ベトナム進出支援

M&A に関する法律・規制 |ベトナム進出コンサルティング

M&Aに関する法整備の状況

ベトナムは、2007年に世界貿易機構(WTO)に加盟したことに伴い旧外国投資法に代わって、共通投資法と 統一企業法を施行し、法体系が整備されました。外国資本企業もベトナム国内企業と同様の法律の下に規制されることになり、従来に比べ投資の自由度が高まり、外資の参入が制限されていた多くの業種に対して、段階的に市場開放が行われています。 ただし、現時点でM&Aを専門的に規定している法律は存在せず、下記法規に規定されるに留まっています。

基本的に国際協定がベトナム国内のどの法律よりも優先されることになりますが、国内法との矛盾もあり、実務上、解釈が難しい場合も多くあります。ベトナムの法整備・行政手続は不透明なところが多く、法律と実態に乖離があるため、十分な注意が必要です。 たとえば、外資の出資比率が100%可能な業種であっても、実務上は投資局が ライセンスを発行しないといったケースは多くあります。さらに法解釈や許可に関する判断基準が担当者、地域、時期によって異なり、ある地域で可能なことも他の地域では不可能ということも発生します。また、同地域の同担当者であっても、タイミングによっては、判断基準が異なることがあります。過去の結果は、その時点での担当者の判断・解釈にすぎないためです。

あらゆるリスクを想定し、各々の予防策を用意するという意味で、ベトナムに精通した専門家による法務 デュー・デリジェンスが財務 デュー・デリジェンスと同様に重要な役割を果たすと考えられます。

投資規制

ベトナムに投資を検討する際、最初に留意すべき点は、外国投資に対する規制についてです。どれだけベトナムマーケットに魅力があったとしても、外国投資の 規制業種に該当している場合、進出することはできません。
現在、ベトナムにおける規制・制限については、内資・外資を含め以下のものがあります。

[投資禁止分野(内資・外資が対象)]
国防、国家安全および公益を損ねる投資事業
・ 不法薬物の製造および加工
・ 国家の利益および組織と個人の権利と利益を害する分野
・ 探偵および捜査分野

歴史文化遺産および伝統を損ねる、公序良俗に反する投資事業
・ 歴史および国家文化遺産の域内で建設する案件、および建築と景観に悪影響を及ぼす案件
・ 風俗品および迷信を招く物品の製造
・ 危険な玩具、人格形成および健康に悪影響を与える恐れのある玩具などの製造
・ 売春および女性、児童の人身売買生態環境を損ねる投資事業
・ 国際条約に定める化学品の製造
・ ベトナムで禁止されている、または使用されていない獣医薬品、植物薬品の製造
・ ベトナムで禁止されている薬品、ワクチン、バイオ医療製品、化粧品、化学薬品、殺虫剤の製造

有害廃棄物処理にかかわる投資事業 ・ ベトナムへ有害廃棄物を持ち込み処理する案件、有毒化学薬品を製造する案件、国際条約において使用が禁止されている有毒化学薬品を使用する案件

[条件付投資分野]
内資・外資共通
・ 国防、国家安全に関する分野
・ 金融、銀行業
・ 文化、情報、新聞、出版
・ 娯楽産業
・ 天然資源の採掘、生態環境保護
・ 教育、訓練事業
・ 法律により定められるその他の分野
・ 国際条約に定める分野
共通投資法およびその施行細則を定める2006年9月22日政令(Decree No. 108 / ND-CP)において、投資禁止分野と条件付投資分野が定められています。投資禁止分野に該当する業種は、投資自体ができません。また条件付投資分野に該当する 規制業種は、投資 審査手続が必要となり、 審査なしの業種よりも許可の取得が難しく、時間がかかります。具体的な禁止業種・ 規制業種は以下のとおりです。

[外資のみ対象]
・ 放送、テレビ放映
・ 文化的作品の制作、出版、配給
・ 鉱物の探査および開発
・ 長距離通信およびインターネットの設置およびサービス
・ 公共郵便網の建設、郵便および宅配サービス
・ 河港、海湾、空港の建設および運営
・ 鉄道・航空輸送、海上・水上輸送、旅客輸送
・ 漁獲
・ タバコ製造
・ 不動産業
・ 輸出入および運輸業
・ 病院、診療所
・ 国際条約において外資への市場開放を制限しているその他の投資分野

