労務・労働法
目次
1.コロンビアの労働契約 | ■雇用契約書/■労働契約の分類/■解雇とレイオフ |
2.コロンビアの労働環境 | ■労働基準/■雇用主の義務 |
3.コロンビアの国際人事労務 | ■ワークパーミット/■現地雇用義務と外国人労働者 |
1.コロンビアの労働契約
■雇用契約書
コロンビアの雇用関係において、書面による契約は求められません。コロンビアの労働法では、以下の1つでも該当する場合には、雇用関係が発生しているとみなします。
・個人が、雇用主に対して役務提供をする
・雇用主が継続的に、役務提供の時間と場所を指定し、かつ労働規則を課し命令を出す関係にある
・雇用主が、提供された役務に対して報酬を支払う
なお、以下の条件を満たす場合には、雇用契約書の作成が必要となります。
・従業員が個人で業務に従事する
・継続的な雇用主と従業員の従属関係がある
・従業員の労働に対して報酬が用意される
・期間が限定されている
また、採用時に下記のような条件を加える場合、書面による合意が必要となります。
・試験採用期間
・給料に関する取り決め
・解雇処分条項(法律で定められているものを除く)
【雇用契約書の必須条項】
・締約国の名前と身分証明書
・契約が実行される場所と日付
・従業員の就労場所
・従業員の業務内容
・給料の支払い条件と金額
・契約期間(不定、固定、または活動)
・契約の終了の規則
■労働契約の分類
コロンビアの労働法では、原則として雇用期間を定めた法律はありません。従って労働契約によってその期間を定めています。労働契約は、定められた契約期間に基づき、以下の4つに分類されています。
■労働契約の分類
コロンビアの労働法では、原則として雇用期間を定めた法律はありません。従って労働契約によってその期間を定めています。労働契約は、定められた契約期間に基づき、以下の4つに分類されています。
- ・無期労働契約(Indefinite term)
- 労働契約期間は、労働関係の合意と、実施される作業の範囲に依存します。このため、両者いずれかの合意の取り消しにより、労働契約は解消されます。
- ・有期労働契約(Fixed term)
- この形態は、原則として3年以上の契約を結ぶことは出来ず、また契約を結ぶ際に書面による合意が必要となります。有期労働契約にも1年未満のものと、1~3年の2種類あります。
1年未満の契約の場合、契約更新の上限は3年までと制限されています。一方で、1~3年の契約の場合、無期限での更新が可能とされています。しかし無期限の更新を行っても、契約内容が無期労働契約に変更されることはありません。 - ・請負労働契約(For the time required to complete the assigned task)
- 特定の業務の遂行を約束する労働契約です。作業期間や時間などを指定されることはなく、契約に基づいて依頼された業務が完成されるまで契約は続きます。
- ・臨時労働契約(Occasional, accidental or transitory)
- 雇用主の通常の営業活動以外の業務が発生した場合に、一時的に行われる契約です。契約期間は1か月未満と定められています。
■解雇とレイオフ
コロンビアでは、雇用契約解除に際して、事前に通告する期間を設けることを義務付けています。あらかじめ期限が定められた契約の場合、雇用主は期限の30日前に通知する必要があります。従業員は、30日前に通知を受けなかった場合、雇用契約を自動更新することができます。
憲法や雇用契約に定められた、正当な事由により契約を終了する場合には、雇用主は期限の15日前に通知する必要があります。(1965年政令第70条2351号)。事前の通告なく一方的に解消した場合、解消を申し入れた方は、その結果起こるであろう損害・喪失等の損害賠償責任を負います。
コロンビアにおけるレイオフは、労働契約を結んでいる従業員の一定数を、6か月未満の一時解雇処分にすることを指します。レイオフと認められるための要件は、従業員の人数に対しての余剰人員の割合で判断されます。
従業員を個別に余剰人員として処分する場合、レイオフとは認められません。雇用主は解雇により生じる退職金等のすべての義務を果たさねばなりません。
従業員数 | 必要割合 |
11~49 | 30% |
50~99 | 20% |
100~199 | 15% |
200~499 | 9% |
500~999 | 7% |
1000~ | 5% |
2. コロンビアの労働環境
■労働基準
- ・賃金
- コロンビアの最低賃金は、賃金としての額面と通勤手当の合計を表しています。これに加えて、通常の従業員は、残業手当・休日出勤手当・ボーナスなどが加算されます。
コロンビア政府は毎年末に、月の法定賃金(MLMW)を発表しています。2015年度のMLMWは約270USドルとされています。 - ・労働時間
