フィリピン進出支援

税務・税法

目次

1. フィリピンにおける税務の概要
2. フィリピン進出に関わる国際税務 ■PE認定課税 ■租税条約
3. フィリピン国内税法の個別論点 ■個人所得税 ■税率 ■法人所得税 ■付加価値税

1. フィリピンにおける税務の概要

フィリピンにおける税金の種類は、大きく国税、地方税、市・自治区税に区分され、さらに負担方法により直接税と間接税の2つに区分されます。

国税(National Tax)地方税(Local Tax)市・自治区税
(Municipalities Tax)
直接税 ・所得税(個人・法人)
・相続税
・贈与税
・キャピタルゲイン税
・不動産取引税
・出版事業税
・フランチャイズ税
・土砂税
・専門職業税
・遊興税
・その他
・事業税
・固定資産税
間接税 ・付加価値税
・パーセンテージ税
・国内消費税
・印紙税

2. フィリピン進出に関わる国際税務

■PE認定課税
通常、海外に恒久的施設(PE:Permanent Establishment)を設けて事業活動を行う場合には、現地国において納税義務が発生することとなります。言いかえれば、現地国にPEが存在しなければ、現地国における納税義務が発生しないというのが原則です。このPEの範囲については、各国の国内法及び租税条約等でおおまなか例示がされています。 しかし、法的にPEを有していない場合であっても、実態として現地国に置いて所得が発生しているとみなされる場合には、現地国側で非居住者に対しても課税権が発生することになります。 PE認定課税のリスクは、そもそも駐在員事務所においては所得認識が無い状況下で税務申告を行っているため、課税された場合には必ず二重課税の問題が生じるという点です。 このPEの範囲については具体的、かつ明確に定められてはおらず、各国税務当局の判断に基づくものであるため、最悪のケースにおいては、現地国側でPEとして認定され課税がされたにもかかわらず、日本側においてはPEとして認定されず、二重課税の調整が出来ないという事も想定されるため注意が必要です。

■租税条約
租税条約とは、二重課税の排除と脱税の防止の大きく2点を目的として、国家間で締結される成文による国家間の合意(条約)です。この条約については、国家間での約束事であるため、その適用にあたっては、それぞれの国が定めている国内法に優先して適用されることとなります。つまり、国内法において「課税」とされていても、租税条約において「非課税」とされている場合には、「非課税」として取り扱うことができます。 しかし、租税条約を適用することにより、国内法より不利になってしまう場合には、国内法の規定を優先適用することが可能であり、これを、「プリザベーション・クローズ(Preservation Close)」といいます。 また、租税条約以外の各種の条約にも、相手国の居住者などの日本における特定の税目上の扱いを別に定める場合があります。 フィリピンは、日本を含め約30ヶ国以上と租税条約を締結しています。それぞれの国との間で締結されている租税条約は、日本も含め「OECDモデル条約」をベースにして締結されています。

【フィリピンと租税条約を結んでいる国の例】
地域国名
ヨーロッパイギリス、ドイツ、スウェーデン、イタリア、オランダ、スペイン、デンマーク、フランス、ハンガリー、ベルギー、スイス
アジア日本、韓国、中国、タイ、ベトナム、シンガポール、インドネシア、マレーシア、インド、フィリピン
中東パキスタン、イスラエル、バーレーン、アラブ首長国連邦
北中米アメリカ、カナダ、ブラジル
その他の地域オーストラリア、ニュージーランド

注意すべき点としては、日本とフィリピンとの取引であれば、日本とフィリピン間の租税条約を確認すれば足りますが、今後、日本企業のグローバル化に伴い、日本の親会社との直接取引だけでなく、日本以外の海外子会社とフィリピンの子会社との間で取引が行われることも想定されます。
日本以外の国との取引であれば、まずフィリピンと取引当事国との間で租税条約が締結されているかを確認し、その上で締結されている租税条約の内容を検討する必要があります。

3. フィリピン国内税法の個別論点

■個人所得税
フィリピンに居住する個人や日本からの現地駐在員について、個人所得税を計算する場合、まずその対象となる人が「居住者」であるか「非居住者」であるか、つまりその対象者の居住性が重要となります。この居住性により、課税される所得の範囲が異なってきます。

●課税される所得の範囲
フィリピンでは、「フィリピン国籍の居住者(Resident Citizens)」の場合は、フィリピン国内の所得だけでなく、どこで受け取ったに関わらず、その他の国において発生した所得のすべてがフィリピンにおいて課税されることになります(いわゆる、全世界所得の申告が必要になります)。
フィリピン国籍の居住者外国籍の
居住者
非居住者
フィリピンにおいて発生した所得(国内源泉所得)課税
フィリピン以外の国で発生した所得(国外源泉所得)課税非課税
日本からの駐在員の場合、通常、「外国籍の居住者(Resident Aliens)」に該当すると考えられます。外国籍の居住者については、国内源泉所得のみがフィリピン国内で課税されます。したがって、日本において不動産などを有していて、そこから賃貸収入などが発生している場合には、フィリピンでの課税は行われないことになります。
前述のように、フィリピンの税法では、居住者を180日以上フィリピン国内に滞在又はフィリピン国内に住居を有するものと定義しています。
一方、日本の所得税法では、国内に住所を有し、又は現在まで引き継いで1年以上居所を有する個人、を居住者と定義していることから、一定の場合は、日本とフィリピンの双方で居住者の認定を受け、所得税が両国で二重に課税されることになります。
仮に、両国で居住者に該当する場合には、両国間で締結されている租税条約に基づき、いずれかの国でのみ居住者となります。
また、日本からの短期の出張や現地視察の場合などで、租税条約に定められる短期滞在者免税(日フィリピン租税条約 第15条)の要件を満たす場合には、フィリピン側において所得税の申告納付する義務が免除されます。