  • レコーディングを除くマスメディア
  • 専門職(エンジニア、医療関連、会計士、建築士、犯罪捜査、科学者、税関貨物取扱者、環境設計、山林管理、地質調査、内装設計、景観設計、弁護士、司書、船舶航海士、船舶機関士、配管業、製糖、社会福祉、教師、農業、漁業、ガイダンス・カウンセリング、不動産サービス、呼吸器治療、心療内科)
  • 払込資本金が250万USドル未満の小売業
  • 協同組合
  • 民間警備保障会社
  • 小規模鉱業
  • 群島内・領海内・排他的経済海域内の海洋資源の利用、河川・湖・湾・潟での天然資源の小規模利用
  • 闘鶏場の所有、運営、経営
  • 核兵器の製造、修理、貯蔵、流通
  • 生物・化学・放射線兵器の製造、修理、貯蔵、流通
  • 爆竹その他花火製品の製造
出所:JETRO(『第9次外国投資ネガティブリスト』2012年より抜粋)

■ 出資比率による規制 ベトナム政府は2007年のWTO加盟に伴い、WTOサービス分類による12分野のうち次の11の分野において市場開放することを発表しました。

[出資比率10% ]
定款に別段の定めがある場合を除いて、普通株式総数の10%超を6カ月以上継続して保有する 株主に対しては、議案提案権および 株主総会招集権を認めています。これらの少数株主権の行使要件は、日本の規定に比べて厳しいです。通常の友好的な提携を前提とするならば、このような権利を行使する状況になるとは考えにくいですが、保有比率を検討する過程で考慮する必要があります。

[出資比率25%]
ベトナム証券法32条によれば、上場企業の既存議決権付株式の25%以上を取得する場合には、公開買付を行わなければならないという規定があります。

[出資比率49%]
次の2つの事項により、この比率は非常に重要となります。

・ 上場企業投資に関する規制(2005年9月29日付首相決定第238号)には、外国人投資家は上場企業株式の49%超を取得することはできない旨の定めがある。
・ 規制業種への投資海外法人の出資比 率が49%を超える在ベトナム企業がM&Aを含む投資を実行する場合には、投資計画局(Ministry of Planning and Investment)の認可が必要となる(投資法46条、47条)。このような企業は、金融、不動産、建設、運輸等、投資法が定める分野において投資が規制される。

[出資比率65%]
ベトナムの株主総会の普通決議の定足数は、議決権総数の65%であり、決議要件が総会出席者の議決権総数の65%です(企業法102条1項、104条2項a)。つまり、支配権を獲得するためには、議決権総数の65%以上の株式を取得する必要があります。ただ し、ベトナムのWTO加盟に伴い、外国企業については議決権を有するすべての株式の過半数を取得することによる支配が可能です。

[出資比率75% ]
定款変更、会社再編、株式発行数・種類に関する事項などは特別決議による承認が必要です。なお、特別決議の定足数は議決権総数の65%であり、特別決議の要件は有効な株主総会において出席者議決権総数の75%以上を有する 株主の賛成を得る必要があります(企業法104条2項b)。

資本金に関する規制(内資・外資が対象)
外国企業がベトナムに会社を設立する際の資本金は、一部の分野を除き、原則自由に設定することができます。規制分野は次表のとおりです。

上記分野でなければ、最低資本金額のルールはありません。ただし、実務上、資本金ゼロでは投資許可を取得できません。また、進出企業の資本金額が親会社の保有する現預金額を上回っている場合は、当局より指摘を受け、投資許可を取得できない可能性があります。

■ 外国企業の土地所有に関する規制
ベトナムでは、土地は国民の共有財産であり、国有のものとされています(民法205条、憲法17条)。原則として、国はベトナム国籍を有する個人・法人に土地使用権を付与しています。進出する外国企業には土地の所有は認められていないため、ベトナム政府から土地を賃貸し、使用料、賃貸料を支払うことになります。 2007年12月6日付財務省発行の通達第145号(TT-BTC)および2010年1月8日付通達第2号(TTLT-BTNMT-BTC)に従い土地、水面、海面の使用料を算定し、賃貸料を支払う必要があります。

