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M&A に関する法律・規制 |タイ進出コンサルティング

M&Aに関する法整備の状況/h3>

M&Aに関連する主要な法令は、外国人事業法に基づく外資規制、タイの会社法である民商法典及び公開会社法、公開買付や開示などに関する証券取引法、独占禁止法に該当する取引競争法等、非常に多岐に渡るため、横断的に理解しておく必要があります。

【M&Aに関連する法規】
外国人事業法
外国人の事業活動を制限する業種を定める
民商法典
パートナーシップ及び株式会社について規定している
公開会社法
公開会社について規定している。非公開会社に比べてコーポレートガバナンスの要請が強くなっている
証券取引法
株式の取引について規定
取引競争法
市場においての公正な取引の維持を目的として制定
労働法
労働者を保護する目的に制定

M&Aに関する外資規制

■外国人事業法による外資の出資比率規制 
タイでは、自国産業を保護するために外国人事業法(1972年発布、1999年改正、2000年3月施行)を規定しています。同法は、総資本の50%以上を外国人または外国企業が保有している会社を「外国人」と定義し、規制業種への参入を制限しています。
タイの規制業種の範囲は非常に広範となっており、サービス業に関しては、ほとんどの業種が対象となります。そのため、いかに経営権を確保するかがポイントとなります。規制を回避する方法としては、以下のような方法が考えられます。

[友好的な株主を利用する方法]
外資の出資比率が制限される場合、日本企業49%、タイ企業51%の合弁会社を作る方法が基本的な方法となります。この場合には、過半数の議決権をタイ企業側が保有することになるため、意見が対立する時には事業運営が円滑に進まない可能性があります。
これを回避するための方法として、日本企業と合弁先のタイ企業が49%ずつ出資を行い、残り2%を日系のコンサルティング会社や投資会社などの友好的な株主に出資してもらい、議決権の過半数を占める方法があります。
【友好的な株主を利用する例】
[優先株式を利用する方法]
外国人事業法では、「外国人」の定義を、『50%以上を外国資本が所有する会社』としていますが、規制の対象となるのは、あくまで出資比率であるとされています。
この点に着目すれば、1株あたりの議決権を、株式の種類ごとに変えれば議決権ベースで過半数を獲得することができます。タイでは優先株式の発行が認められており、これを行うことが可能です。例えば、日本企業49株、タイ企業51株の合弁会社の場合、日本企業の保有する株式の1株あたりの議決権を10株とする旨を定めた優先株式とします。その結果、議決権ベースでは、日本企業490 :タイ企業51となり、出資比率規制を遵守したまま、意思決定権をとることができます。
ただし、これは本来の外資規制を潜脱する方法として、タイ政府により規制を強める動きが見られます。実際の利用については、事前に最新情報を確認する必要があります。

■土地に関する規制
タイの土地法(Land Code)により、外国人は原則として土地を所有することができません。ただし特例として、BOI(タイ投資委員会)奨励企業や、タイ工業団地公社(IEAT)認定の工業団地に立地するなどの要件を満たす場合、上記の制限に関わらず土地所有が可能になります。
注意点としては、「外国人」の定義が、下記の通り外国人事業法と異なる点です。例えば、外資49.5%(内資50.5%)の会社の場合、外国人事業法の規制の対象とはなりませんが、土地法の規制対象となるため土地の所有は認められないことになります。

【外国人の定義】
外国人事業法
株式の50%以上を外資が保有する会社
土地法
株式の49%超を外資が保有する会社

■資本金に関する規制
原則として、タイ企業には最低資本金の規制がありません。一方、外国企業においては、最低資本金について外国人事業法による規制業種に該当する場合は300万バーツ以上、その他規制業種に該当しない外国企業の場合には200万バーツ以上が必要となります。
また、外国企業においては、外国人労働者を雇用するにあたり、外国人就労規則が適用され、一人のワークパーミットを取得するために200万バーツの払込が必要となります。
例えば、規制のない業種で、5人の外国人労働者を雇用すると仮定すると、

200万バーツ×5人=1,000万バーツ
となり、最低1,000万バーツの資本金の払込みが必要となります。
このように、企業の形態や雇用する者により、資本金の払込金額も変わってくるので、事前に確認する必要があります。