■税率
税務上の個人の居住者及びフィリピン国籍の非居住者は、上記から算出された総収入金額から各種控除額を差し引いた課税所得の額に応じて、7段階の累進課税率が適用されます。

【個人所得税率
(居住者及びフィリピン国籍の非居住者)】
年間課税所得(ペソ)税率
0~10,0005%
10,001~30,000500+10,000を超える部分に対し10%
30,001~70,0002,500+30,000を超える部分に対し15%
70,001~140,0008,500+70,000を超える部分に対し20%
140,001~250,00022,500+140,000を超える部分に対し25%
250,001~500,00050,000+250,000を超える部分に対し30%
500,001~125,000+500,000を超える部分に対し32%
外国籍の非居住者に対しては、一律25%の税率が適用されます。
【個人所得税率(外国籍の非居住者)】
年間課税所得税率
一律(フラットレート)25%
一方、多国籍企業の地域統括本部(RHQ:Regional Headquarter)や地域経営統括本部(ROHQ:Regional Operating Headquarters)、オフショア銀行(OBU:Offshore Banking Unit)、石油開発関連企業等の外国人従業員については、以下の優遇税率が課税されます。なお、この優遇税制は上記組織に勤務し、上記従業員と同等の地位に就くフィリピン国籍の居住者に対しても適用されます。
会社が、管理的な立場にある従業員(Managerial or Supervisory Position)に対して物品や役務を提供した場合には、上記の個人所得税とは別に、付加給付税が課されます。管理的な立場にある者とは、経営方針の策定にかかわる者、従業員の採用、解雇の権限を有する者、事業活動に対して経営者に助言する立場にある者と定義されています。これに該当しない一般の従業員(rank and file employee)は、この付加給付税の対象外とされています。 付加給付とは、雇用主から平社員以外の従業員に対して提供される物品やサービスなどをいい、金銭であるかどうかを問わず、経済的利益を供与するものです。
なお、付加給付税は事業主によって源泉徴収されて、課税関係が終了するFinal Tax課税であるため、個人所得税の対象となる課税所得には含まれません。

■法人所得税

●納税義務者・課税所得の範囲
フィリピンにおける法人所得税については所得税法に規定されており、法人所得税の対象となる納税義務者は、内国法人と外国法人に分けられ、それぞれの区分に応じて課税される所得の範囲が異なります。
内国法人
(Resident Corporation)
フィリピンの法律に基づき設立又は登録された法人をいいます。 課税年度中に獲得した国内及び国外源泉の全課税所得となります。
外国居住法人
(Resident Foreign Corporation)
フィリピン国外の法律に基づき設立又は登録され、フィリピン国内で支店や事業所等を有し、事業を営んでいる法人をいいます。 課税年度中に獲得した国内源泉所得のみとなります。
外国非居住法人
(Non-Resident Foreign Corporation)
フィリピン国外の法律に基づき設立又は登録され、フィリピン国内で事業を営んでいるものの、フィリピン国内に支店等の恒久施設(PE)を有していない法人をいいます。 課税年度中に獲得した国内源泉所のうち、利息、配当、賃借料、使用料、技術料等のみが課税対象となります。
●税額計算
法人の所得税率については、課税所得金額に対し、30%の税率を乗じて税額が算出されます。なお、2000年1月1日より、通常課税とは別に、売上原価率が55%を超えない法人については、15%総所得課税を選択することも認められています。
●留保金課税制度
フィリピンには留保金課税制度があり、事業に必要と認められる場合を除き、不当に多くの利益を留保した場合に、当該留保金に対し10%が課税されます。ただし、以下に該当する法人には適用されません。

・上場企業
・銀行、ノンバンク金融仲介業者
・保険会社
・フィリピン経済区庁 (PEZA:Philippine Economic Zone Authority) 登録企業 ・経済開発区及び特別経済特区登録企業のうち、優遇税制の対象企業
●納付・申告方法
フィリピンでは日本と同様に、自己申告納税制度が採用されており、納税者自身が課税所得を計算し、申告書の提出と税額の納付をしなければなりません。

付加価値税(VAT:Value Added Tax)とは、フィリピン国内における付加価値を課税対象とする税金であり、以下のような特徴を有しています。
・物品、サービスの消費に対して課される間接税である
・税金の負担者は最終消費者である
・中間業者は税負担しないが、納税義務を負う
・毎月申告、納付する義務がある
日本における消費税のように、フィリピンにおいても物品の販売、役務の提供にあたって、原則として12%の付加価値税が課税されます。

●納税義務者
VATの負担者は最終消費者ですが、納付義務を負うのは、年間売上高が1,500,000ペソを超えるVAT課税対象物品の販売あるいはサービスの提供を行う事業者(VAT登録事業者)、ならびに物品の輸入者であり、個人・法人を問わず納税義務が発生します。VAT納税者はVAT登録業者として内国歳入庁に登録が義務付けられています。
また、上記のほか、フィリピン非居住者による国内でのサービス提供は、一度のみのサービスであっても、VATの納税義務者となります。
●VATの免除
上記、非課税取引とは別に、以下のような物品及びサービスについてはVATが免税(0%対象取引)となります。
・輸出取引
・年間生産高の70%以上が輸出売上である輸出業者に対する売上
・中央銀行への金の販売
・国際運輸サービス

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