■ 外国企業の借入に関する規制
ベトナムで事業を行う場合、ベトナム国内にある銀行、または親会社から借入れることができます。利用目的等には規制があります。

[ベトナム国内で借入をする場合]
ベトナム国内で借入をする場合、ベトナム国内銀行から借入をする方法と、外資銀行から借入をする方法があります。 前者は、ドン建での借入をすることができます。後者は、ドン建・外貨建どちらでも借入をすることができます。しかし、外貨建で借入をする場合には、海外からの輸入・サービスに対する支払資金、ベトナムから外国への投資資金、対外債務の期限前返済資金など運用目的に制限があります。 また借入の申請には、担保もしくは保証書を提出する必要があります。

[ベトナム国外から借入をする場合]
一般的に親会社等の関連会社から、運転資金等を補てんするために親子ローンが組まれます。このような海外からの借入をする場合、ベトナムでは、その借入期間によって規制の内容が異なります。

1 年以内の短期借入
1年以内の短期借入による資金は、経常口座に必ず入金しなければならず、その用途は、運転資金に限定されます。ベトナム中央銀行への事前申請は不要です。

1 年超の中長期借入
借入期間が1年を超える場合には、借入の都度、ベトナム中央銀行に事前申請を行い、借入登録証を取得しなければなりません。申請書類には、申請書に加え、投資証明書の写し、借入契約書の写しなどが必要です。 また借入れる資金は、資本金口座もしくは借入金専用口座を開設して、経常口座と区分して入出金管理をしなければなりません。

前述したとおり、外国企業に対して多くの業種が開放されましたが、法律の定義があいまいであること、法律と実態が異なることなどから、不透明な点が残ります。

■ 投資許可証に関する留意点
| ベトナムでは、法律上、外国資本の規制に該当しない分野への投資でも、実務上、規制される場合があるため、進出の際は、専門家に十分、相談する必要があります。その他、外国企業が投資許可証を取得する際に、事前に知っておくべき主な留意点は、次のとおりです。

親会社の実績重視
ベトナムで始める事業に関する親会社での実績が、非常に重要になります。親会社の定款の事業目的に、その事業が記載されている必要があります。たとえば、ベトナムでITのソフトウェア開発の 投資許可証を取得したい場合は、その親会社の定款の事業目的にITソフトウェア開発が記載されていなければなりません(またはそれに近い事業目的)。 さらに業種によっては、親会社の実績を示すために取引先との契約書や請求書、写真などの根拠を示す追加書類を計画投資局より求められることがあります。追加書類により手続が大幅に遅れてしまうこともあります。

投資許可証取得が困難な流通分野
流通分野(卸売、小売)に関しては、2007年商務省令第10号(QD-BTM)によって2009年1月1日から100%外資による小売業への進出が可能になったにもかかわらず、 投資許可証の取得は困難な状況にあります。特に2店舗目以降の開設許可についてはエコノミックニーズテスト(ENT)と呼ばれる地方(省レベル)機関や商工省の審査を通過しなければならず、この審査手続に不透明な部分があり、外国投資を難しくしています。 ただし、2013年6月7日から施行された外国企業の商品売買活動のガイドラインである2013年財務省通達第8号(TT-BCT)により、500㎡未満の店舗のENTは廃止されました。これにより、500㎡未満であるコンビニエンスストアなどは多店舗展開をしやすくなりましたが、法律と実態が異なるので、実際に許可が取れるかどうかは不透明な部分が残ります。

外資規制対象の飲食店
飲食店に関しては、2015年1月11日までは外資100%での投資は禁止されています。ベトナムでは小規模資本で経営している飲食店または屋台が非常に多く、資金的にもノウハウ的にも勝った外国資本の進出により、ローカル資本の飲食店が大きなダメージを受けると考えられているためです。この規制のため、人口約9,000万人の大きなマーケットにもかかわらず、外資の飲食店はほとんどなく、マクドナルドですら、1号店ができたばかりです(2014年2月時点)。ロッテリアやケンタッキー・フライド・チキンなどの外資チェーンもありますが、その大半がベトナム資本のフランチャイズ店舗です。 2015年以降は、外資100%で投資ができますが、実際に許可が取れるかどうかは不明です。

