労務・労働法
目次
1. フィリピンの労働環境 | ■雇用慣行と労務管理 |
2. フィリピンの労働法 | ■雇用契約・就業規則 ■解雇 |
1. フィリピンの労働環境
■雇用慣行と労務管理
フィリピン人の雇用情勢を見る際には、海外で働いている、「海外フィリピン労働者(OFW:Overseas Filipino Workers)」について考慮しなければならないでしょう。海外フィリピン労働者の人数、海外からの送金額共に増加傾向にあり、海外からの送金によりフィリピン国内の経済が支えられていると言えます。また、多くの労働者が海外に出稼ぎに行くことを希望していることにより、失業率の上昇に歯止めをかけています。
一方で、海外フィリピン労働者の多くが高等教育を受け、高い技術を有する専門職であり、国内の貧困による非就学児童が全体の4割に達していることを鑑みると、相対的にフィリピン国内における労働者の技術力は低く、高い能力、技術力を持つ優秀な労働者が国外に流出している傾向にあります。
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2. フィリピンの労働法
■雇用契約・就業規則
フィリピン憲法は、国家政策によるだけでなく、社会的正義と人権に関する規約によって、労働者の権利を保護しています。それにより、労働契約は高い次元に置かれ、手厚い保護措置が取られています。フィリピン労働法は、雇用契約を神聖なものとして保護しており、雇用契約には労働者の雇用日、報酬と手当、役割と責任等を記載することとされています。
フィリピン労働法上では、6カ月間までの試用期間が認められており、その場合6カ月間の試用期間を経て、正社員としての雇用契約が再度結ばれます。試用期間は、正当な理由がある場合や、雇用契約時に雇用者側が示した合理的基準に照らし、正社員として適任でないと評価された場合には契約が打ち切られます。
雇用契約は口頭、書面のどちらでも締結することが出来ます。しかし、後に紛争が生じる場合のことを考慮すると、書面での締結が推奨されます。一般的に、雇用契約書は英語で記されていますが、双方が理解可能なものであるということが最も重要であるため、他の言語で作成されるケースもみられます。
就業規則については法律上の規定はありません。就業規則の規定は、日本と同様に会社の裁量で決定出来ますが、法や公の規定、道徳に反しないものにする必要があります。
日本 | フィリピン | |
---|---|---|
労働時間 | 1日8時間 1週間40時間 |
1日8時間 1週間5日 ※緊急の場合には、週48時間、6日勤務させることができる |
休憩時間 | 連続して6時間を超えて労働する場合には45分以上、8時間を超える場合には60分以上の休憩 | 60分以上の食事休憩(労働雇用大臣が定める規定に従う) ※休憩時間も労働時間とみなす |
休日 | 週1日以上の休日 | 週1日以上の休日 |
割増賃金 | 時間外労働:1.25倍 ※月60時間を超える時間は1.5倍の例外あり 深夜労働:1.25倍 休日労働:1.35倍 |
時間外労働:1.25倍 夜間労働:1.10倍※1 週休労働:1.30倍 特別祝祭日労働:1.30倍 特別祝祭日が週休と重なる場合の労働:1.50倍 一般祝祭日:2.00倍 |
年次有給休暇 | 6カ月以上:10日以上 1年6カ月以上:11日以上 2年6カ月以上:12日以上 3年6カ月以上:14日以上 4年6カ月以上:16日以上 5年6カ月以上:18日以上 6年6カ月以上:20日以上※2 |
1年以上:5日以上※3 |
管理職 | 管理職に対しては時間外及び休日の割増賃金の支払い義務なし | 管理職に対しては労働時間に関する規定が適用されない |
※ 1:夜間労働は、午後10時から午前6時の間を指す。
※ 2:原則として出勤日数が全労働日の8割以上の場合に付与され、2年間繰り越される。
※ 3:労働者数が常時10名以下の企業、または労働雇用大臣が経営や財務状況を考慮した上で定める利益の免除を認めた企業の労働者は、適用除外とする。
■解雇
フィリピンでは、第282条から第284条に規定された正当な理由以外で、民間企業の労働者を解雇することは禁止されています。その為、労働者を雇用する際には慎重な選考が必要になります。正当な解雇理由として規定されているのは、労働者が命令に著しく違反している場合、使用者が必要な人員の削減を行う場合、労働者が法で指定されている疾病を継続して患っている場合等です。
必要な人員の削減を行う際は、雇用終了予定日の少なくとも1カ月前までに、労働者及び労働雇用大臣に書面で通知しなければなりません。機械類の設置による人員余剰を理由とする解雇の場合は、労働者に最低1カ月分の給与相当額を支払う義務が発生し、業績の悪化等に伴う損失予防の為の人員削減の場合や深刻な損失や財務破綻によらない事業の閉鎖及び停止の場合にも、1カ月分の給与相当額の支払い義務が発生します。
労働者が法で指定されている疾病を継続的して患っている場合、または自身の健康を含め、他の労働者の健康に害を与えるとみなされる場合に解雇する際は、使用者は最低1カ月分の給与相当額を退職金として支払う義務が発生します。