マレーシア進出支援

労務・労働法

目次

1. マレーシアの労働法 雇用契約書 ■職務記述書 ■就業規則 ■賃金に関する法制度
2.マレーシアの社会保障制度■労災の類型や規定、財源、給付 ■非熟練外国人労働者に対する労災・医療制度

1.マレーシアの労働法

■労働基準関係法令

■雇用契約書
マレーシアでは労働者を雇用する際には、書面で雇用契約書(マレーシア語または英語の二カ国語併記)を作成する必要があります。
また、雇用契約書に付属する書類として、法定ではありませんが、一般的に作成される書類として職務記述書があります。
雇用契約書には社長の署名や職務内容、雇用期間、試用期間を明記しなければいけません。
原則として雇用契約書は期間の定めのない契約とされますが、有期雇用契約を結ぶ場合は5年未満にする必要があります。
労働者側から雇用契約に関して異議申し立てがあった場合、期間を限定して雇用契約を作成した理由を雇用者側が立証しなければなりません。
立証できなかった場合、期間の定めのない雇用契約が作成されたと判断されます。

更に、雇用者は労働者に対して、雇用契約書の他に就労許可に関する書類、職歴カードを作成する必要があります。
就労許可に関する書類は、書式の形式が法律によって定められています。
この書類は雇用契約を結んだ3日以内に作成をし、従業員に対して提示します。
提示された労働者はこの書類に署名をしなければなりません。なお、労働者はこの書類のコピーを要求することができます。

また、雇用者は、5日間以上勤務した労働者の職歴カードを作成し、保管する義務があります。
職歴カードについても、法律により定められている書式に従い作成します。
また、労働者からの要望がある場合には、前の職場の職歴カードに追記することもできます。
これらの雇用に関する書類には、労働者の仕事に関する給料の支払い分や控除分、実際作業時間等の情報等が記載されることになります。
マレーシアでは雇用契約を結ぶ場合は、労働者は雇用者に対して以下の書類を提出しなければならないと規定されています。
ただし、規定されている書類以外の書類の提出を労働者から求めることは禁止されています。

■職務記述書
職務記述書は、マレーシア労働法に記述はありませんが、従業員の役割、義務、責任範囲のみならず、当該職務に求められる事項(能力、経験等)を含む重要な文章になっています。
書式に関しての法的な定めはなく、雇用者が任意の形式で作成することが可能です。
職務記述書の変更は、労働契約で定められた職務の変更が前提となるので、労働者に対して書面にて事前通知をする必要があります。
マレーシアでは、職務記述書は労務管理上重要な書類になっており、以下のケースで一般的に使用されます。

■就業規則
マレーシアでは、従業員を1名以上雇用している雇用者に対し就業規則の作成義務がありますが、管轄官庁への届出は不要とされています。
なお、届出に関しての罰則はありません。
就業規則はマレーシア語で作成し、新たに労働者を採用する際、雇用契約の締結前に就業規則の内容を認知している旨の確認を書面で提出させる必要があります。
変更の際も、変更後の内容を周知した旨を労働者から書面で確認しなければなりません。

■賃金に関する法制度

■給与と賃金
マレーシアにおける最低賃金は、場所と職種によって決まっています。
また、多くの会社は賃金の他に医療費や保険、交通費、年間ボーナス、退職金や従業員ファンドなども提供しており、これらの付与の内容は、会社によって異なります。
時間外労働に関しては、祝日以外の休日労働に対しては通常賃金の1.5倍以上、休日出勤の場合は2倍以上、公休日の場合は3倍以上の割増賃金で支払わなければなりません。
割増率については、労働契約や就業規則等で決定されます。
労働者の希望があった場合は、超過労働に対する代替として振替休日を提供することができます。
この場合、超過分の労働時間以上の休暇時間を提供しなければなりません。
休日労働に対する賃金は、労働組合や労働者の代表、代表機関で取り決められた労働協約や、労働契約によって決定されます。
時間外労働と同様に、労働者の希望があった場合は、休日労働に対する代替として振替休日を提供することができます。
なお、振替休日をとった場合は、休日労働に対する賃金は支払い対象とはなりません。