会社法による規制

それぞれ民商法典22編がパートナーシップ及び非公開会社について、公開株式会社法が公開会社について規定しています。これらを合わせたものが、いわばタイの会社法ということになります。
一般的に会社法では、M&Aの手法として利用される新株発行や新設合併など組織再編に関する意思決定の方法や債権者保護などの手続が規定されており、タイにおいても同様となっています。
一方、特徴的なのが、タイ民商法のうち非公開会社に関する規定がわずか260 条ほどしかないことです。日本の会社法は法律だけで1000条ほどあり、規則も合わせるとかなりの数になるのに比べ、いかに少ないかが分かります。買収手続やその後の会社運営については、法律がないために実務的な取扱いが不透明であるという問題があります。

■新株発行
非公開会社は、付属定款で定めることにより、株式に譲渡制限を付すことが可能である一方で、株式の第三者割当や社債の発行が不可能であると定められています(民商法典1129条、1222条1項、1229条)。
一方、公開会社は、非公開会社と異なり、第三者割当増資を行うことができる、と定められています(公開会社法137条)。


[非公開会社における新株の発行]
民商法典1220条~1228条で、非公開会社の新株発行手続について規定しています。
新株を発行する場合、株主総会の特別決議により決定しなければなりません(民商法典1220条)。タイの民商法典では、株主割当による新株発行のみが規定されているため、既存の株主に対して新株を割り当てる旨を文書で通知します。当該通知には、割り当てる株式数、申込み期限、期限までの申込みがない場合には引受けしないものとみなすことを記載します。申込み期限までに申込みの意思表示が無い場合や、新株の引受を拒否する旨の意思表示がある場合には、取締役は当該株式を他の株主に売却し、もしくは自身で引受けることができます(1222条)。
その後、株主総会の決議後14日以内に、商務省へ増資決議を行った旨を登記します(民商法典1228条)。
 つまり、非公開会社の新株発行によってM&Aを実施する場合には、定款で排除されている場合を除き、既存株主に新株引受を拒否してもらうことで、実質的な第三者割当の形で行うことができるという点に留意が必要です。
[公開会社における新株の発行]
タイの資本金の概念は日本とやや異なっています。
タイの公開会社法における資本金の概念は授権資本金と引受済資本金にわけて把握する必要があります。なお、引受済の株式については全額払い込みが必要となります(公開会社法37条)。
授権資本金
会社定款に記載する資本金(公開会社法18条)
引受済資本金
発起人が授権資本金の50%以上を引受(公開会社法27条)

公開株式会社法136~138条では、授権資本金の増額について規定しています。
授権資本金自体の増額については、株主総会の特別決議が要求されており、株主の4分の3以上の賛成による決議をもって意思決定しなければなりません(136条)。
 その後、決議の日から14日以内に登記官に対し授権資本金の変更登記を行なわなければなりません(公開会社法136条)。また発行する株式の割当方法については、株主割当による方法か第三者割当で行うかを選択することが認められています(137条)。
一方授権資本内の株式発行の際は、明文規定が無いことから、原則どおり取締役会で意思決定が可能と解釈できます。

【新株発行のイメージ】


【新株発行における意思決定方法の違い】
授権資本の増加を伴う場合
株主総会特別決議
授権資本内の増資の場合
取締役会決議

■合併
合併に関する規定は、民商法典1238~1243条に定められています。民商法典1241条によると、「合併によって成立した株式会社は新しい会社として登記されなければならない」とされているため、日本で認められている吸収合併はみとめられません。したがって、タイで合併を行う場合は、すべて新設合併の方法により行う必要があります。
【新設合併のイメージ】

吸収合併と同様の効果を得るためには、事業の全部譲渡とその後の清算という手法も考えられますが、実務上も新設合併の方法が多く利用されています。 例としてスズキと宇部興産が挙げられます。スズキは、タイにおいての自動車の生産、販売の効率化を図る目的で、宇部興産は営業部門の強化や間接部門の合理化など、二社ともに現状の生産、販売能力の増強化を目指し新設合併を行いました。手続については、以下のようになります。

[新設合併の手続]
合併の意思決定は、株主総会の4分の3以上の賛成(特別決議)により決定しなければなりません(民商法典1238条)。また、総会決議後14日以内に登記を行います(民商法典1239条)。
次に債権者の保護を図るため、最低7回地方紙に公告するとともに、会社が把握している債権者全部に文書で合併の意図を通知し、債権者が通知の日から60日以内に合併に異議がある場合は、申し立てるように要求しなければなりません。
期間中に異議が申し立てられなかった場合、異議は無いものみなされます。また異議が申し立てられた場合、会社はその要求を満たすか、またはその保証を与えない限り合併を実行することはできません(民商法典1240条)。
合併が実行された場合は、合併した会社の各々によって14日以内に合併が登記されなければならず、合併によって成立した株式会社は新しい会社として登記されなければなりません(民商法典1241条)。
新会社の株式資本金は、合併した会社の株式資本金の合計額に等しくなければなりません(民商法典1242条)。また新会社は、合併した会社の権利、義務を承継することになります(民商法典1243条)。

