000ルビーの重加算税
期日までに税金の支払いをしない場合 支払額の10%の重加算税
毎月2%の延滞税
不正確な申告をした場合 最大200%の追徴課税
■法人税法上の優遇措置
スリランカでは、国内への投資を刺激することにより国民の雇用機会を増やし、所得を引き上げることを目的として各種税制優遇措置を行っています。タックス・ホリデー(課税優遇措置)、税率軽減措置および関税免除などがこれに該当します。

4. 付加価値税

付加価値税(VAT:Value Added Tax)とは、スリランカ国内における付加価値を課税対象とする税金です。
日本における消費税のように、スリランカにおいても物品の販売、役務の提供にあたって、原則として12%の付加価値税が課税されます。

■納税義務者
VATの負担者は最終消費者ですが、納付義務を負うのは、VAT課税対象物品の販売あるいはサービスの提供を行う事業者(VAT登録事業者)、ならびに物品の輸入者であり、個人・法人を問わず納税義務が発生します。
VAT納税者はVAT登録業者として内国歳入庁に登録することが義務付けられています。VATの登録に必要な書類は下記の通りです。
  • 納税者番号(TIN:Taxpayer Identification Number)証明書
  • 事業者登録証明書
  • 取締役の身分証明書のコピー
  • 売上明細と銀行明細
  • Documents to prove that exports were made continuously by such exporters
有限責任会社の場合は、さらに下記の書類が追加で必要となります。
  • 定款と覚書
  • 取締役一覧表
  • 法人設立証明書
■税率
VATの税率は、課税対象となる取引の区分に応じて、以下の通り定められています。
【VAT税率】
対象品目 税率
製品・商品等の輸出取引
国際輸送サービス
国外消費用サービス(注1)
みなし輸出(注2)
衣料購入事務所によるサービス
0%
上記免税、非課税取引を除く全ての取引 12%
(注1)国外の動産・不動産を用いて、スリランカ国外の相手に提供するサービスで、対価はスリランカ国内の銀行を通じ、全額外貨にて受取ること。
(注2)繊維製品割当委員会(Textile Quota Board)に登録の輸出業者が対象

VATの税率は、2011年1月1日以降、基本的に12%となっていますが、物品またはサービスの輸出取引のVATは0%課税取引となります。言い換えると、最終消費者がスリランカ国外に存在する取引にはVATは加算されないことを意味しています。
これは、物品の輸出先では、輸入通関時点でその国の付加価値税が課されることが一般的であり、物品の原産地国でもVATを課税すると二重の課税となって、輸出品の国際競争力を阻害するおそれがあるために行われている措置です。そのため、この0%税率を適用するためには、各会社において物品が国外に搬出されたことを証明する書類、すなわち輸出通関書類をしっかりと保存しておかなければなりません。
■納付税額の計算
スリランカではVATの計算方法として、控除方式(インボイス方式)を採用しています。控除方式は、毎月受け取ったアウトプットVATから、支払ったインプットVATを控除した差額を納付する方法です。納付すべきVATについては、アウトプットVAT・インプットVATの差額となります。
〈計算式〉
納付税額=アウトプットVAT-インプットVAT
●アウトプットVAT
売り手は、課税商品や課税サービスを販売した際、買い手にVATを請求します。このVATは、売り手の立場からはアウトプットVAT(仮受VAT、売上VAT)となります。
●インプットVAT
買い手は、課税商品や課税サービスを購入した際、売り手にVATを支払わねばなりません。これは買い手の立場からは、インプットVAT(仮払VAT、仕入VAT)となります。
購入した課税商品や課税サービスが、買い手の事業に関連している範囲の場合、このインプットVATは買い手のアウトプットVATと相殺できます。同様に、売り手もアウトプットVATと課税商品や課税サービを購入した時に支払った、インプットVATとを相殺することができます。
■申告納付
事業者は商品の販売、サービスの提供(売上)に対しVATを徴収します。この売上時に徴収した合計税額から、輸入や購入(仕入)の際にVATを控除し、差額を内国歳入庁へ納付します。仕入時の税額が、売上に対する税額を超える場合は、還付されることになります。なお、インプットVATの控除については、請求書発行日より12カ月以内(輸入の場合には仕入税額の控除は、税関申告日より24カ月以内)に申告する点に注意が必要です。

