カンボジア進出支援

税務・税法

目次

1.カンボジアの租税体系 ■税目の種類
2.個人所得に対する税務 ■個人所得税の概要 ■給与税 ■課税対象となる給与額の算定 ■給与税率及び税額の計算 ■給与税の申告・納付
3.法人所得に対する税務 ■利潤税の概要 ■税額計算 ■申告・納税
4.付加価値税 ■付加価値税の概要 ■納税義務者 ■VATの非課税取引 ■納付税額の計算 ■税率 ■申告・納税

1.カンボジアの租税体系

■税目の種類
カンボジアの国内法においては、以下のような種類の税金が定められています。これらの税目には、日本のように、国税・地方税という区分はなく、全て国が徴収する国税となっていて、税務局が管轄しています。その中で、徴収・負担の方法により「直接税」と「間接税」に分かれています。

【主な税金の種類】
税目科目
直接税所得税類利潤税(Profit Tax)
給与税(Tax on Salary)
資産税類資産譲渡税(Property Transfer Tax)
その他その他(特許税、印紙税など)
間接税所得税類源泉所得税(Withholding Tax)
流通税類付加価値税(Value Added Tax)
特定商品・サービス税 (Specific Tax on Certain Merchandise and Services)
関税類輸出入関税(Import and Export Duties)
その他その他(宿泊施設税、公共証明税など)

2.個人所得に対する税務

■個人所得税の概要
カンボジアにおける個人所得に対する税制は、日本の所得税と異なり、「給与税」と「利潤税(Profit tax)」という2種類の税金が存在し、所得の区分に応じていずれかの税金が課税される形になります。
日本では、個人が稼得した所得に対して、「個人所得税」という一つの税金が課税されます。一方、カンボジアでは、個人の所得のうち、給与所得のみを分離して「給与税」が課税され、その他の所得に対しては、「利潤税」が課税される、つまり個人の所得に対して、2種類の税金が存在することになります。
したがって、カンボジアにおいては、個人の場合で給与収入のみの者については「給与税」のみが課税され、給与以外の収入も発生している場合には、「給与税」と「利潤税」の両方が課税される形になります。

【課税所得の範囲】
居住者非居住者
カンボジアにおいて発生した所得(国内源泉所得)課税
カンボジア以外の国で発生した所得(国外源泉所得)課税非課税

カンボジアにおける「居住者」と判定された場合には、カンボジア国内の所得だけでなく、所得が発生した場所に関わらず、他国において発生した所得の全てが課税対象となります。一方で、「非居住者」と判定された場合には、カンボジア国内で発生した所得のみが課税の対象となります。

■給与税
給与税とは、雇用関係から生じる給与に対して課される税金です。上述の通り、個人所得に対する税金は給与税と利潤税という2つの形態で課税されますが、事業所得や不動産所得等の給与所得以外の所得を得ている納税者はそれほど多くないこともあり、給与税が個人に対する税金の中心的存在となります。給与税の課税対象は支給給与とフリンジベネフィットであり、それぞれに別々の税率が適用されます。また、日本のように納税者が課税年度終了後に確定申告をする必要はなく、雇用者が給与支給時の翌月に申告・納付することで納税プロセスが完結します。

■課税対象となる給与額の算定
給与税の課税対象となる給与は、通常の雇用契約に基づき支払われる給与・賃金のほかに、雇い主が従業員に対して無償、又は安価な価格による商品・サービスの提供や、個人的な目的のために使用する車・住宅・旅行費用・教育費用などを会社が負担してあげた場合にも、給与税の課税対象となります。
つまり、会社から個人が受けた経済的便益(ベネフィット)は、すべて課税の対象となるため、単純に給与額のみを課税所得としてはならないことに、注意してください。
また、もう一つの注意点としては、①純粋な給与額と、②その他のフリンジベネフィットには、異なる税率が課される点です。したがって別々に、所得金額を集計する必要があります。
上記①、②それぞれの範囲は、以下のように規定されています(改正42条8項)。

①支給給与金額
報酬、賃金、ボーナス、残業手当、従業員貸付金及び給料の前払い等が含まれます。
②フリンジベネフィット(付加給付)
フリンジベネフィットとは、給与所得者が本来の給与のほかに受ける経済的利益をいいます。簡単に言えば、会社が経済的な負担をして行う福利厚生のことです。例えば、以下のようなものが含まれます。

・社用車の個人使用
・住宅手当の支給(施設や使用人の費用も含む)
・優遇利率の貸付金や社内割引販売
・社員教育費
・一定の保険料の会社負担分
・社会保険料
・福利厚生費

■給与税率及び税額の計算
上記で求めた課税給与所得金額に税率を乗じて、いよいよ給与税額を算出することになります。ただし、前述のとおり、①給与支給額と、②フリンジベネフィットとでは、異なった税率が設定されているため、別々に計算することになる点、注意してください。それぞれの税率は、以下のとおりです。