ベトナム国内販売に必須のHSコード
ベトナム国内で販売するためには、HSコード(輸出入統計品目番号)と呼ばれる商品コードの登録が必要となります。ベトナム政府はこのHSコードの中で、ベトナム政府が外国資本にとって取得困難な品目を指定しています(2011年商務省令第1380号〔QD-BCT〕)。これらは事実上、国内販売の規制となります。

実務上存在する最低資本金
法律上、資本金額の設定のない業種は原則自由に資本金を設定することが可能ですが、実務上、業種によってはある程度の資本金を用意する必要があります。たとえば輸入販売をする場合は、最低30万USドルの資本金が必要です。

統一企業法

■ 組織再編
[企業分割]
企業分割とは、有限会社または株式会社が分割されることで、同じ種類の会社を複数新設(以下、分割企業)することをいい、分割元企業は清算されます。分割の手順は、以下のとおりです。

① 分割元企業の株主議会、株主もしくは株主総会において、企業分割についての決議を行います。決議内容には分割元企業の会社名と本社所在地、分割企業の会社名、分割の詳細と手続、社員の雇用計画、株式、社債の移転期日と手続、分割元企業の債務に対する対応、企業分割の実施期日が含まれている必要があります。
② 企業分割の決議後15日以内に、その決定をすべての債権者と社員に通達しなければなりません。
③ 分割企業の無限責任パートナー、 株主は、定款、株主議会の議長、分割企業の会長、取締役会、取締役員について承認を行います。承認を得た後、統 一企業法に従って事業登録します。事業登録書類には、分割元企業において実施された企 業分割の決議内容を明記する必要があります。
④ 事業登録した時点で、分割元企業は清算されます。それぞれの分割企業は、分割元企業の未払債務、雇用契約の義務、その他の権利義務を共同で負うか、もしくはいずれの分割企業が義務を負うか、債権者、顧客、社員との間で合意を得なければなりません。

[企業分離]
企業分離とは、有限会社もしくは 株式会社が同じ種類の会社(または複数の会社)を新設し(以下、分離企業)、その企業に資産の一部を移転することをいいます。企業分割とは異なり、分離元企業は清算されずに存続します。分離の手順は、以下のとおりです。

[企業分離] 企業分離とは、有限会社もしくは 株式会社が同じ種類の会社(または複数の会社)を新設し(以下、分離企業)、その企業に資産の一部を移転することをいいます。企業分割とは異なり、分離元企業は清算されずに存続します。分離の手順は、以下のとおりです。

[企業統合(新設合併)]
統合とは、複数の企業を清算し、統合することで新設企業を設立することをいいます。統合の手順は、以下のとおりです。

① 統合される企業は統合契約を締結します。統合契約には、社名、本社所在地、統合の条件、社員の雇用計画、資産、資本金、株式、社債の移転手続、社債の移転条件、期日、統合の実施期日、統合企業の定款草案が含まれている必要があります。
② 統合される企業の 株主は統合契約、統合企業の定款を承認し、社員総会の議長、統合企業の会長、取締役会および取締役員を選任します。また、 会社法に従って統合企業の事業登録をします。事業登録書類には統合契約書が含まれている必要があります。
③ 承認後15日以内に、統合契約書をすべての債権者に送付し、統合について社員に通達しなければなりません。
④ 競争法で規定のない限り、統合企業が関連する市場でのマーケットシェア30 ~ 50%の場合、統合企業の法的代表者は、統合前に競争管理当局にその旨を通知しなければなりません。マーケットシェア50%以上の場合は、法律規定に定める適用除外対象を除き、統合が禁止されています。
⑤ 統合企業の事業登録後、統合された企業は清算されます。統合企業は法的な権利を得るため、統合された企業が所有していた未払債務の支払義務を負います。

[企業合併]
企業合併とは、1つもしくは複数の企業がすべての法的資産、権利義務を他の企業に移転することをいい、合併元企業は清算されます。合併の手順は、以下のとおりです。

