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スリランカ進出支援

労務・労働法

目次

1. スリランカの労働環境 ■労働組合と労働争議 ■労働環境
2. スリランカの労働法 ■労働基準関係法令 ■雇用契約と就業規則
3. スリランカの社会保障制度 ■社会保険法 ■労働者補償法 ■雇用保険等
4. 日本人を駐在する際の留意点 ■駐在員のビザ取得 ■駐在員の給与設計と計算事例

1. スリランカの労働環境

■労働環境

●労働力人口
スリランカの総人口は約2,050万人(2011年時点/スリランカ国家統計局)で、そのうち労働力人口は約750万人、就業者は約700万人(季節労働者を除く)となっています。
労働力の1割ほどが無給の労働に従事しています。これは家族経営による農業及び零細企業で働いている労働者です。これらの労働者は、一時契約及び臨時雇いの形が多く、仕事も単純労働が大部分を占めています。

●産業別労働者数
スリランカでは、労働力の約3割が農業分野で働き、2003年から年々微増しています。工業では、労働力人口の伸びがサービス業より鈍くなっています。工業に従事する人口が下落している要因として国内製造業の停滞があげられます。卸・小売業、各種修理業の労働力人口は若干の増加傾向にあります。その他サービス業においても労働力人口の増加がみられます。

●職種別就業人口
スリランカでは、労働者の多くが日雇労働者と農業水産業従事者となってます。しかし、今後経済成長に伴い、販売サービス従事者の割合の増加が見込まれています。

●失業率
2005年時点では7.7%だった失業率が、2010年は5.4%まで低下しました。この3年間に著しく改善しており、2010年の雇用者数は7,909,178人、そのうち女性は2,707,513人、男性は5,201,665人となっております。男性よりも女性の失業率が高い傾向があり、2010年の統計によると、女性の失業率は8.1%で、男性の失業率は3.8%となっています。

●賃金水準
スリランカのコロンボの賃金水準は、インドネシアのジャカルタやベトナムのホーチミンとほぼ同水準にあります。雇用者の賃金は、月額でワーカー(一般職)が120ドル、エンジニア(中堅技術者)が343ドル、中間管理職(部課長クラス)が696ドル程度です。南アジアの中でスリランカの賃金水準は、インド、パキスタンに比べると賃金は安く労働コスト面での優位性があるといえますが、経済成長とともに賃金の上昇傾向が続いています。

●現地人の雇用義務
スリランカでは外資企業に対して、現地人の雇用義務や現地人と外国籍労働者の比率について規定はありません。但し、外国企業がスリランカに支店を設置する場合は例外であり、外国企業のスリランカ支店には、最低でも、10名のスリランカ人に雇用機会を与えなければなりません。

●労働者の募集方法
スリランカでの労働者の募集方法は、官報や新聞の募集広告、インターネットや職業斡旋所があります。民間企業では、新聞やインターネット、職業斡旋所を利用するのが一般的です。

●スリランカ人労働者の特徴
スリランカの労働者は、一般的に比較的穏やかな性格と言われていますが、責任感が希薄な傾向があります。そのため、仕事の責任や役割分担の明確化をすることで、仕事の管理をするのが望ましいと言えます。

■労働時間
 原則スリランカの1日の法定労働時間は8時間まで、週の法定労働時間は44時間までとされています。連続6時間を超えて仕事をする場合には、会社は必ず休憩時間を設けなければなりません。ただし、週の労働日数が5日の場合には、1日の労働時間を9時間まで延長することができます。その場合であっても週の法定労働時間は変わらず44時間とされています。

 上記の1日の法定労働時間または週の法定労働時間を超えて労働者を働かせる場合には、割増賃金として、基本賃金の1.5倍の賃金を支払う必要があります。

■労働組合と労働争議

●労働組合の概要
スリランカの労働組合の組織率は20~25%です。労働者には労働組合の結成、加入の自由が保証されており、7人以上の労働者は組合を結成することができます。
スリランカは、主要な国際労働機関(ILO:International Labour Organization)の規定する国際労働基準を批准しており、憲法で国民に「結社の自由」と「労働組合への参加の自由」を認めています。労働組合との労働協約の締結によって、使用者が労働条件の決定を行うのが一般的です。