■事業譲渡
タイにおけるM&Aにおいて、株式取得以外の方法としては事業譲渡の手法が検討されることになります。
理由としては、前述の通り、タイでは吸収合併が認められていないためです。事業の全部譲渡と清算により、同様の効果をもたらす取引を行う方法を取ることになります。

[公開会社における事業譲渡]
公開会社法では、事業の全部譲渡および重要な一部を譲渡するためには、株主総会の特別決議が必要と規定しています。
公開会社法107条2項(イ)にて、会社の営業の全部または主要部分の第三者への売却もしくは譲渡については、株主総会に出席した議決権のある株主の得票総数の4分の3以上の得票が必要と規定しています。

■会社分割
タイには会社分割の制度が定められていないため、一般的なスキームも利用できません。したがって、事業の一部を他の会社に移したい場合には、分割事業を受け入れる新設の会社または既存の会社に事業譲渡する方法を採用することになります。
また、株式交換、株式移転に関しても、制度が定められていません。

証券取引法による規制

証券取引法とは有価証券の発行体や投資家が自由に参加できる公正な市場を作ることを目的とした法律です。日本の金融商品取引法に該当する法律です。上場会社のM&Aを行う場合には、公開買付規制、開示規制、インサイダー取引規制などが関連してきます。

公開買付規制
公開買付規制とは、上場会社の株式を取得する場合、買付の価格、数量、期間を公表し、買付を行うことであり、この義務により一部の株主のみが利益を得ることがないよう株主の公正性の維持を目的とするものです。上場会社の株式を取得する方法でM&Aを行うときは検討する必要があります。

[公開買付が義務付けられる場合]
上場会社の株式を取得した結果として議決権総数の25%以上、50%以上、75%以上を保有することとなる場合には、公開買付が義務付けられます(証券取引法247条、上場会社買収規則告示4条)。
例えば、もともと15%の議決権を有する株式を持っている企業が、さらに10%の株式を取得した場合、247条に記載されている25%以上という条件に当てはまり、公開買付が義務付けられます。
【公開買付の手続が義務付けられる場合】
公開買付前の保有株式
公開買付後の保有株式
25%未満
25%以上
25%以上50%未満
50%以上
50%以上75%未満
75%以上

公開買付けを行う者だけではなく、配偶者や取得者の議決権の30%以上を保有する株主など、買付者の関係者による株式の保有数もカウントの対象となる点に注意が必要です。
[公開買付の対価]
公開買付の対価については、価格と種類について以下のように定められています。

対価の種類
買付の対価を支払う場合、金銭以外の対価のみを使用することは禁止されています。以下のうちいずれかを選択する必要があります。

ž 金銭のみ
ž 金銭と現物の併用

対価の価格
価格に対する規制においては、以下の3つの額のいずれも下回らない価格としなければなりません。

ž 公開買付届出書の提出日前90日間のうち、公開買付者もしくはその関係者が対象会社の株式を取得する最高値
ž 当該株式取得日前5営業日の加重平均市場価格
ž フィナンシャルアドバイザーによる評価額

[公開買付の撤回]
公開買付期間が開始したのちに、公開買付を撤回することは原則としてできません。相場操縦される可能性があり、株主等に多大な損害を与える影響があるためです。
ただし、公開買付届書の提出後に、被買収会社に悪影響を与える重大な事象もしくは事実が起きた場合、買付の条件、期間の変更(上場会社買収規則24,26,29条)、もしくは買付自体を撤回することが認められています(上場会社買収規則告示45条)。しかし、重大な事象が何かというのは、具体的に明文化されていないため、実際の運用については留意が必要です。
[公開買付実施後の注意点]
公開買付者は、当該取引の成否に関わらず、原則公開買付期間終了日から1年間は対象会社について新たな公開買付を行うことができません(証券取引法255条)。
また、議決権総数が25%、50%、75%に達する株式を取得した買付者は、公開買付期間終了後6カ月間は、原則公開買付価格よりも高い価格で対象会社の発行済株式を取得することが出来ず、さらに、公開買付期間終了後1年間は、対象会社の株主総会において出席株主の議決権の4分の3以上を有する株主の承認を得られない場合、公開買付届出書の記載したことと異なる行為を行うことができません(上場会社買収規則告示48条)。