① 合併に関わる企業は合併契約を締結します。また、合併をする会社の定款草案を作成します。この合併契約には、合併をする会社の会社名、本社の所在地、被合 併会社の会社名、本社の所在地、合併手続および条件、雇用契約、被合併会社から合併をする会社への出資額、株式、社債の移転条件、手続、期間、合併の実施期日などが含まれている必要があります。
② 合併に関わる会社の社員、所有者、 株主は統 一企業法の規定に従って、定款を作成、合併契約を締結し、合併する会社の事業登録を行います。この場合、合併する会社の事業登録申請書には合併契約書が含まれている必要があります。
③ 合併契約書は承認後15日以内に、債権者全員に送付し、社員に通達しなければなりません。
④ 事業登録が終わった後、被合併会社はその事業活動を終了します。合併する会社は被合併会社の合法な権利・利益を受け、未返済債務、有効な労働契約、および他の財務上の義務について連帯責任を負います。
⑤ 競争法で規定のない限り、合併をする会社が関連する市場でのマーケットシェア30 ~ 50%の場合、その法的代表者は、合併前に競争管理当局にその旨を通知しなければなりません。マーケットシェア50%以上の場合は、法律規定に定める適用除外対象を除き、合併が禁止されています。

証券法

2006年証券法第70号(2006年6月29日制定、2010年同法第62号施行)は、ベトナムの公開会社の株式取得について規定しています。特に、証券法の2009年通達第194号(TT-BTC、2009年10月2日制定)では公開買付について規定されています。これらは、公開会社の買収にかかわる唯一の規制です。

[公開買付の申請が必要とされるケース]
証券法32条1項により、組織または個人は以下のケースで 公開会社の発行済株 式を取得する場合、公 開買付の手続によらなければなりません。

・ 公開会社の株式またはクローズドエンド型投資証券をまだ所有していない、または25%以下を所有している組織または個人、あるいはその関連者(以下、関連者)が、25%以上の株式を取得しようとする場合。さらに、議決権付株 式あるいはクローズドエンド型投資証券を取得しようとする場合
・ 既に公開会社株式の25%以上の株式、または議決権付株 式、あるいはクローズドエンド型投資証券を所有している組織または個人、あるいはその関連者が、さらに発行済の議決権付株 式またはクローズドエンド型投資証券の51%、65%、75%のいずれかを取得しようとする場合
・ 証券法32条1項により、強制的に自己株 式(被申込人)を公開買付で取得しようとする場合
・ 公開会社が 株主総会決議に従い、定款資本を減少させる目的で自社株 式を買い戻しする場合
・ 判決により、公 開買付の実行が要求されている場合

[公開買付の申請が必要とされないケース]
組織または個人は、次のケースにおいて公開買付を行う必要はありません。

・ 公開会社の議決権付株 式およびクローズドエンド型投資証券(発行計画を株主総会およびファンド運営委員会により承認されたもの)を25%以上取得するために、新たに発行される株式および出資証券を予約する場合
・ 株主総会およびパブリックファンド投資家の総会において承認されることによって、 公開会社の 株主およびパブリックファンドの投資家が、株式および証券を既存の株主および投資家からの移転によって取得し、支配権が25%を超える場合
・ 子会社から親会社への株式移転のような、グループ企業間において株式を移転する場合

入札取引を行う前に、公開会社における株式またはクローズドエンド型投資証券を取得しようとする組織または個人は、法律に従い、ベトナム証券委員会に対して情報を開示・報告しなければなりません。

■ 公開買付の登録
公開買付により株式またはクローズドエンド型投資証券を取得しようとする買付者は、ベトナム証券委員会に対し公 開買付届出書を提出する必要があります。さらに、対象企業ならびにその株式を管理する企業、あるいは対象ファンドの評議会に同書類を提出する必要があります。対象企業またはその管理をしている企業、評議会は、受領日から3日以内に、公 開買付に関する情報を受領した旨を、その企業の公表媒体または対象企業が上場する証券取引所において公表します。 ベトナム証券委員会は、公 開買付届出書を受領してから7日以内に届出内容に対する意見を文書で述べる必要があります。記載内容に不備がある場合、買付者はベトナム証券委員会の指示に基づき修正しなければなりません。 公開買付届出書には、以下のものを添付します。