5. 輸出入関税

スリランカ関税法により、スリランカの国境を越えて輸出入の許可を得た物品は輸出入関税の対象となります(参考:JETRO HP http://www.jetro.go.jp/world/asia/lk/invest_04/)。

■輸入関税
スリランカの輸入関税率は下記のように4つに区分されています。
【輸入関税率】
対象品目 税率
スリランカで生産されない極めて基幹的な製品、原材料、機械類など 免税
半製品原材料 5%
中間財、予備部品 5%
自動車など 30%
■輸出関税
輸出税が課税されるのは、茶、ココナッツ、原料ゴムおよびその他数品目の輸出に限られています。 税額は品目により、物品の重量、数量等の物理的単位に基づくものと、物品の販売価格等の明示された価額に基づくものに区分され、算出することになります。

6. 経済サービス税(ESC:Economic Service Charge)

経済サービス税とは、個人、法人、パートナーシップが、スリランカにおいて取引を行う場合、その取引による課税売上高に対して課税される税金のことです。

■納税義務者
経済サービス税は所得税の納税義務の有無に関わらず、いずれかの四半期における売上高が2,500万ルピーを超える場合に、当該四半期ごとに納税義務が生じます。
しかし、以下の法人及び団体は経済サービス税の納税義務が免除されています。
  • 社団法人
  • 航空会社及び海運会社(非居住者)
  • 地方自治体
  • 政府機関
■税率
経済サービス税は以下の4区分に分類され、売上高に対してそれぞれの税率を乗じて計算されます。
【税率区分】
対象 税率
BOI企業(所得税の納税義務を負う)
・衣料品輸出業者
0.10%
BOI企業(所得税の納税義務を負う)
・衣料品輸出業者
・BOI商社
・衣料品輸出業者向けの繊維製品の製造業者
0.25%
免税/優遇税率適用企業、又は以下に該当する企業
・所得税の免税(免税期間中の企業を含む)対象企業
・損失が発生した場合
・優遇税率の適用を受けている企業
・販売業者によって製造または生産された製品以外の卸売または小売業(自動車または酒類の販売業者またはディーラーを除く)
・乾燥ココナッツ、ココナッツオイル、ココナッツ繊維、コプラ、ゴムシートなどを含む、あらゆるお茶、ゴム、またはココナッツ樹木の一次加工(アルコール飲料を生産するための加工は除く)
・広告代理店
1.00%
その他(自動車、酒類、タバコ、および石油の販売業者を含む)、および官報の告知で規定されている企業の売上高 0.10%
税額を計算する際の課税標準となる売上高は、実際に対価を受け取っているかどうかに関わらず、全ての取引を含みます。また、付加価値税や資本的資産の売却益は含まれず、貸倒損失は売上高から控除されますので注意が必要です。
■申告納付
経済サービス税の申告・納付は四半期ごとに行う必要があります。支払の際は指定された用紙に、納付日及びどの四半期に係る納付なのかを正しく記載し、各四半期における最終月の翌月20日までに、管轄の税務署に提出する必要があります。
なお、各四半期における最高徴収税額は3,000万ルピーまでとされています。
納付した経済サービス税は、対応する年度の未払所得税と相殺することが可能です。相殺しきれない部分については、還付処理は行われず、4年間の繰越が可能です。

7. 国家建設税(NBT:Nation Building Tax)

国家建設税は、内戦におけるテロ行為等により影響を受けたインフラ設備の再建設に充てる財源を確保する目的で、2009年2月1日に施行されました。

■納税義務者
国家建設税は、スリランカにおける輸入業者、製造業者、サービス業者に対し、四半期当たりの売上高が50万ルピーを超えた場合に適用されます。 ただし、下記事業に関しては、四半期当たりの売上高が2,500万ルピーを超えた場合に適用されるので、注意が必要です。
  • ホテル、民宿、レストラン、またはそれに類する事業の運営
  • 各地方の付加価値農産物、米を主原料とした製品
  • 各地方の教育機関
  • 労働力(人材)または雇用の供給
  • 各地方で生産された農産物
国家建設税の納税者はNBT登録業者として内国歳入庁に登録することが義務付けられています。ただし、輸入業者は輸入時点において税関局に国家建設税を納税するため、内国歳入庁に登録する必要はありません。
■税額
国家建設税の税額は、四半期当たりの売上高に2%の税率で計算されます。なお、2011年1月1日以降は、課税対象となる範囲が卸売業・小売業まで拡大されますが、その分、課税対象となる売上高に対して、その売上高の50%が控除されます。
■申告納付
国家建設税の申告は、各四半期に係る税額を3分割で納付する制度を採用しています。