●代表的な労働組合
スリランカ最大の労働組合は、セイロン労働者会議(CWC:Ceylon Workers' Congress)で、組合員数は約19万人となっています。
その他、国際労働組合総連合(ITUC)に加盟している主要な労働組合及び労働組合連盟は以下の通りです。

【主要労働組合、労働組合連盟:労働組合員数(人)】
主要労働組合、労働組合連盟 組合員数(人)
セイロン労働者会議(CWC:Ceylon Workers' Congress) 190,000
スリランカ全国労働組合連盟(NTUF:National Trade Union Federation) 400,000
全国労働者会議(NWC:National Women's Committee) 82,972
スリランカ・ニダハス・セワカ・サンガマヤ(SLNSS:Sri Lanka Nidahas Sevaka Sangamaya) 68,000

出所:国際労働組合総連合(ITUC)加盟組織

●労働争議の発生状況
スリランカでは、労働争議は減少の傾向にあります。その原因としては、労働者の教育水準の向上や、労使間の話し合いによって交渉されるようになってきたことなどが挙げられます。
使用者によるレイオフ、解雇、事業閉鎖等の場合には、事前にBOIの労使関係部門への通知が必要となります。一方、労働者及び労働組合によるストライキや事業所の閉鎖については、21日前までに使用者に事前告知をしなければなりません。また、労働争議が起きた場合に、労使間にLabour Commissionerが介入し、調停による自主的仲裁のほか強制仲裁を行うケースもあります。

●労働仲裁裁判所
労働仲裁裁判所は、労働争議の早期解決のために設けられている機関です。労働仲裁裁判所は、労働者から雇用契約や賃金の支払に関するトラブルを受けるケースが多くなっています。
労働仲裁裁判所の決定は、30日以内に地方高等裁判所に上告されない限り最終的な決定となります。労働仲裁裁判所の命令に対して使用者が上告する場合には、労働仲裁裁判所に労働者の12カ月分の給与に相当する金額を支払わなければなりません。
さらに、高等裁判所の決定に不服のある使用者又は労働者は、最高裁判所に上告することができます。

●福利厚生
スリランカでは、ボーナスは年間で1~2カ月分支給され、年末のクリスマス前に支払われるのが一般的です。その他の福利厚生として、休日に出勤した労働者に支払われる休暇手当、お祭りのための出費を「前払い」で貸し付ける祭事前貸付、医療費補助、社内旅行やスポーツ大会等を実施している企業もみられます。

2. スリランカの労働法

■労働基準関係法令

スリランカには50の労働法が存在すると言われています。主な労働法としては、次のような法律があります。

●店舗及び事務所労働者に関する法令(Shop and Office Employees(Regulation of Employmentand Remuneration) Act)
店舗及び事務所労働者に関する法令(Shop and Office Employees (Regulation of Employmentand Remuneration) Act)は、店舗、事務所における労働者の雇用、労働時間、報酬について規定しています。この法令における店舗とは、小売、卸売業をいい、飲食販売店、理容室、美容室、クリーニング屋、写真屋、その他住宅での販売等を含みます。事務所は、オフィスで事務的な仕事を行うすべての施設を含みます。
ただし、これらの法令は州政府には適用されません。そのため、公務員は適用となららず、民間企業が適用となります。

●工場法(Factories Ordinance)
工場法(Factories Ordinance)は、店舗及び事務所労働者に関する法令と同様に労働者と使用者の間における権利義務について規定した法律です。労働者・労働時間・休憩・休暇・安全衛生管理に関する最低基準について規定しています。この法律は、工場の敷地又はその区域内で雇用されているすべての労働者に適用されます。
この法律でいう労働者とは、製造工程、製造工程に使用される機械若しくは敷地の清掃、又は製造工程若しくは製造工程の対象に付随、関連するすべて労働を行い、直接または仲介業者、請負業者を通じて雇用されている人をいいます。