1.マレーシアの社会保障制度

■労災の類型や規定、財源、給付
1969年被用者社会保障法(Employees Social Security Act 1969)に基づき、1971年に人的資源省の下に設置された社会保障機構(Social Security Organization:SOCSO/PERKESO 日本でいう労災保険)により、民間被用者を対象とする労災給付制度が運営されています(なお、SOCSOは1985年に人的資源省の内局から、政府関係機関に組織変更された)。
月給3,000リンギ以下の被用者及びその使用者に制度加入が義務付けられており、自営業者や家事手伝い、外国人労働者等は対象外です(月給3,000リンギを超える被用者は使用者と合意のうえでの任意加入。一方、加入後に月給3,000リンギを超えた者は拠出を継続する義務がある)。
なお、2012年7月、政府は、タクシードライバー等の自営業者もSOCSOに加入できるよう検討を進めている旨を発表しました。

財源は、労使双方からの拠出であり、被用者が月給の0.5%(下記の疾病年金スキームへの拠出分)を、使用者が同1.75%(下記の疾病保険スキームへの拠出分1.25%、疾病年金スキームの拠出分0.5%)を負担しています。2010年には約20億リンギの拠出金が集まり、基金は186億リンギに達しました。
投資予算は179億リンギ、収益率は5.14%、資産構成は以下の通りです。

マレーシア政府関連証券(MGS):82.6億リンギ(46%)
貸付金・債券:20.5億リンギ(11%)
株式:27.3億リンギ(15%)
金融市場:48.6億リンギ(27%)

給付は、労災保険スキーム(Employment Injury Insurance scheme)と疾病年金スキーム(Invalidity Pension Scheme)の2種類があります。
労災保険スキームは、被用者の勤務(通勤を含む)に伴う負傷、疾病、障害、死亡に対して補償を行うものであり、医療給付、障害給付、葬祭給付、遺族給付リハビリテーション給付及び教育ローン給付があります。
一方、疾病年金スキームは、勤務に起因するか否かを問わず、重度の身体障害や治療困難な疾病が原因で収入が3分の1以下になった場合に補償を行うものであり、給付を受けるにあたっては55歳未満であること、SOCSOに設けられている医療評議会(Medical Board)の審査を経ること等の要件を満たす必要があります。
疾病年金(一時金)、介護給付、葬祭給付、遺族給付、遺族給付リハビリテーション給付及び教育ローン給付があります。

■非熟練外国人労働者に対する労災・医療制度
マレーシアの労働力人口(約1,200万人)の2割弱を占める非熟練外国人労働者(約180万人、これに加え相当数の違法外国人労働者が居住していると言われている)に対しては、民間保険会社が提供する特別な労災保険、医療保険スキームが用意されています。
これらの外国人労働者に対しては、EPFは任意加入、SOCSOは対象外として取り扱われています。

1)労災(Foreign Workers Compensation Scheme)
使用者は、外国人の労働災害をカバーする外国人労働者補償保険への加入が義務付けられています。
死亡・後遺障害の場合の保険金は最大2,3000リンギ程度ですが、医療費・入院費は最大500-750リンギ程度と少ないです。指定された十数社の民間保険会社が同保険商品を扱っており、保険料は一人当たり年額80リンギ程度からです。

2)医療(労災を除く)(Foreign Workers Hospitalization & Surgical Insurance Scheme )
2011年1月より、民間医療保険への加入が義務化されたプランテーション業と家事手伝いを除く。未加入の場合は労働許可が下りない)。
これにより、労働災害以外の医療費(公立医療機関での診療のみ10,000リンギまで)をカバーします。
保険料は年間120リンギで、労働者側が保険料を支払います。数十社の登録民間保険会社が同商品を扱っています。

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