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ミャンマーの会社法

目次

1.株主 ■株主数 ■株主総会
2.取締役 ■取締役の人数 ■取締役の国籍と居住地 ■取締役の選任・解任
3.会計監査人 ■設置義務 ■会計監査人の要件 ■選任・解任 ■報酬の決定
4.株式 ■株式の種類 ■株式の発行 ■減資に関する規定

1. 株主

■株主数
ミャンマーの会社法上、非公開会社の株主数は50名以下(最低株主数については、明文規定なし)、7名以上と定められています(2条(13)b)。 なお、会社設立時の発起人は、最低1株以上の株式を引受けなければならないとされているため、設立時の株主には、必ず発起人が含まれます。発起人の人数は、非公開会社の場合に最低2名、公開会社では最低7名が必要とされています(5条)。したがって、非公開会社の最低株主数の規定はないものの、設立時点では、実質的に2名以上の株主を設定しなければなりません。

【ミャンマーと日本の株主数】

ミャンマー日本
公開会社非公開会社
株主数 7名以上2名以上50名以下1名以上
発起人7名以上2名以上1名以上

■株主総会

●株主総会の種類
ミャンマーの会社法上、株主総会は定時株主総会(Annual General Meeting)(76条)、法定株主総会(Statutory Meeting of Company)(77条)、臨時株主総会(Extraordinary General Meeting)(78条)の3種類があります。
定時株主総会は、原則として1年に1度、前回の定時株主総会から15カ月以内に開催され、決算報告や取締役等の選任・解任の決議が行われます。ただし、会社設立後の最初の定時株主総会は、会社設立後18カ月以内までに開催すれば良いとされています(76条)。
法定株主総会は、公開会社の設立後に開催が必要な株主総会であり、会社設立後、1~6カ月以内のあいだに開催しなければなりません(77条1項)。ここでは、設立時取締役が、引受株式数や取締役の情報を報告します(77条3項)。非公開株式会社の場合には、法定株主総会を開催する必要はありません(77条11項)。
臨時株主総会は、必要に応じて開催され、その時に要求された議題が決議されることになります。取締役はいつでも任意で開催することができますが、10%以上の株式を保有する株主からの要求があった場合には、直ちに臨時株主総会の招集をしなければなりません(78条)。この株主の要求があってから21日以内に取締役が招集しない場合は、要求をした株主自らが総会を招集することができます(78条4項)。

●株主総会の決議
ミャンマーの会社法では、普通決議と特別決議の2種類があります。定足数や決議要件は、日本の会社法と異なるため、注意が必要です。

【普通決議と特別決議の比較】
非公開公開
普通決議決議内容・取締役の選任
・取締役の解任(任期満了を除く)
・取締役の報酬
・会計監査人の選任
・決算書の承認 他
定足数2名以上の株主5名以上の株主
決議要件出席した株主の過半数同左
特別決議決議内容・定款変更
・事業譲渡
・増資
・減資
・合併
・会社の解散
・経営委託
・取締役解任(任期中)他
定足数2名以上の株主5名以上の株主
決議要件4分の3以上同左
[定足数]
株主総会の定足数は、非公開会社では2名以上、公開会社では5名以上となっており、普通決議と特別決議での違いはありません。定足数を満たさない場合は、仮に決議が行われても効力は生じません(79条2項b)。
[決議要件]
ミャンマーの会社法では、原則として、挙手制(showing hands)による多数決で行われますが、例外として投票による決議も認められます。議決権に関しては1株1議決権ですが、転換株式の場合、100チャット毎に1票となります(79条2項d)。
普通決議は出席株主の過半数の賛成、特別決議は出席株主の4分の3以上の賛成がその要件となります(81条)。日本の会社法上の特別決議は「出席した当該株主の議決権の3分の2以上にあたる多数(日本会社法309条2項前段)」であり、その要件が異なることに注意する必要があります。
また、決議要件は定款に定めることにより、普通決議・特別決議ともに加重することができます。

2.取締役

ミャンマーの会社法上、取締役の規定は、公開会社か、非公開会社かによって異なります。

■取締役の人数
取締役は、非公開、公開会社ともに、株主総会で任命され、非公開会社は最低2名、公開会社の場合は最低3名の取締役を選任する必要があります(83条A)。人数の上限は会社法では規定されていませんが、定款に上限の人数を記載するのが慣例となっています。

■取締役の居住地と国籍
非公開会社の場合、取締役の国籍や居住地について規定はありません。したがって、日本人であってもミャンマー法人の取締役に就任することはできます。また、日本に居住しながらミャンマー法人の取締役に就任することもできます。但し、公開会社の場合は、取締役の半数以上がミャンマーの居住者でなければなりません(83条B 2号)。