●賃金委員会法(Wages Boards Ordinance No.19 of 1941)
賃金委員会法(Wages Boards Ordinance No.19 of 1941)は、労働者の賃金その他の労働条件について規定しています。この法令は、政府が各産業界から賃金委員会の委員を任命しています。
ただし、以下の企業、機関は除かれます。

  • 州政府、政府系の企業
  • 孤児、障害者等の訓練機関

賃金委員会法では、賃金委員会の権限、使用者・労働者の義務がそれぞれ以下のとおり定められています。

【賃金委員会の権限】
・最低賃金・最低時間給・残業割増レートの決定 ・1日及び1週間当たりの労働時間の決定 ・労働日における食事時間、休憩時間の決定
【使用者の義務】
・最低賃金の支払 ・賃金支払日の遵守 ・賃金支払その他法令に定められた労働条件の記録
【労働者の義務】
・使用者の指揮命令に従うこと ・勤務時間の遵守 ・その他労働者の義務を守り、忠実で生産的であること

●解雇法(Termination of Employment of Workman(Special Provisions)Act No.45 of 1971)
解雇法(Termination of Employment of Workman(Special Provisions) Act No.45 of 1971)は、雇用の削減、臨時休業及び解雇について規定しています。この法令は、使用者の職場における生産性の向上及びコスト削減に関する権利を認める一方で、労働者に対する大量の雇用削減、臨時休業から雇用を守ることを規定しています。
但し、この法令は以下に該当する場合には適用されません。

  • 雇用契約を終了する前6カ月間で、雇用している労働者が平均で15人未満の使用者
  • 継続した12カ月のうち180日未満しか働かない労働者の雇用の終了
  • 公務員

この法令に違反して労働者を解雇し、後日この解雇が不当とされた場合、違反した使用者は、労働者を元の職場に復帰させるか、労働者が得られたであろう賃金及び諸手当の支払を命じられることがあります。

■雇用契約と就業規則

●雇用契約の概要
スリランカでは、店舗及び事務所労働者に関する法令で、使用者には書面による雇用契約の作成が義務付けられています。雇用契約書には、以下のような雇用条件の詳細な事項を記載しなければなりません。

【雇用契約書の記載項目例】
  • 氏名
  • 等級及び役職
  • 雇用形態
  • 雇用契約期間
  • 試用期間
  • 勤務時間及び休憩時間
  • 給与その他の賃金
  • 給与支払形態
  • 割増賃金
  • 昇給
  • 準備基金、年金、退職金等
  • その他労働条件
    • 氏名
    • 等級及び役職
    • 雇用形態
    • 雇用契約期間
    • 試用期間
    • 勤務時間及び休憩時間
    • 給与その他の賃金
    • 給与支払形態
    • 割増賃金
    • 昇給
    • 準備基金、年金、退職金等
    • その他労働条件

雇用契約書は、労働者が理解できる言語で作成しなければなりません。通常は、公用語であるシンハラ語、タミル語のいずれかで作成されますが、その両方で作成されるケースや、英語、日本語に翻訳されるケースもあります。また、スリランカでは通常使用者は労働者から雇用契約書を渡した際に、労働者から受領書を受け取り、保管する義務があります。

●雇用契約の終了
スリランカ政府は、外国人労働者の雇用にあたり、雇用契約のフォーマットを作成しています(contract_agreement_of_employment_form1)。その中では、以下のような雇用契約の打ち切りに関する記載がされており、現地人雇用の場合にも同様の規定を盛り込むことができます。

  • 1.プロジェクト、事業の終了の場合
  • 2.労働者が重大な不正行為や職場のルールに従わない行為を行った場合
  • 3.労働者が職務において故意に、また状態的な怠慢である場合
  • 4.労働者が同じ事業所で働く他の労働者に対して詐欺、暴行その他の犯罪行為を行った場合

