インドネシア進出支援

インドネシアの会社法

目次

1. 機関の体系 ■機関の体系 
2. 株主(株主総会) ■株主の権限 / ■株主総会
3. 取締役(取締役会) ■取締役(取締役会) / ■取締役の要件 ■取締役の選任・解任
4. 監査役(コミサリス)会 ■監査役会 / ■監査役の人数 ■監査役の責任 / ■イスラム法監督評議会
5.会計監査人 ■会計監査人

1.機関の体系

■機関の体系
インドネシアの株式会社の機関は、株主(総会)、取締役(会)、監査役(コミサリス)会から構成されます(1条2項)。
各機関は、その設置が義務付けられているという点で共通していますが、公開株式会社か非公開株式会社か、大衆向けに社債を発行しているか否かなどの違いにより、その設置人数の要件が異なっています。
また、日本の会社法と同一の呼称であっても、その役割が異なる機関もあります。特に監査役会については、日本の会社法上の監査役の役割と比べて、強い権限を有しているという特徴があります。したがって、これからインドネシアへ進出する日系企業は、自社で検討した機関設計がインドネシア会社法を遵守するものであることを確認するとともに、各機関の役割を十分に把握したうえで、適任者の選任を行う必要があります。

2.株主(株主総会)

 ■株主の権限
株主には、株式会社法のもと以下の3つの権利が与えられています(52条1項)。
a.株主総会に出席し、議決権を行使する
b.配当および清算時残余財産の分配を受ける
c.株式会社法に準拠したその他の権利を行使する
bについては、日本における自益権と同様の概念で、株主がその保有する株式数に応じて会社から利益の配当を受取る権利のことです。ただし、優先株式を発行している場合は、株主ごとに異なる配当額の決定が可能となります。
aおよびcについては、日本における共益権と同様の概念で、保有する株式数に応じて議決権を行使することで会社の経営に参加する権利のことです。例えば、取締役および監査役の選任・解任は株主総会の専決事項とされていますし、定款の変更、決算報告書の承認、増資・減資、配当額の決定などの基礎的重要事項についても、株主総会の決議によるものとされています。これにより、株主は、その保有する株式数の割合に応じて権利を行使することで、会社及び自らの利益を保護します。
なお、各株式に与えられる権利は分割して行使することができません(52条4項)。また、1株を複数の者で保有することができますが、その場合、株主としての権利行使は、使命された代表者により行われます(52条5項)。 また、この他、以下のような少数株主を保護する規定も設けられています。

■株主総会
インドネシアの株式会社法上、株主総会は、年次株主総会と臨時株主総会から構成されます(78条1項)。年次株主総会は、会計年度終了後6カ月以内に開催される必要があり、臨時株主総会は必要に応じて開催できます。 年次株主総会では、66条2項に定めのある資料について年次決算報告書として提出することが必要となっています(78条3項)。その他、取締役・監査役の選任および解任などについて決定されます。 臨時株主総会は、必要と認められる場合には、取締役は適宜開催できることとされています(78条4項)。また、議決権の10%以上の株式を有する株主、監査役会が開催を要求する場合には、総会を開催しなければなりません。具体的な決議事項は、取締役の急な退任に基づく選任決議や、合併、買収等の組織再編行為、会社の解散、清算による法人格の消滅に係る事項等があげられます。

3.取締役(取締役会)

■取締役(取締役会)
インドネシアの株式会社法上、取締役は、会社の日常業務を行うために設置を義務付けられた機関です。株主総会により選任されますが、選任人数、任期、資格等詳細について定款にあらかじめ定めておく必要があります。 任期は定款で任意に決めることができ再選も可能ですが、任期を終身とすることはできません。

■取締役の要件
取締役に選任できる人物は、法的な行為を遂行する能力があり、選任される5年前までに次の事項に該当しないことをその要件としています(93条1項)。 a.自己破産している b.破産した会社の取締役または監査役であった c.国庫または金融分野において損害を与え刑罰を受けた この条件を充たさない取締役の選出は、他の取締役または監査役がこの条件を充たさない事実を知った時点から法的に無効となります(95条1項)。また、その場合、取締役会または監査役会は、この事実を発見してから7日以内に、その取締役選出の取り消しを新聞に掲載するとともに、法務人権省に報告しなければなりません(95条2項)。