■取締役の選任・解任
取締役の選任・解任は、公開会社、非公開会社を問わず、原則として株主総会の普通決議により行われます(83条B 2項)。
公開会社では、会社の定款に定められているかを問わず、取締役の3分の2以上については、ローテーションで退任する時期を決定していなければなりません(83条B 2項)。

3. 会計監査人

■設置義務
会社法の規定では、すべての会社は毎年の定時株主総会で、会計監査人を選任しなければなりません(144条3項)。ミャンマーでは、すべての会社に対して会計監査人の設置を義務付けています。日本で会計監査人の設置が義務付けられる会社は大会社や上場会社のみであり、この点が大きな違いです。また、ミャンマーの会社法上では、日本の監査役にあたる機関については、定めがありません。

会計監査人の要件
会計監査人に就任できる者は、ミャンマーの公認会計士でなければならず、また実効性のある監査を行うために、会社の取締役である場合や会社からの借入がある場合など、会社と利害関係を有すると認められる者は、当該会社の監査人に就任することはできません。会社法で定められる会計監査人の要件は、以下のとおりで、すべての要件を満たす必要があります(144条5項)。

・公認会計士であること
・会社の取締役又は職員ではないこと
・会社の取締役又は職員の配偶者でないこと
・子会社の取締役又は職員でないこと
・会社からの借入が無いこと

4.株式

■株式の種類
日本では、様々な種類の株式を発行することができますが、ミャンマーでは、普通株式のほか、償還優先株式、配当優先株式を発行することができます。

償還優先株式(105条B)
償還優先株式とは、株式発行の当初から会社の利益をもって消却することが予定されている株式であり、社債に近い性格を持っています。
配当優先株式(49条1項)
配当優先株式とは、利益配当に関して優先した取扱いを受ける株式をいい、会社は、支払金額や支払期日を株式ごとに設定することができます。

■株式の発行
新株を発行するタイミングは①設立時の新株発行と、②設立後に増資をする場合の2つに分かれます。

設立時の新株発行
設立時の株式にかかる払い込みは原則として、一括払込により行われます。ただし、例外として、条件書(Condition Letter)に同意した場合、設立時の新株発行は複数回に分けて行うことができます。この際、資本金の初回最低払込金額と払込時期を企業登記室に申請します。残りの金額は設立日から2年以内に払込むことになります。
会社を設立しても。以下のすべての要件を満たさない限り営業を開始することはできないため、注意が必要です(103条)。

・最低出資額総額が全額現金で支払われていること
・すべての取締役が各株式について引き受けた株式の払込を行うこと
・取締役のうち1名が上記の条件を満たしたことを登記官に提出すること
・非公開会社にあっては、目論見書に代わる計算書を登記官に提出すること

登記官への提出が済むと、登記官から営業開始の証明書が発行されます。これによって会社は業務を開始する類ことができます。
設立後の増資
設立後に資金が不足する場合には、株主総会特別決議によって、増資を行うことができます。増資を行うためには、あらかじめ定款にその旨を定めておく必要があります(50条)。また、登記されている株式数を超えて増資を行った場合には、増資を行った日から15日以内に登記局に対して増資の決議を報告する必要があります。会社がこれらの規定に違反する場合は、違反している期間にわたり、1日あたり50チャット以下の罰金を支払わなければなりません(53条)。

●減資に関する規定
減資は、会社資金の株主への払戻しを意味するため、債権者の権利を害することになります。そのため、減資の手続は厳格に定めれれています。
資本金額を減少させるためには、あらかじめ減資に関する定めを定款に定めておく必要があり、意思決定は、株主総会特別決議により行われ、決議後、裁判所へ請願書をもって申請を行います(55条)。裁判所から減資承認を受けたのち、裁判所が定めた期間中、商号の末尾に「and reduced(及び減少)」と加える必要があります(57条)。
また、減少させることができる資本部分に制限があり、以下の部分のみ資本を減少することができます。

・株式の引受金額のうち、払込みが完了していない資本金
・払い込まれた資本金のうち、運転資金として利用されていない資本金
・会社が必要とする以上の資本金

会社の債権者は、資本金の減少に対し、異議を述べることができます。すべての債権者が異議申し立てるの権利を行使できるようにするため、裁判所は債権者リストを作成することになります(58条2項)。この時に、異議申し立てをする期間を決定します。 債権者リストに名前が載っており、異議申し立てをした場合であっても、減資を行った会社が健全な会社(債権債務の返済が確実)であれば、裁判所の判断で当該申し立ては棄却されます。

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