雇用契約の終了については、Termination of Employment of Workmen (Special Provisions) Act of 1971 (TEWA)に規定されています。

●就業規則の作成義務
スリランカでは、会社・事業所全体での規則の作成にあたっては、労働者及び労働委員会への事前の通知が必要となります。作成義務はありませんが、日系企業では、雇用に関するトラブルを防ぐためにも、就業規則を作成することが望ましいと言えます。
なお、スリランカのBoard of Investment(BOI)は、就業規則のフォーマットを作成しています(LABOUR STANDARDS & EMPLOYMENT RELATIONSMANUAL)。

●日本とスリランカの労働条件比較
雇用契約書や就業規則に労働条件を記載する場合には、スリランカの労働法に基づいて作成する必要があります。主な労働条件は、以下の通りです。

【スリランカの労働条件】
スリランカ 日本
店舗事務所労働者法 工場法 労働基準法
法定労働時間 女性の上限1日9時間、女性は夜8時以降は就労禁止。男性は規定なし(NO.15) 上限1日9時間(食事・休憩の時間を除く)、週48時間 上限1日8時間、週40時間以内(32条1項2項)
※労働組合との協議により増加させることも可能(36条以下)
時間外労働 時間外労働の上限は週に12時間(NO.15) 女性や18歳未満の者に対して一年で100時間を超えてはならない。 時間外労働は通常の2割5分増以上、5割増以下(月60時間を超える場合は5割増以上)(37条)
休日 28時間労働の都度、1日半の休日。通常の休日と重なったら重複。代休無し(NO.15) 最低でも週に1日休み(35条)
休暇休息 女性には各種休息規定アリ(NO.16) 産前産後休暇、有給休暇、病欠休暇等
最低年齢 4歳(18歳未満は深夜労働禁止(NO.46)) 4歳 原則15歳(56条)

出典:日本『労働基準法』〈http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S22/S22HO049.html〉 スリランカ『店舗事務所労働者法』〈http://www.commonlii.org〉 スリランカ『工場法』〈http://www.commonlii.org〉 スリランカのプランテーションでの特徴的な制度として、「The Gratuity provision」という日本における退職金の給付があります。金額的に非常に大きなインパクトになりますので、通常は一年毎に積み立てることで、コスト管理を行います。
労働時間は1日9時間、48時間以内で規定しなければならず、これを超えて労働させる場合には、割増賃金の支払が必要となります。また、午後8時以降の女性の深夜労働は、特定の業種を除いて認められていません(一部の業種では、書面による同意を得た場合に、女性の深夜労働が認められます)。なお、労働者を解雇する場合には、1カ月前までに事前に告知する必要があります。
なお、定年は、男性55歳、女性50歳と男女によって異なっています。

●賃金の支払
スリランカにおいても、賃金の支払に関する規定があります(WAGES BOARDS ORDINANCE)。賃金は、一カ月に一度は支払わなくてはなりません。また、個人所得税等規定されているもの以外について賃金から控除してはいけません。

●最低賃金
スリランカの最低賃金は、毎年賃金委員会によって決定され、経済発展や生活費の上昇に伴い、最低賃金も上昇しています。特に労働組合の活動の盛んなプランテーションの賃金上昇が高い傾向にあります。
また、最低賃金の上昇により給与を増額させた場合には、時間外手当や、年金、退職金など毎月支払う給与以外の増加にもつながり、企業の負担が増えることになります。

【2010年の最低賃金】(単位:ルピー)
産業 備考 最低賃金
プランテーション産業 380
皆勤手当 105
生産性手当 30
工業機械産業 未熟練 6,500~7,500
準熟練 7,000~8,000
熟練 7,500~9,500
サービス産業 未熟練 6,500~7,500
準熟練 7,500~8,000
熟練 8,400~9,500