・ 公開買付規制の付属1における標準フォームにおいて公 開買付を登録する届出書
- 発行者の氏名、住所および事業活動部門における過去の事業活動、マーケットシェアについての情報
- 対象企業または対象基金の氏名および住所
- 発行者と対象企業または対象基金との関係
- 発行者と関連者との現在の株式保有割合についての詳細情報
- 公開買付提案時間
- 獲得提案をされた株式総数または投資証明書数、対象企業の発行済株式の保有割合数または総発行済投資証明書数または公示価格
- 買付者が対象企業を運営し続けるための今後の方針、従業員の処遇方針
- クローズドエンド型投資証券を公開買付する場合、ターゲットファンド運営の継続または清算の意思。また、ターゲットファンドの投資戦略の提案。ファンド運営会社の変更を提案する場合は、変更日と新しいファンド運営会社の名前
- 公開買付の資金源
- 対象企業が株 式または投資証券を売却するための登録手続
- 支払期日
- 報告期日
- 公募手続の代理人となる証券会社名
- 撤回事由
・ 公開買付により株式を取得しようとする場合、取締役会または株主総会( 株式会社の場合)、または会社の共同保有者(有限会社の場合)の決議案
・ 定款資本を減少させる目的で自社株 式を買い戻しする場合、株主総会の決議案

買付者が外国法人で、かつ届出書が英語で作成された場合、これをベトナム語に翻訳する必要があります。その際の翻訳は、ベトナム公証人による公証を要します。 なお、外資は、許可されている株 式保有割合を超える公開買付は行うことができません。

■ 取締役会の責務

公開会社における株式買付の場合、対象企業の取締役会は、公開買付届出書を受領してから14日以内に買付者、ベトナム証券委員会、株主に情報公開を踏まえた意見を述べる必要があります。 なお、取締役会が制限時間終了の7日前に意見を明確に述べることができない場合、ベトナム証券委員会に期間延長の申請をしなければなりません。申請書はベトナム証券委員会所定の書式に従って電子記録での提出が要求されます。 クローズドエンド型ファンドを公開買付の対象とする場合、ファンドを管理する企業は、ベトナム証券委員会および投資証券を所有する投資家に対し、公 開買付届出書を受領してから14日以内に株 式公開買付に関する意見を述べなければなりません。その内容は買付者の分析および評価、買付の意図、ファンドの純資産、買付価格設定等の投資戦略に関するものです。 上記の期限までにファンドを管理する企業が意見を提出することができない場合は、ベトナム証券委員会に期間延長の申請をします。それにより期間は7日間延長されます。申請書はベトナム証券委員会所定の書式に従って電子記録での提出が要求されます。 対象企業の取締役会またはファンド評議会による意見書は、文書にして、メンバー総数の3分の2以上の署名が必要となります。買付者は意見書に株 式またはファンドを得るために、資産評価を明記します。取締役会またはファンド評議会のメンバーが資産評価に対して異議がある場合、これを意見書の中に明記する必要があります。

■インサイダー取引規制
証券規制法では、インサイダー取引を規制しています(証券規制法27条1項、3項)。違反した場合、刑事・行政罰だけではなく、取引対象企業の株主等に対しての民事責任も負うことになります。

次の機関、役員等は公開買付期間において、公開買付の情報を利用して自身の証券を売買すること、また公 開買付の売買にかかわることが禁止されています。

・ 取締役会
・ 取締役(取締役総長)
・ 副理事(副本部長)
・ 主任会計士
・ 主な株主
・ 公開買付を行う者
・ 対象企業および対象ファンド
・ 対象ファンドの委員会
・ 公開買付について知る証券会社および個人

■ 公開買付の価格設定
上場企業の株式取得の提示価格は、次のように規定されています。

・ 対象企業および対象ファンドが上場している、または、商取引に登録している場合、提示価格は、対象企業の平均株価、または株式証券取引所が公開している公 開買付に登録する以前の連続する60日間の対象ファンドの平均株価以上でなければならない。
・ 対象企業および対象ファンドが上場していない、または商取引に登録していない場合、提示価格は、対象企業の平均株価、または、2つ以上の証券会社が公開している公開買付に登録する以前の連続する60日間の対象ファンドの平均株価、あるいは、直近に発行された対象企業の社債株 式または対象ファンドの提示価格および投資証券の価格以下でなければならない。
・ 公開買付の期間中、公開買付者(公 開買付を行う者)は、提示価格の値上げに限り許可されている。価格は買付期間終了日の7日前には公表し、対象企業の 株主または対象ファンドの投資家ならびに既に公 開買付者に売ることを認めている 株主や投資家などすべての者に、公平に情報公開しなければならない。

