パキスタン進出支援

税務・税法

目次

1. パキスタンにおける税務の概要 ■パキスタンの租税の体系 ■国税と地方税 ■直接税と間接税
2. 個人所得税 ■課税年度 ■居住性の判定 ■パキスタンにおける所得税額の計算 ■申告・納付手続
3. 法人所得税 ■納税義務者 ■課税所得の計算 ■税額計算 ■申告・納付方法
4. 売上税(Sales Tax) ■納税義務者 ■課税対象 ■税率 ■納付税額の計算 ■申告方法
5. 州物品税(Federal excise duty) ■課税対象 ■税率
6. 特別物品税(Special excise duty)

1. パキスタンにおける税務の概要

パキスタンにおける主な税目については、以下の表の通りとなります。
税金の体系については、大きく「国税」、「地方税」に分かれており、その中でさらに「直接税」と「間接税」に分かれています。

国税地方税
直接税 ・所得税(Income Tax) ・物品税(Provincial Excise Tax)
間接税 ・売上税(Sales Tax)
・関税(Custom Duty)
・連邦物品税(Federal Exercise Duty)
・資本価値税(Capital Value Tax)
・印紙税(Stamp Duty)
・資産税(Property Tax)

■国税
国税は基本的に連邦政府により徴収される税金です。しかし、中にはウシュル税(農作物税)のように地方政府によって徴収される国税もあります。

■地方税
地方税は大きく州税と市町村税とに分かれ、基本的に地方政府により徴収されます。しかし、中には自動車税のように連邦政府により徴収される地方税もあります。

■直接税
直接税とは、税金を納める「納税義務者」と、税金を実際に負担する者が同じである税金をいいます。パキスタンにおいては個人所得税、法人所得税などがこれに該当します。

■間接税
間接税とは、直接税と異なり、税金を納める人と実際に負担する人が異なる税金をいいます。パキスタンにおいては、付加価値税、物品税などが該当します。

2. 個人所得税

■課税年度
パキスタンにおける課税年度は、7月1日から翌年6月30日までとなっています。

■居住性の判定
パキスタンにおいて個人所得税額を計算する場合、まずその対象となる人が「居住者」であるか、「非居住者」であるかを判定する必要があります。この区分の違いにより、課税される収入の範囲が異なってきます。
基本的に、パキスタン国内において発生したとされる所得が国内源泉所得となり、所得の受取場所は関係ありません。居住者の場合、パキスタン国内の雇用者から給与を受け取ったものであれば、パキスタン国外で支払われたものであっても国内源泉所得となります。
つまり、パキスタンにおいて「居住者」となった場合には、パキスタン国内の所得だけでなく、その他の国において発生した所得についても課税されることになります。
また、非居住者の場合には、パキスタン国内で発生した所得のみ、パキスタンにおいて課税されることとなります。

■パキスタンにおける所得税額の計算

【給与所得納税者に対する所得税率】(単位:パキスタンルピー)
課税所得税率
550,000以下20%
550,000~1,050,00030%
1,050,000~2,250,00040%
2,250,000~4,550,00050%
4,550,000以上60%

給与所得納税者については、以前は課税標準が一定額以上となった時、その全体に対してより高率の税率を適用する単純累進税率方式が採用されていましたが。 しかし、2009年以降においては一定額以上になった場合にその超過金額に対してのみ、より高い税率(いわゆる超過累進税率)を適用する新方式が採用されることになりました。

【給与所得納税者以外に対する所得税率】(単位:パキスタンルピー)
課税所得税率課税所得税率
100,000未満0%300,000~400,0007.50%
100,000~110,0000.50%400,000~500,00010.00%
110,000~125,0001.00%500,000~600,00012.50%
125,000~150,0002.00%600,000~800,00015.00%
150,000~175,0003.00%800,000~1,000,00017.50%
175,000~200,0004.00%1,300,000ルピー超25.00%
200,000~300,0005.00%

※女性の場合には、課税所得が125,000パキスタンルピーを超えない場合は課税されません。

■申告・納付手続
パキスタンの課税年度は7月1日から6月30日であり、納税義務者は9月30日までに申告書を提出しなければなりません。 しかし、例外として給与所得のみである者で雇用主が源泉徴収票を提出している場合には、申告書を提出する必要がありません。これは日本のサラリーマンが確定申告をせずに年末調整にて過不足税額を精算するのと同様の制度です。
但し、給与所得が500,000パキスタンルピーを超える者は、雇用主が上記の源泉徴収票を提出していようとも、申告書に財産報告書とその明細を添付して電子申告をしなければなりません。また、給与所得でなくても昨年度あるいは当年度において総所得が500,000パキスタンルピーを超えるものは財産報告書とその明細を提出しなければいけません。
また、パキスタンでは、四半期ごとに納税額の前払いを行う四半期予定納税の制度があります
。 予定納税額は、最新年度における所得税条例に基づいて計算された税額を4で割った金額となります。

3.法人所得税

法人所得税は、パキスタンにおいて内国法人・外国法人を問わず得られた所得に対して課される税金であり、事業・活動拠点を設置した場合には必ず関わってくる税目になります。