(注)プランテーション産業は日額、その他は月額
出所: http://www.salary.lk/home/minimum-wage

3. スリランカの社会保障制度

■社会保険法

●社会保険の適用範囲と概要
スリランカのすべての民間の労働者は、被雇用者準備基金 (EPF:The Employees' Provident Fund)に加入することで、退職後の年金が受給できます。EPFにより、民間企業及び公的機関の労働者は、積立基金から退職後の年金給付の受給ができ、またEPFの口座を担保として住宅ローンを借り入れることができます。

●社会保険料
スリランカでは社会保険料を積立金として、給与の8%を労働者、12%を使用者が負担しています。使用者は、給与の20%相当の積立金をスリランカ中央銀行に毎月月末までに送金する義務があります。月末までに積立金を送金できなかった使用者は、不可抗力による場合を除き、5~50%の追加徴収が課せられます。

●社会保険給付

1. 退職後の年金給年金支給付の支払
退職後の年金給付は、次のような条件で支払われます。
  • 定年(男性は55歳、女性は50歳)に達し、退職した者
  • 結婚後退職した女性
  • 永久的な労働不能となって退職した者(医療機関から労働不能であるとの証明が必要)
  • 退職して帰任する者
2. 住宅ローン
EPFに加入している労働者は、EPF管理のための個人口座を担保として、国営銀行から住宅ローンを借り入れることができます。
なお、公務員はEPFではなく、公務員年金(CSP:Civil Service Pensions)に加入します。公務員は、保険料の負担はなく、最後に受け取っていた給与の90%が年金として受給できます。
【スリランカの年金制度】
公務員 民間企業の従業員
年金制度 公務員年金(Civil Service Pensions) 従業員積立基金(Employee's Provident Fund)
負担 無し 従業員の年収の20%をスリランカ中央銀行に納付(雇用者8%、従業員12%)
年金支給 退職後、最終年度の月給の90%が支給される。(確定給付型) 積み立てた額に利回りを上乗せさせた額が支給される。(確定拠出型)

■労働者補償法

●労働者補償法の概要
労働者補償法は、業務上の原因により障害や疾病を追った労働者に対して、使用者が補償を行う義務があることを規定しています。労働者補償法は労働省の管轄で、労働者補償局長によって管理されています。1990年の改正では、負傷者への諸手当の増額や、業務上の障害・疾病にかかる補償の適用範囲が拡大されました。
労働者補償法における「労働者」とは、業務内容や契約形態を問わず、使用者と雇用契約を結んでいる者をいいます。ただし、以下のいずれか該当する者は、労働者には含みません。

  • (a)軍員(文民として雇用されている職員等は除く)
  • (b)警察官

●労働災害時の使用者責任
前述の通り、業務上の災害により労働者が障害・疾病を負った場合には、使用者は労働者の医療費等の補償をしなければなりません。
ただし、以下のいずれかに該当する場合には、補償を行う義務を負いません。

  • (a)障害・疾病による労働不能の期間が3日以下の場合
  • (b)致死的な障害・疾病ではなく、また労働災害の直接の原因が以下のような場合
  • (i)災害発生時、当該労働者が飲酒および薬物の投与をしていた場合
  • (ii)労働者の安全を確保する目的で出された指示、規則に労働者が意図的に従わなかった場合
  • (iii)労働者の安全を確保する目的で設置された安全装置等を、労働者が意図的に安全装置を外したり、適切に使用しなかった場合

●補償金
労働者補償法は、死亡、永久的又は一時的な労働不能に対する補償額を規定しており、補償金は月給を基準として算出されます。永久的な労働不能の場合は、収入額の損失を基準として算出されます。補償金の割合は、障害・疾病の程度により、20~100%の範囲で規定されています。
一時的労働不能の場合は、労働不能期間給与の半分が補償されます。補償期間は、最長5年間です。一部の民間企業は、労働者への補償のために任意で保険に入っており、その場合、雇用者は保険の支払額の差額を支払えば良いとされます。スリランカでは、公的な労災保険は規定されていません。
また、業務上の災害が発生した場合には、事故発生後2日以内に労働省管轄の委員会に報告しなければなりません。