■ 公 開買付の撤回
公開買付公表後の撤回は、次の場合に限り可能です。

・ 公開買付者によって登録された株式および投資証券の総額が公開買付登録時の割合を下回るとき
・ 対象企業の株式の分割、株式合併、および優先株の転向によって、株主の譲決権の総額が増加または減少したとき
・ 対象企業が株式保有資本を減少させたとき
・ 対象企業が証券を増加させたとき。対象ファンドが投資証券を定款資本金を発行するために増加させたとき。また、対象企業が事業または資産のすべてまたは一部を売却したとき
・ 対象企業および対象ファンドが解散したとき

公開買付者は、対象企業の株式や対象投資証券の公開買付の撤回を証券取引委員会に報告します。また、 証券取引委員会が公開買付撤回を承諾後、公 開買付者は新聞(電子版も可)に連続する3日間、公開買付の撤回を公表しなければなりません。

[期間・提示価格]
公開買付期間は30日以上60日以下で、提示価格は公開買付の価格以上でなければなりません。いかなる修正も前出の「公開買付の価格設定」(P.279参照)に挙げた3番目の規定を満たす必要があります。 既に公開買付者と合意している対象企業の 株主および対象ファンドの投資家は、公開買付期間中にこの合意を撤回することができます。

[株式および証券の数]
公開買付者によって提供された株 式および証券の数が、買付者の希望数を下回っている場合、 株主および投資家に同じ買付金額が提示されます。そのため、対象企業の 株主または投資家が保持しているまたは売りに出している株券数の割合によって、株式および証券の購入数が決まります。 公開買付終了時、公開買付者が流通している上場企業の株を80%またはそれ以上保有している場合、公開買付者は引き続き、30日間は同じ階級の株を買い続けます。また、購入株の価格は公 開買付が実施される以前の価格以上でなければなりません。 公開買付時、任命された証券会社は、 株主の買付および投資家の投資証券の買付の収益を送金したり、株および株券を買付提供者に送付しなければなりません。さらに、スワップを組んだ場合、公 開買付者が提出した書面に示された条件により、関係団体へ期限内に株を送付する必要があります。 クローズドエンド型投資証券の公 開買付については、次のように規定されています。

・ 公開買付終了時、証券を所有している投資家が国債およびメンバーファンドに適用される法令により条件を満たさない場合、対象ファンドは証券法とそれに準じる指針により、対象ファンドを解消しなければならない。 ・ 公開買付終了時、公 開買付者が80%またはそれ以上の流通国債株券を保有している場合、公開買付者は引き続き、30日間は同じ階級のファンドの証券を買い続けなければならない。

この規定に基づいて、 開買付終了時、対象ファンドはメンバーファンドを設立するか、または証 券法およびそれに準ずる指針により対象ファンドを解消する必要があります。

■ 公開買付者の禁止事項
公開買付者には、以下の禁止事項が科せられています。
・ 公開買付手続を介さず、直接的、間接的に株 式および対象投資証券の購入または購入の手続を開始すること
・ 持ちかけられている株式および証券の購入または購入の手続を開始すること
・ 同等のレベルで購入を持ちかけられている株式および証券の所有者を平等に扱わないこと
・ 特定の株主や投資家に異なる情報を個別に提供すること(株式の購入を提供される機関、対象ファンド、ファンドマネジメント会社、ファンドの委員会にも適用)
・ 対象企業の株主の株式購入または対象ファンドの投資家の証券購入を公開買付中に拒絶すること
・ 対象企業の株式または対象投資証券を公表した公開買付の登録とは異なる条件で購入すること

公開買付者は公開買付終了の10日後に、「公開買付条文に付随している書面(別紙2)」を 証券取引委員会に提出し、公開買付の結果を公表します。

■ 公開買付履行の義務
公開買付は署名をした日から45日間効力を発揮し、2007年税務登録に関する税務行政法の施行を導く規則第18号(TT-BTC、2007年3月施行)の株式売買と上場企業による追加株式の条件に該当します。 証券取引委員会と証券取引所は、この規則が 公開会社およびファンドによって遵守されているかどうか、監督します。 財務大臣がこの公開買付規制の修正や追加の決定をするため、公開買付の過程で発生したいかなる問題も、調査と解決のために、公開買付者は財務大臣に報告しなければなりません。

競争法(独占禁止法)