8. 日スリランカ租税条約

■PEの定義と課税(日スリランカ租税条約第2条)
日スリランカ租税条約の第2条において、恒久的施設(PE:Permanent Establishment)の定義が以下のように定められています。
  • 支店、管理所、工場その他事業を行う一定の場所
  • 鉱山、採石場、その他採掘されている天然資源が存在する場所
  • 建設、組み立て工事などに類する工事で、183日を超える期間存続するもの
また、スリランカに販売代理店を有する場合には、その代理店が契約締結に際して包括的権限を有しており、かつ、経常的にこれらの行為を行う場合や、常時注文に対する在庫品を保有している場合には、恒久的施設に含まれることになります。逆にいえば、これらの要件を満たしていない代理店であれば、独立したものとしてPEとして認定されることはありません。
スリランカでのビジネスにつき、特に現地に支店、法人を設置しないで行う場合には、ビジネス内容によってはPEがあると認定され、税務当局より所得課税が行われることがあるため、注意が必要です。
■特殊関連企業(第4条)
移転価格税制に関する規定で、財務省令において規定がされていますが、日本とスリランカ間においても租税条約上に規定されています。
要約すると「関連会社間で取引を行う場合には、第三者取引条件によらなければいけない」という事が記載されています。
条文上は、二国間での移転価格に対し適切な措置を行うというような、包括的な規定となっているため、実務上は法令ベースでの検討が必要となります。
■使用料(ロイヤルティ等)に対する課税(日スリランカ租税条約第8条)
日本とスリランカとの間の使用料(ロイヤルティ)に対して、租税条約においては「その使用料が生じた国において課税することができる」とされています。つまり、日本からの技術提供により、スリランカから日本へロイヤルティが支払われる場合には、その支払いの際に源泉徴収により課税されることとなります。
租税条約においては、使用料の額の50%に等しい額だけ免除される、とありますので、支払時においては、その対価の半分に対して源泉税率を乗じた金額だけ源泉課税がされることとなります。
■短期滞在者に対する人的役務所得(日スリランカ租税条約第11条)
租税条約において、給与収入については、実際の勤務が行われている国でのみ課税されると記載されています。つまり、給与の発生源泉である勤務が行われていない場合には、給与収入に対してその国で課税が行われることはなく、実際の勤務地において課税されることになります。
日本からスリランカに出張する場合、以下3つの要件を満たす場合には、支払われる報酬又は給与についてスリランカ側で課税がされないこととなります。
  1. ①課税年度における滞在日数が183日を超えないこと。
  2. ②その役務提供が日本国の居住者のために、又はその者に代わって行われること
  3. ③その給与等に対して日本で税金が課税されること
ただし、これらの規定は俳優や芸能人等に対する報酬には適用されず、主に企業の現地駐在員などに対しての規定となっています。
■二重課税の排除(日スリランカ租税条約第15条)
スリランカ・日本の両国における、二国間の二重課税排除の方法について、同条項に記載がされています。それぞれが、各国の税法に基づいて計算された税額を限度に、それぞれの国において納付すべき税額から控除することを認めています。
また、日本企業がスリランカからの配当、特別の投資奨励措置によりスリランカにおいて税金の減額又は免除が行われた場合には、その減額等がされた税額についても、その日本企業がスリランカにおいて納付した税額とみなして、日本側で外国税額控除を行うことができます。この制度は、「みなし外国税額控除制度」と呼ばれます。
■二重課税に対する相互協議(日スリランカ租税条約第18条)
日本又はスリランカのいずれかの国の税法に基づき、税務当局よりこの租税条約の規定に適合しない課税を受けた場合には、居住国において、権限のある当局に対して申し立てを行うことができます。
この場合、両国の権限のある当局は、この租税条約の規定に適合しない課税を排除するため、お互いに当局同士が連絡を取り合い、相互に協議を行うことになります。

セミナー情報

海外進出セミナ-開催中
セミナー一覧はこちらから

関連サイト

今すぐ無料お試し!