■開示規制

[大量保有報告規制]
特定の株主が株式を大量保有すると、経営権への影響や株価の変動要因となり、会社の利害関係者へ影響を及ぼす可能性があります。そのような利害から一般投資家を保護する目的で大量保有報告規制が定められています。
上場会社の株式を取得し、その議決権割合が総議決権の5の倍数のパーセンテージに達した場合、変動があった日から3営業日以内に取得についての報告書を証券取引委員会に提出しなければなりません。
なお、議決権割合の判定にあたっては、単独の者だけではなく、その親族など、関係者全体で保有する議決権で判断される点に注意が必要です(証券取引法258条)。
[適時開示規制]
投資家の意思決定に重大な影響を及ぼす可能性のある事象が生じた場合、タイ証券取引所(SET:Stock Exchange of Thailand)の規則に基づき適時開示が義務付けられます。
例えば、新株発行による資本の変動、自己株式の取得または自己株式の処分の決定、買収、既存株主の利益に影響を与える第三者による投資、などが該当します。

■インサイダー取引規制
一般的にインサイダー取引規制は、会社の内部情報に接する会社役員等が、その立場を利用し、取得した未公開情報を利用して、個人または関連者の利益のために株式を売買することを禁止する目的で定められています。
例えば、A社の役員が事前にB社を買収する情報を取得し、この取引による株価の上昇を予測したうえで、取引前に当該株式を取得することにより利益を得ようとする行為などが挙げられます。
このような取引が行われてしまうと、一部の株主のみ利益を得ることになり、株式市場の公正性を脅かす結果につながるので、タイにおいても規制が設けられています。
タイの特徴として、日本では情報を伝達する行為そのものに対しては規制されていませんが、タイにおいては伝達、取引の奨励、情報の開示などの行為自体が規制対象となりうる点には留意が必要です。
規制の対象者は取締役、マネージャー、監査人、資本金の5%以上の株式を保有する者、公務員、証券取引にかかわる者などが具体的に挙げられています(証券規制法241条)。
インサイダー取引規制に違反した場合、以下のような罰則が科せられます。

ž 2年以下の禁固刑
ž 当該取引により得たもしくは得たであろう利益の2倍以下(下限50万バーツ)の罰金
ž 上記禁固刑、罰金の併科

取引競争法(Trade Competition Act)

タイにおける取引競争法(Trade Competition Act)は1999年に施行され、日本でいう独占禁止法にあたります。不当な取引制限により不公正に市場を独占することを禁ずるものであり(取引競争法25条)、事業譲渡、株式買収、合併などの組織再編行為について規制の対象としています(取引競争法26条3項)。

取引競争法では、市場支配者(market-dominating business operators)という定義を設け、これに該当する企業に対して、一定の制限を課しています。
市場支配者とは、①特定の製品・サービスのシェア50%以上を有し、過去1年間の売上高が10億以上の者、もしくは②3者の共同でのシェア率が75%以上であり、過去1年間の売上高が10億バーツ以上である者、のいずれかを言います。これについては、2011年に改正案が提出されており、より対象が広くされることが予想されます。

取引競争法は、最近までは厳密な運用は行われていませんでした。しかし、2011年には、取引競争法の改正が行われるなど、政府は実効的に取り締まりを強化する方針を明らかにしています。違反する場合には、3年以下の懲役、もしくは600万バーツ以下の罰金が役員等に科される可能性があるため,当該法令についての最新の運用状況を確認しておく必要があります。

会計基準

M&Aを行う際、対象企業の企業価値の算定を正しく行い、買収価額を決定する必要があります。その場合に計算根拠となるのは、対象会社の財務諸表です。財務諸表作成にあたっては、国によって会計基準が異なるため、現地の会計基準を把握しておくことが重要です。
タイの場合、2011年より国際財務報告基準(IFRS)をほぼ全面的に取り入れた、タイ財務報告基準(TFRS)の適用が開始されました。この財務報告基準は公開会社だけでなく、原則としてすべての会社に適用されます。
ただし、非公開会社については、一部の基準が適用除外となっています。基本的には、IFRSに類似していますが、一部異なる点もあること、また実務慣行的に実施されていないものもある可能性があり、その点は注意する必要があります。