■取締役の選任・解任
取締役の選任および解任は、株主総会において決定されます(94条)。この点については、日本の会社法と同様です。一時解任については、監査役会の決定により書面にて当該取締役に通知されます(106条1項2項)。 取締役は一定期間をもって選任され、任期の延長をすることが可能です(94条3項)。任期の延長がされない限り、選任期間が満了した段階で取締役の権限が失効します。 なお、取締役の選任の権限は、株主総会以外の他の機関に委譲することができません。取締役選任の他に、その交替、解任の方法と発効日、取締役候補者の選出方法を定款により定める必要があります(94条4項5項)。特に株主総会で取締役の選任、交替、解任の発効日を定めない場合については、総会終了時点が発効日となります(94条6項)。 取締役会は、取締役の選任、交替、解任があった場合には、株主総会決議後30日以内に法務人権省に報告する義務があります(94条7項)。 また、取締役の一時解任がある場合、その通知があった日から30日以内に株主総会を開催しなければなりません(106条4項)。この株主総会で、当該取締役は弁解をする機会が与えられますが(106条5項)、この処分が株主総会で支持される場合には、当該取締役は一時解任が継続されます(106条7項)。一時解任通知がなされた日から、30日以内に株主総会が開催されないか、株主総会で一時解任処分を解除するか支持するかの結論が出ない場合には、一時解任処分は取り消されます(106条8項)。

4. 監査役(コミサリス)会

■監査役会
インドネシア会社法上の大きな特徴として、監査役へ強い権限が与えられていることが挙げられます。監査役の本来的な役割は、株主に代わって会社経営の監督を行う立場として、日常業務を執行する取締役(会)の方針を監督しアドバイスすることです。  詳細な権限については、定款に定めるものとされますが、取締役の解任権、業務差止権、取締役不在の場合の業務運営権等を規定することができます。ただし、監査役はあくまで対内的に取締役を指導助言する立場とするのが原則であり、対外的に会社を代表する権限を有するわけではないことに注意が必要です。 監査役の選任・解任は株主総会での決議によります。任期については、定款により規定されますが、2,3年の任期とし、再選を可能とするのが通常です。

※会社法上の規定です。ネガティブリストに該当する場合には、アンチダミー法の適用を受けます。

 ■監査役の人数
監査役の選任人数は、1名以上で構成されます(108条3項)。日本の株式会社においては、監査役非設置会社も存在しますが、インドネシアでは株式会社には監査役が1名以上必要です。 取締役が単独の行為によって職責を遂行する一方で、1名以上で構成される監査役会は、単独での行為が認められず、各監査役は監査役会の決議に基づいた行為のみが認められます(108条4項)。 公衆向けに社債を発行する公開会社は、2人以上の監査役を選任しなければなりません(108条5項)。
 ■監査役の責任
監査役会の役割は、会社経営の監督および取締役へのアドバイスです。そのため、取締役が業務執行に関する責任を負うのに対して、監査役会は、会社経営に関する監督責任を負うことになります。監査役会は、過失あるいは職務の逸脱した行為によって会社が損失を被った場合には、個人としての責任を負うこととなります(114条3項)。2人以上の監査役がいる場合には、この責任は各監査役が負うこととなります(114条4項)。 なお、取締役と同様、以下のことが立証できる場合には、監査役は会社に対して責任を負いません(114条5項)。 a.会社の利益、設立目的、目標に沿って誠意を持って注意深く監督業務を遂行した b.損失をもたらした取締役の行為に対して、直接、間接を問わず、個人的利益を 持っていなかった c.上記損失の発生または継続を防ぐ対応をすべく取締役にアドバイスした また、監査役会が責任を負う場合における株主の地方裁判所への告訴の要件、2007年の改正株式会社法の監査役会の監督における過失または怠慢による会社の破産宣告に関する取り扱いについては、業務執行に対する責任と会社経営の監督責任という内容の違いはありますが、その要件については同様となります(114条10項、115条1項2項3項)。
■イスラム法監督評議会
イスラム法に基づいて事業を行う会社については、イスラム法監督評議会を監査役会とは別に設置しなければなりません(109条1項)。これはインドネシア特有の機関であって、取締役会にアドバイスや提案をする他に、会社がイスラム法の原則に則った活動を行っているか監督する機関です(109条3項)。この評議会は、イスラム学者評議会の推薦に基づいて、株主総会で選出された1人以上のイスラム法専門家で構成されます(109条2項)。

5.会計監査人

■会計監査人
日本では、金融商品取引法上の株式公開会社、会社法上の大会社に該当する会社は、公認会計士の監査を受けることが義務付けられています。インドネシアにおいては株式会社法および商業大臣決定において、以下に該当する会社が決算報告書について公認会計士に監査してもらわなければなりません(株式会社法68条1項、商業大臣決定No.121/MPP/Kep/2/2002第2条)。また、会計監査人は、インドネシア共和国の公認会計士でなければなりません。 a.一般大衆との間で資金を調達ないしは資産運用する事業を営む会社 b.一般大衆向けに社債を発行している会社 c.銀行債務を有する会社 d.株式公開会社 e.国有会社 f.外資企業(PMA) g.資産が250億ルピア以上の会社または売上が500億ルピア以上の会社


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