- コロンビアの労働法では、法定労働時間を、1日8時間・週48時間・週6日以内に制限しています。労働省の許可を受けて、かつ土曜日に休暇を取ることが約束されると、週12時間以内の時間外労働を行うことができます。また雇用主は、勤務時間内に必ず休憩時間を取らせなければなりません。
このような制限からコロンビアの労働時間は、正社員でもシフト交代制度を採用することが通例となっています。例えば、一日の勤務時間内の休憩時間をなくす代わりに、6時間を週6日にするなどしています。また特別な措置として、連続した3週間の労働時間が、平均して1週間48時間以内の場合、1日8時間・週48時間の制限を超えることを認めています。
■雇用主の義務
コロンビアの労働法は、正社員が5名以上いる雇用主に対して、就業規則の作成を義務付けています。コロンビアの労働法では、雇用関係上の雇用主の権利として、「業務命令を下すことができる・労働条件の変更をすることができる」の2点を挙げています。しかし、コロンビア憲法では、従業員の最低限の労働環境を保証するように定められており、雇用主の権利に一定の制限を設けています。
例えば、就業規則を一元的に変更する際には、その従業員の家族の状況や、健康等を考慮しなければなりません。またその変更に際して、給料の削減などの損害を従業員に与えてはならないとされています。
このほか雇用主に課された義務は、以下の通りです。
- ○毎月の義務
- ・年金
従業員の給与の16%を年金として徴収します。このうちの12%は雇用主の負担となります。
・労災
企業の経済活動が分類されるリスク種類・実際の職場の事故発生率等により、名目賃金月額の0.348~8.7%を雇用主が負担します。 - ○半期ごとの義務
- ・法定賞与
給与30日分の額面を、年2回に分けて支払います。 - ○毎年の義務
- ・退職金積立金:退職金基金への支払い
毎年2月15日までに、就労1年に対し、給与1カ月分を納めなければなりません。
・退職金積立利子:被雇用者への支払い
毎年12月31日に清算される退職金積立金の12%相当の支払いが義務付けられています。
3.コロンビアの国際人事労務
■ワークパーミット
外国人がコロンビアで働くには事前にビザ(査証)の取得が必要となります。コロンビアでの活動目的や滞在期間によって、商用査証(NEGOCIOS)と一時査証(Visa Temporal Especial)に分かれます。
・商用査証(NEGOCIOS) : 2013年政令第834号第6条
コロンビアに進出し、長期にわたってビジネス活動するために取得するビザです。その活動目的により、NE1~NE4の4つに分類されます。
種類 | 目的 | 期間 |
NE1 | ・コロンビアでの会社設立 ・投資などその他ビジネス | 有効期間:3年 滞在日数:最長180日/年 |
NE2 | 自由貿易協定など国際協定に基づくビジネス | 有効期間:4年 累積滞在日数:2年以内 |
NE4 | コロンビア企業と取引を有する企業のコロンビア進出 | 有効期間:最長5年間 滞在日数:180日以下/年 |
・一時査証(Visa Temporal Especial) : 2014年政令第132号
コロンビア企業と、外注のような一時的な契約のためにコロンビアまで行く必要がある場合などに使用されます。コロンビアでの活動内容などにより、TP1~TP14の14種類に分類されます。
種類 | 目的 | 対象 | 期間 |
TP1 | 講演・研究調査・外国映画の制作など | 研究員・プロダクションスタッフなど | 有効期間:1年間 (複数回入国可能) |
TP4 | コロンビアの法人・個人との契約の履行(公演等) | コロンビアの法人・個人と契約を結んだ団体に所属する者 | 有効期間:契約期間と同じ (3年間未満) |
TP12 | 企業研修や、化学・スポーツなどの諸行事 | 研修、行事の参加者 | 有効期間:3年間 (複数回入国可能) |
TP13 | 専門的な技術支援 | 技術者・研究者 (雇用契約の有無は問わない) | 有効期間:180日 (複数回入国可能) |
■現地雇用義務と外国人労働者
現在のコロンビアの労働法には、現地人雇用義務のような規定はありません。かつて労働法74条において、現地人労働者と外国人労働者の雇用者数の割合を定められてきましたが、2010年政令第1429号により廃止されました。
同一企業・組織において、外国人と同じ業務に従事するコロンビア人は、外国人と同じ賃金を要求する権利を持ちます(労働法第143条)。外国人労働者も雇用・労働の面でコロンビア人と同じ、権利と義務を負います(1991年憲法第100条及び労働法第143条)。しかし、公共の福祉の観点から、一部権利の制限や特別な措置が講じられることもあります。
外国企業がコロンビア国内で、現地人を従業員として雇用契約を結ぶ場合、この契約はコロンビア企業と同様の規則が適用されます。また、コロンビア国内で雇用関係が発生している場合、雇用主の国籍や雇用契約の締結場所を問わず、コロンビアの法律が適用されます。