パキスタン進出支援

労務・労働法

目次

1. 雇用契約と就業規則■雇用契約の概要 ■雇用契約の終了 ■就業規則の作成義務
2. 日本とパキスタンの労働条件比較■日本とパキスタンの労働条件比較

1. 雇用契約と就業規則

■雇用契約の概要
20人以上の労働者を雇用するパキスタン国内の全ての工業及び商業の会社の使用者は、従業員を雇用した時に正式な雇用契約書を作成しなければなりません。ただし、前述の20人以上の労働者を雇用する商業、工業以外の会社の労働者、家事手伝い、農場労働者、一人請負人(一人親方)の場合、雇用契約書は一般的に作成されません。この場合には、労働条件等は交渉や過去の習慣に基づき、トラブルとなった場合には、裁判所を通して解決されます。 雇用契約では、雇用期間、その他の雇用条件(職務範囲、就業時間、給与及び諸手当、その他福利厚生等)を定める必要があります(THE WEST PAKISTAN INDUSTRIAL AND COMMERCIAL EMPLOYMENT (STANDING ORDERS) ORDINANCE, 1968)。 パキスタンでは、就業規則や雇用契約書は英語で作成するケースが多くなっています。パキスタンの国語であるウルドゥ語で作成される場合もあります。

■雇用契約の終了
期間の定めのない労働者を解雇する場合には、使用者は事前の通知又は通知に代わる給与支払が必要です。ただし、本人の責めに帰すべき事由による退職であることが明らかな場合は、事前の通知や給与支払は不要となります。 また、一定の期間を定めて雇用している労働者が期間満了の場合、雇用者は事前の通知、もしくは一カ月分の給与相当分の支払無しに解雇することができます。 このように、有期雇用契約と無期雇用契約及びそれに係る解雇についての考え方は、日本と同様のものになっています。

■就業規則の作成義務
パキスタンでは、20人以上の労働者を雇用する全ての事業所は、就業規則を作成しなければなりません(THE WEST PAKISTAN INDUSTRIAL AND COMMERCIAL EMPLOYMENT (STANDING ORDERS) ORDINANCE, 1968)。パキスタンに進出する日系企業においては労務管理上のトラブルを防止するため、20名未満の場合でも、就業規則を作成することが望ましいと言えます。 就業規則や前述の雇用契約書を作成する際には、事業所に応じてそれぞれ西パキスタン小規模店舗法(West Pakistan shops and establishment ordinance)、工場法(Factories Act 1934)もしくは西パキスタン工業、商工業雇用法(THE WEST PAKISTAN INDUSTRIAL AND COMMERCIAL EMPLOYMENT (STANDING ORDERS) ORDINANCE, 1968)いずれかの労働基準に基づいて作成しなければなりません。 雇用契約書や就業規則に規定する項目としては、以下のような規定が挙げられます。

・雇用契約期間
・労働時間(勤務シフト含む)
・休日
・各種休暇(年次有給休暇、祭日、慶弔休暇、傷病休暇)
・割増賃金率
・出退勤管理
・賃金の支払
・賞与の支払
・懲罰規定
・退職、解雇
・事業閉鎖

2. 日本とパキスタンの労働条件比較

■日本とパキスタンの労働条件比較
雇用契約書や就業規則に労働条件を記載する場合には、パキスタンの労働法に基づいて作成する必要があります。 主な相違点として、まず時間外労働に関する割増賃金が2倍となっており、日本の労働基準法と比較すると非常に高額になっているのが分かります。 また、有給休暇の他に、臨時休暇、病欠休暇および祭欠休暇についても、全額若しくは半額の給与が支払われる点に注意する必要があります。 各法令と日本の労働基準法との比較は以下のとおりです。

【日本とパキスタンの労働基準比較】
パキスタン日本
小規模店舗法工場法労働基準法
法定
労働
時間
上限1日9時間(1週間48時間)(8.)
※17歳以下の労働者は1日7時間(1週間42時間)(同条)
上限1日9時間(36.)ただし、季節労働者は1日10時間(同条項)
※16歳未満の労働者は1日7.5時間を超えてはならない(54.)
上限1日8時間、週40時間以内(32条1項2項)
※労働組合との協議により増加させることも可能(36条以下)
休憩
時間
6時間ごとに1時間(7.(3))5時間ごとに30分の休憩(37.(b))若しくは6時間ごとに1時間の休憩(37.(a))6時間ごとに45分の休憩(34条)
17歳以下の労働者は3.5時間ごとに1時間(同条項)8時間ごとに1時間の休憩(同条)
時間外労働の割増
賃金
時間外労働は通常の2倍(9.)時間外労働は通常の2倍(47.)時間外労働は通常の2割5分増以上、5割増以下(月60時間を超える場合は5割増以上)(37条)
休日最低でも週に1日(6.)最低でも週に1日(日曜日が休み)(35.)最低でも週に1日休み(35条)
休暇産前産後休暇(前後6週間)、有給休暇(12カ月連続勤務後、14日間)(14.)、病欠休暇(8日間/給与全額支給)、臨時休暇(10日間/給与全額支給)、祭休暇(10日/給与全額支給)等有給休暇(12カ月連続勤務後、14日間)(49.)、病欠休暇(16日/給与の半分が支給)、臨時休暇(10日/給与全額支給)、祭欠休暇(州政府が定めた日/給与全額支給)等産前産後休暇(産前6週間、産後8週間)、有給休暇(6カ月間連続勤務後、10日間)
最低
年齢
原則15歳(2.(C), 20.)原則15歳(50.)原則15歳(56条)

セミナー情報

海外進出セミナ-開催中
セミナー一覧はこちらから

関連サイト

今すぐ無料お試し!