2004年競争法第27号(2004年12月3日、商工省制定)では、関係市場のマーケットシェアが50%以上となるような取引は禁止されています。しばしば、M&A取引はこの競争法の対象となります。 また、マーケットシェアの30 ~ 50%を占めるような取引を行う場合、当事者はシェアを占める30日前にベトナム競争管理庁(VCAD:Vietnam Competition Administration Department)に報告する必要があります。 当該法では、マーケットシェアについて定義がなされていますが、その算定方法については明確な定めはありません。今後の改定によって、明記される可能性があります。

WTO協定

ベトナム議会はWTOに加盟するに当たって、WTO 協定に関する条項とベトナム国内法との間に矛盾が生じた場合には、WTO 協定の規定が優先されると決議しました。 ベトナムは一時、社会主義を標榜していましたが、1986年の共産党大会において「ドイモイ(刷新)」をスローガンとし、主として経済分野において市場経済の導入や、官から民への移行、外国資本の積極的受け入れ等の改革を行いました。しかし、依然として社会主義時代に制定・施行された共産主義的色彩が濃い法令が200件近く残存しており、その改廃がベトナム国内において課題となっています。ベトナムの国会で議決される法令の件数は年間7件程度で、それを踏まえると、200件の法令の改廃を数年以内に行うことは、事実上、不可能です。したがって、苦肉の策として前述のWTO 協定が優先されるという決議に至りました。 また、ベトナムが締結している国際条約はWTO(および GATT)に関する条約のみではありません。日本とベトナムの間には日越投資協定があり、最恵国待遇を相互的に保証している以上は、WTO 協定よりも当該協定が優先されるという可能性も考慮しなければなりません。この点は、法務 デュー・デリジェンスにおいて当該協定の権利義務やその具体的な紛争解決手続等を確認する必要があります。

民事訴訟法

ベトナムにおけるM&A最終契約書では、M&A取引の締結あるいは締結後の問題については、信頼できる外国の仲裁裁判所を利用するという、いわゆる仲裁条項を設定するケースがあります。 ベトナム国内では法改正が行われていますが、各地域の裁判所において法解釈に関する理解が多岐にわたっており、思わぬ損害を被る恐れがあります。そこで 、ベトナムではなく、シンガポールや香港などの信頼できる第三国で仲裁を行うことがありますが、その場合、完全にベトナムの司法管轄権を排除することが可能かどうかは確認が必要です。たとえば、当事者間の契約上、第三国において仲裁を行う決定をした後、相手側が取り決めを破り、ベトナムの司法機関に対して何 らかの申立を行った場合は、ベトナム国内の紛争であるため、ベトナムの司法管轄権を排除することは困難です。 さらに、第三国の仲裁手続で一方の主張を相手側が認諾した場合でも、ベトナムにおいて執行可能かどうかを仲裁裁判所に確認する必要があります。ベトナム民 事訴訟法343条によれば問題はありませんが、ベトナム仲裁法上、「ベトナム法の基本原則に抵触する場合」に該当するとして外国仲裁裁判の判決の執行が否定された判例もあります。仲裁裁判所での判決の承認が得られるよう、事前に弁護士に正式に依頼する必要があります。

会計基準(国際財務報告基準)への移行

■ 会計基準
ベトナムでは自国の会計基準が適用されており、国際財務報告基準(IFRS)へは移行されていません。2001年12月31日に初版のベトナム会計基準が発効され、2008年9月30日には26からなるベトナム会計基準が発効されました。これは IFRSに基づいて作成されていますが、減損会計、金融商品会計、年金会計、株式報酬など IFRSとの大きな相違が見られます。 IFRSへの移行には向かっているものの、まだ時間がかかるものと考えられます。

■ 監査制度
外国企業、上場企業、金融機関は法定監査を受けることが強制されています。しかし、上場企業でありながら法定監査を受けている企業の割合はかなり少ないのが実状です。したがって、自社が法定監査を受ける可能性があったとしてもデュー・デリジェンスにおいて、参考用として他企業の監査済の財務諸表の入手は困難です。不備のない財務諸表を作成するためには、監査後に修正が必要となる場合もあります。

ベトナムにおけるM&Aトピック

  1. 1. M&A に関する法律・規制
  2. 2. M&A に関する税務
  3. 3. M&A スキームの基本

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