■M&Aに関連する税務
タイにおいてM&Aを行う場合、株式の取得による買収や資産の取得による買収など異なるケースに対し異なる税金が課されます。 租税はタイ国国家歳入法により規定されており、法人所得税、付加価値税、個人所得税に分けられます。付加価値税とは、商品役務に付加された価値(利益)に対し課税され、実質的には最終消費者が税負担者となる間接税ですが、株式、資産に係る付加価値税には様々な種類があり、それぞれ税率についても異なるので留意が必要です。

■株式の取得
株式を取得する場合、譲渡価額の合理性が問われます。税務上の譲渡価額は実際の売買価額とは関係なく、取引時点の時価で譲渡が行われたものと考えます。税務上の時価は、譲渡前直近期末時点の監査済財務諸表上の純資産価額を基に算定された価額とするルールが一般的に採用されています。 ただし、第三者により作成された評価報告書によって証明することができれば、時価を超える価額を採用することができます。

[株式売却時に発生する税金]
タイにおいて株式取得の手法でM&Aを行う場合、取引関連者が居住者、非居住者、タイ国内、国外などケースによりかかる税金が変わることに留意が必要です。

①非居住者間、かつタイ国外で譲渡取引が行われる場合
非居住者同士が国外にて株式の譲渡取引を行った場合、タイ内国歳入法の規定(70条)により、国外で行われた株式の譲渡で得た所得に対しては、タイ国内にて課税はされません。

②非居住者からタイ国内の会社に対して株式を譲渡する場合

例えば、日本企業がタイ国内の会社に対して株式を譲渡した場合、日本とタイは租税条約を締結しており、その中で、タイで発生する所得についてはタイで課税する(日タイ租税条約13条)と規定しているため、タイ国内の会社が譲渡された株式に対して対価を払う際に、タイ側で源泉所得税が課されます。この場合の、源泉所得税は、譲渡株式の譲渡価額から取得価額を控除した金額を課税対象所得として、その15%が課税されます。

タイ国法人、個人が譲渡者の場合

タイ国法人が株式の譲渡者の場合、国内外の会社問わず、譲渡により得た利益に対して通常の法人税率20%が課せられます。
また、譲渡者がタイ国個人の場合には、通常の個人所得税率(0%~37%の累進課税)が課せられます。なお、VAT、印紙税については、原則として譲渡者が国外法人の場合と同様となっているので、上述を参照ください。
ただし印紙税に関しては、株式譲渡が海外で行われ、かつそれに関する原文書が国外に保管されている場合のみ非課税となっています。

■合併
タイ民商法典では、新設合併のみが認められています。取引により発生した税金に対しては、税務上の優遇措置が定められています。

・資産の譲渡益に対する課税の免除
・不動産等を除く資産の移転に係るVATの免除
・不動産などの移転に係る特定事業税の免除
・不動産の譲渡にかかる源泉税の免除
・不動産名義変更登記手数料(不動産評価額の2%)の免除

ただし、被合併法人に生じていた繰越欠損金の引き継ぎは認められていません。

■全部事業譲渡
会社法上、吸収合併が認められていませんが、全部事業譲渡(EBT:Entire Business Transfer)という方式を使うことで、ほぼ同じような効果を得ることができます。税務上も、取引から生じる税金が発生しないように、以下のような優遇措置が設けられています。

ž 資産の譲渡益に対する課税は免除
ž 不動産等、貸付金以外の資産の譲渡に対するVATの免除
ž 不動産や貸付金の譲渡に係る特定事業税の免除
ž 不動産の譲渡時に発生する源泉税の免除

税務上の優遇措置を受けるためには、①譲渡会社の資産負債のすべてを譲渡すること、②譲渡会社を解散し、清算手続に入ること、の2つの要件を満たす必要があります。民商法典上、債務超過である会社は任意清算手続を行うことはできず、裁判所を介した破産手続を行うことが要求されるため、事前に債務超過を解消しておく必要がある点に注意が必要です。
合併との大きな違いは、不動産の名義変更登記に係る登記手数料の免除がないため、譲渡資産に不動産が含まれる場合には、当該コストを勘案する必要がある点です。

■一部事業譲渡
一部の資産負債のみを譲渡する場合は、全部事業譲渡とは異なり、税制上の優遇措置が原則として与えられていません。ただし、2011年4月に公布されたRoyal Decree 516によると、グループ内で行われる一部事業譲渡については、譲渡された資産に対するVATと特定事業税、印紙税について免税措置を受けることができます。

タイにおけるM&Aトピック

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