メキシコ進出支援

労務・労働法

目次

1.メキシコの労働法◆労働法体系の概要 ◆労働基準関係法令
2.雇用契約書と就業規則 ◆雇用契約の概要 ◆就業規則について

1.メキシコの労働法

◆労働法体系の概要
メキシコの労働法は、メキシコ革命において制定された1917年憲法に依拠するものです。この1917年憲法は、労働者の基本的権利を定めた世界初の憲法であるといわれていて、労働および社会保障に関する規定が世界に先駆けて設けられました。このような歴史的な背景を持つメキシコの労働法は、労働者に有利な労働法として知られています。労働法の法的解釈において、疑問が生じた場合には、労働者に有利な解釈が適用されます。
例えば、メキシコでは法的にストライキを行うことができますが、一度ストライキが起きると、メキシコ特有の労働者保護の観点も相まって、解決に時間もお金も要してしまう現状があります。
そのため、メキシコは労働法でストライキに関していくつか規定を設けています。まず、ストライキを行う場合には、所属団体全体の過半数の労働者の参加が必要となり、過半数未満の場合には合法的なストライキを行うことはできません。非合法のストライキを行った場合には、その責任者を懲戒処分にすることができます。また、実行のプロセスとして
・ストライキ責任者はストライキ予告書を調停仲裁委員会へ提出する
・当該委員会は48時間以内に会社側へその旨を通達する
・ストライキ責任者は当該通達から6日以降にストライキ予定日を設定する
というような手続きを行わなければなりません。

◆労働基準関係法令 メキシコ労働法の特徴として、毎月の給与に加えて多額の各種手当、福利厚生等の支払いが必要になることが挙げられます。なお、メキシコでは、日給が賃金体系の基礎とされてきたが、2012 年 12 月の労働法改正により時間給の概念が導入され、パートタイムでの雇用が可能となりました。ただし、パートタイムの場合であっても、1 日当たりの給与が最低賃金を下回ってはならないものとされています。
さらにメキシコの労働法は、税引前利益の 10%を従業員に分配することを求める労働者利益分配金(PTU)を定めています。メキシコ特有の制度であり、経営へのインパクトも大きいため注意が必要です。  
労働時間については、1 日当たり、日勤(午前 6 時から午後 8 時まで)の場合は 8 時間まで制限されており、1 日の労働時間の中で最低 30 分の休憩が与えられています。  
時間外勤務については、1 日 3 時間、週 3 回までで都合 9 時間を超えてはならないと規定されています。
企業は時間外勤務に対して、通常の 2 倍の賃金(割増賃金率 100%)、さらに、週 9 時間の制限を超えた時間外勤務が発生した場合は、通常の 3 倍(割増賃金率 200%)と規定されています。
日曜日の勤務に対しては 25%の割増賃金の支払いが求められます。これらの割増賃金は役職にかかわらず全ての労働者に支払わなければなりません。

日本とメキシコの労働基準比較
日本メキシコ
労働時間 1日8時間
1週間40時間
1日8時間(夜間勤務の場合7時間)
1週間48時間
休憩時間 連続して6時間を超えて労働する場合には45分以上
8時間を超える場合には60分以上の休憩
1日の継続労働時間内で少なくとも30分の休憩
休日 週1日以上の休日 週1日以上の休日
割増賃金 時間外労働:1.25倍
※月60時間を超える時間は1.5倍の例外あり
深夜労働:1.25倍
休日労働:1.35倍
時間外労働:2倍
※時間外労働は1日に3時間まで、週に3日までの合計9時間までとされている。9時間を超えた場合には、割増賃金率は3倍となる。
休日労働:3倍
年次有給休暇 6ヶ月以上:10日以上
1年6ヶ月以上:11日以上
2年6ヶ月以上:12日以上
3年6ヶ月以上:14日以上
4年6ヶ月以上:16日以上
5年6ヶ月以上:18日以上
6年6ヶ月以上:20日以上
※上記期間の出勤日数要件あり
通常有給の持ち越しは2年間
勤続年数1年:6日
勤続年数2年:8日
勤続年数3年:10日
勤続年数4年:12日
5年目以降は勤続5年おきに2日の有給の加算がある。
※休暇期間中には、通常の賃金の他に賃金の25%の休暇ボーナスが発生する。
その他   【祝祭日】
1月1日(新年)
2月4日(憲法記念日)
3月21日(ベニート・フアレスの生誕)
3月末(セマナ・サンタ)
5月1日(メーデー)
9月16日(独立記念日)
11月18日(革命記念日)
12月25日(クリスマス)

2.雇用契約書と就業規則

◆雇用契約の概要
メキシコの雇用契約は、原則として期間の定めのないものとされています。有期の契約は極めて限定的な場合にのみ認められています。
期間の定めは、これまで提供労務の性質上有期であることが必要な場合や他の労働者の代員として一時的に雇用される場合に限り認められてきました(例:予め期間が定まっている特定のプロジェクトのための業務等)。
2012年12 月の労働法改正により、新たに以下の有期の契約が許容される類型として加わりました。
・季節的雇用
繁忙期における労働需要をカバーするために短期の雇用契約を締結できる。
・試用期間
従業員が業務を遂行する上で必要な知識・技術を有しているかどうかを評価するための期間。一般労働者の場合は 30 日、管理職・役員については 180 日に限り認められる。
・初期研修期間
従業員が会社の指揮命令の下で業務に必要な知識・技術を習得するための研修期間。一般労働者の場合は 3 か月、管理職・役員については 6 か月に限り認められる。
試用期間・初期研修期間中、会社は、当該従業員に適性がないと判断すれば、労使の代表からなる生産性・教育研修合同委員会の意見を聴いた上で、解雇補償金を支払うことなく雇用契約を終了させることができます。
試用期間・初期研修期間としての取扱いが認められるためには、雇用契約を締結し、社会保障上の支払義務等について定める必要があり、かかる要件を満たさない場合、期限の定めのない雇用契約とみなされます。

◆就業規則について
メキシコでは労働者が退職後に会社を提訴し、労働争議に発展することがたびたび発生します。メキシコの弁護士は労働争議に関して、労働者が非常に有利に取扱われるために、労働者からの依頼を断らない傾向にあります。
このことから、有事の際の根拠資料として、雇用契約書および就業規則は重要となります。これらの書類は2部ずつ作成し、必ず両当事者のサインを入れ、適切に1部ずつ保管する必要があります。また、就業規則に関しては、全従業員が閲覧可能な状況にしておかなければ、その内容が認められない場合もあるので、全従業員が集まる食堂などにも掲げておく等の対応が必要となります。
就業規則は画一的に定められたルールであり、雇用契約は両当事者により定められたルールとなります。就業規則と雇用契約の記載内容が違った場合には、会社の画一的なルールである就業規則が基本的には優先して適用されます。会社は従業員に何かしらの処分を行う際には、就業規則にその根拠を求めることとなります。 ただし、このような前提条件はあまり意味をなさず、メキシコでは就業規則であろうと雇用契約であろうと、基本的には従業員に有利なように判断されることが多いようです。

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