■雇用保険等

●被雇用者信託基金 ETF:The Employees' Trust Fund, No.46 (1980年)
スリランカには雇用保険の規定はありません。ただし、失業の際や退職後の補償を目的として、ETFがあります。
使用者は労働者に対する給与の3%をETFの労働者の口座に振り込みます。ETFは、労働者の負担はありません。ETFに口座を持っている労働者が失業した場合、労働者は、使用者が労働者の口座に支払った金額と利息分を引き出すことができます。

●退職金法 PAYMENT OF GRATUITY ACT、No.12(1983年
5年以上勤務した者が退職する場合、使用者は労働者に対して退職金を支払わなければなりません。使用者は、労働者が退職した日または死亡した日から30日以内に退職金を支払わなければならず、遅れた場合は追加の支払をしなければなりません。
なお、下記の労働者は退職金の支払の対象となりません。

  • 15人以下の事業所で勤務する者
  • 年金の受給資格のある者
  • 就業期間が5年以下の者

退職金の金額は、月給か日給かによってそれぞれ下記の通りとなります。

  • a. 月給被雇用者:最後の月給の半分
  • b. 日給被雇用者:14日分

4. 日本人を駐在する際の留意点

■駐在員のビザ取得

●ビザの取得義務
スリランカへの入国にはビザが必要となります。出張でスリランカに入国する場合には、ビジネスビザもしくは居住ビザのいずれかの取得が必要となります。

●ビジネスビザ
スリランカで商用の滞在をする場合は、入国する前にビジネスビザ(滞在許可日数30日)を取得する必要があります。また、30日を越えて滞在する場合は、現地移民局にて延長手続が必要となります。
滞在許可を延長することを希望する場合は、スリランカ入国管理局にて申請を行うことで、入国日から90日間の滞在期間に延長することができます。
更に最長90日の延長まで許可され、最長180日間の滞在が可能です。

●居住ビザ(Residence Visa)
6カ月を超えてスリランカに滞在する場合は、居住ビザを取得する必要があります。居住ビザは1年毎の更新、最長5年間の滞在が認められます。出入国が自由のマルチプルビザであるため、再入国許可取得は不要となります。事前に在日スリランカ大使館発給の入国ビザを取得した上で、入国後、外国人局で外国人登録を行い、居住する目的を示す書類を出入国管理局に提出し申請します。
ただし、ビジネスビザで入国した場合に、現地で居住ビザに切り替えることができませんので、注意が必要です。

■駐在員の給与設計と計算事例

●日本-スリランカ間の給与格差問題
スリランカに赴任する駐在員に対して給与を支払う場合、日本とスリランカで給与計算方法、適用税率に差があることから、その支給にあたっても一律日本と同様という訳にはいかず、給与額の設定、支給形態等の検討が必要です。
日本とスリランカには適用税率に差があるため、日本と同様の給与を支払うと手取給与額が低くなる場合があります。
スリランカでは、350万スリランカルピー(約511万円)で最高税率適用となるため、支給給与額が約900万円超など高額にならない限り、同額の給与を受け取った場合でも、スリランカでの手取額のほうが低くなります。
そのため、スリランカに駐在員を赴任させる場合には、手取額を補償するためのグロスアップ計算をするケースが多くあります。たとえば年収648万円の駐在員がスリランカで給与を受け取った場合には、約31万円手取額が少なくなります。

●手取額を一致させるグロスアップ計算
前述のように、日本とスリランカの所得税率の違いにより、給与がよほど高額でない限り、スリランカに赴任することで手取額が減るケースが多くなります。
そのため、日本で受け取っていた際の手取額を補償するためのグロスアップ計算を赴任前に行うケースがあります。
給与額によって、上乗せすべき金額は異なりますが、多くの場合50万円近くもしくはそれ以上の上乗せが必要となりますので、事前に支給額の検討が必要です。

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