●納税義務者
法人所得税については、その法人が「居住者企業」に該当するか「非居住者企業」に該当するかにより、課税の対象となる所得の範囲が異なってきます。
●居住者企業の定義
1. パキスタンの法律に基づいて設立された法人
2. 経営が全てパキスタン国内で行われている法人
3. 州政府、または地方局
これらのいずれにも当てはまらない場合には、その法人はパキスタンの法人所得税法上、非居住者企業となります。非居住者企業に該当する場合には、パキスタン国内を源泉とする所得のみが課税対象となります
●事業所得の計算
事業所得の計算は、法人が採用している会計処理の原則を継続的に適用して算出することとされています。 法人の場合は「発生主義」を継続適用して所得金額の計算をしなければなりません。 大まかな所得計算の流れは、企業はまず一般に公正妥当と認められる会計処理に基づく事業所得を計算します。次に、計算された事業所得の金額から、FTRの対象となる所得を除き、所得税率を算定するといった流れになります。
●税額計算

所得税の税率は一律課税制度が採用されており、現在は35%となっています。例外として、以下の全ての要件を満たす小規模会社については20%の軽減税率が適用されることになります。

・2005年6月30日以降に設立されていること ・資本金が25百万パキスタンルピー以下であること
・年間売上高が250百万パキスタンルピー以下であること
・従業員数が250名以下であること

また、Modaraba(FTRによって課税される配当収入、その他の収入以外の)に対しては、25%の税率が適用されます。
なお、売上高が250百万パキスタンルピーを超えた場合でも売上高が500百万パキスタンルピーまでは段階的に軽減税率を適用することができます。条件については下記の表の通りです。

【売上高による税率の違い】(単位:パキスタンルピー)
売上高税率
250,000,001~350,000,00025%
350,000,001~500,000,00030%
500,000,000~35%

●申告・納付方法
通常課税年度(7月1日~6月30日)を選択している会社は12月31日までに税務申告書を提出しなければなりません。特別課税年度(税務当局により承認された課税年度)を選択している会社は9月30日までに税務申告書を提出しなければなりません。 また、確定申告以外でも、所得税法に基づいて、納税義務者自身で前払税金を見積もり、納付しなければいけません。仮に見積納税予定額が、下記の式より求められる税額を超過する場合には、納税義務者はコミッショナー(Commissioner)に見積書を提出し、既に支払われた金額があれば調整したうえで税額を支払わなければなりません。

4. 売上税(Sales Tax)

売上税(Sales Tax)は、1990年売上税法(Sales Tax Act, 1990)に定められており、物品やサービスの提供や輸入の際に徴収される税金であり、他の国における付加価値税(VAT:Value Added Tax)と同様の制度となっています。

●納税義務者
課税商品の提供をする者で以下の条件に該当する者は、売上税の納税義務登録をしなければなりません。

・直近12ヵ月の間の課税売上が500万パキスタンルピーを上回っている製造業者。あるいは、直近12ヵ月の間の年間の公共料金(電気、ガス、電話)の支払いが、700,000パキスタンルピーを上回っている製造業者。
・過去12カ月の売上高が500万パキスタンルピーを超える小売業者
・輸入業者
・ディーラーを含む卸売業者

●課税対象
売上税はパキスタン国内で生産されたもの、輸入された製品に対して原則課税されます。国内で生産されたものについてはその販売段階において、輸入されたものについては輸入段階で課税されます。
●税率
売上税の現在の税率は原則として16%となっています。ただし製品の輸出取引の場合の税率は0%とされています。
●納付税額の計算
売上税の納税額は、課税期間において受け取った売上税(仮受売上税)の合計から、支払った売上税(仮払売上税)を控除した金額になります。
しかし、仮受売上税の90%を仮払売上税が超過している場合には、その超過部分については仮受売上税から控除することができません。この超過部分については、翌課税期間に繰り延べることができ、翌課税期間でも控除できない場合には、還付請求をすることができます。
●申告方法
売上税の納税義務者は、前月の課税額について翌月の15日までに売上税申告書を提出しなければなりません。また、電子上にて申告をしなければなりませんが、この場合には支払いが翌月の15日まで、FBRのE-portal(電子申告)を使った申告書の提出は翌月の18日までに行う必要があります。

5. 州物品税(Federal excise duty)

州物品税は、2005年州物品税法(Federal Excise Act, 2005.)を根拠として課税されています。州物品税は通常、物品の価値ないし販売価格に基づき税額の計算がされますが、タバコなど一定の物品については従量制(数量などの基準に応じて税額が決定)によって課税されることになります。

●課税対象
州物品税の課税対象は、一定の輸入された商品、パキスタンで製造された商品、あるいは、パキスタンで提供されるサービス(パキスタン国外で基となったサービスであるが、パキスタン国内で提供されるサービスを含む)について課税されます。
●税率
州物品税の税率は、原則として15%となっていますが、対象の物品とサービスによってそれぞれ異なる税率で徴収されることになります。また、商品の輸出と法律に規定される一定の物品の取引については0%の税率が適用されます。 これらの税率は、FBRによる通知によって税率が変わることがありますので注意が必要となります。

6. 特別物品税(Special excise duty)

特別物品税は、パキスタン国内で製造された物品、あるいはパキスタン国内に輸入された物品について課税され、上述の州物品税とは別に徴収されることになります。また、この特別物品税は卸売、物流、小売の段階では課税されず、製造業者、輸入業者等に対して課税されます。
適用される税率については、以前は1%の定率でしたが、2011年3月19日にFBRが発行した通達SROs261 (I)/2011によって2.5%に引き上げられることになりました。

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