①給与支給額に対する税率(改正47条)
給与支給額については超過累進課税の対象となります。税率は以下に示す通りです。
月間給与所得額(リエル)税率
0~500,0000%
500,001~1,250,0005%
1,250,001~8,500,00010%
8,500,001~12,500,00015%
12,500,001~20%
②フリンジベネフィットに対する税率(改正48条)
フリンジベネフィットについては、一律20%の税率が課されます。
③非居住者に対する給与の場合(改正49条)
非居住者については、上記の①、②の区別がなく、一律20%の税率が課されます。

■給与税の申告・納付
カンボジアにおいては、個人で確定申告書を税務署へ提出する制度はなく、給与税の月次申告として、給与支払月の翌月15日までに税務署に対して申告・納付を行う形となります。つまり、年次での確定申告の義務はありません(改正41条)。
現状のカンボジアにおいては、所得税の納税については雇用者と従業員による共同責任とされていますが、まず、納税義務が負わされるのは雇用者側とされています。

3.法人所得に対する税務

■利潤税の概要
法人の得る収入については、全て利潤税の対象となります。日本では法人所得税と個人所得税は明確に区分されており、それぞれが別々の法律によって規定されています。しかし、カンボジアでは法人・個人を問わず、事業活動等から得た所得は利潤税の課税対象となります。租税法体系がまだまだ整備されておらず、利潤税の中で自然人を対象とした規定と事業体を対象とした規定が混在しているため注意が必要です。
利潤税の納税方法は、以下の3つの方法が規定されています。

①申告納税方式(Real regime)
②簡易課税方式(Simplified regime)
③推計課税方式(Estimated regime)

大法人については①申告納税方式の適用が義務付けられていますが、納税者の大半は③推計課税方式を採用しています。このように表面上は法制度が整備されているように見えますが、実際は税務当局の判断がすべて(大半が「推計課税方式」であるため)であり、必ずしも法律が遵守されているわけではない状況であることに注意を必要とします。

■税額計算
利潤税の税率は、通常20%が適用されます。その他、特定の産業については特別税率が設定されています(20条1項)。 原油又は天然ガスの生産分与契約、木材、鉱石、金そして宝石を含む天然資源の開発からの課税所得に対しては、30%の税率が適用されます(20条2項)。
生命保険、損害保険又は再保険業を行う保険会社は、カンボジアで受領した総保険料収入を課税所得として5%の税率が適用されますが、非保険収益については、通常税率である20%が適用されます(21条1項)。

【課税所得の範囲】
課税区分税率
一般法人(投資優遇措置により軽減税率が適用される場合を除く)20%
原油・ガスの生産分与契約及び木材、鉱石、金、宝石を含む天然資源の開発30%
生命保険、損害保険又は再保険業を行う保険会社5%

出所:Cambodia Pocket Tax Book

■最低代替税
課税所得がマイナスになるなどにより、税額が発生しない場合であっても、利潤税の代わりに最低代替税を納める必要があります。最低代替税とは、利潤税とは別の税であり、VATを除く年間売上高に対して1%を乗じて算出した金額になります。ただし、この最低代替税については利潤税の税額を最低代替税が上回った場合にのみ適用されるため、利潤税が年間売上高の1%を超えた場合には、利潤税のみを納めることになります(24条)。また、投資優遇措置(QIP)の適用企業は、この最低代替税は、免除されます。

■申告・納税

●確定申告
利潤税の確定申告書は,課税年度の終了日から3カ月以内に提出する必要があります。また、会社が利益を計上しておらず、所得に対する利潤税が発生していない場合であっても、上記の最低代替税を納める必要があるため、申告書の提出が必要となります(29条1項)。
●予定申告
法人は0%の投資優遇措置を受ける法人を除き、毎月の売上高又は総収入額(VATを除く額)の1%に相当する金額を、翌月の15日までに申告、納付しなければいけません。
この予定納税額は、年度末の確定申告における利潤税から控除されます。また、前納された予定納税額が納めるべき利潤税額を上回る場合には、還付を受けるか、あるいは翌課税年度の予定納税額とすることができます(28条)。

4.付加価値税

・付加価値税の概要
付加価値税(VAT:Value Added Tax)とは、カンボジア国内における付加価値を課税対象とする税金であり、以下のような特徴を有しています。

・物品、サービスの消費に対して課される間接税である
・税金の負担者は最終消費者である
・中間業者は税負担しないが、納税義務を負う
・毎月申告納付する義務がある(VATが発生した月の翌月20日以内に申告・納税)

・納税義務者
VATの負担者は最終消費者ですが、納付義務を負うのは、VAT課税対象物品の販売あるいはサービスの提供を行う事業者(VAT登録事業者)、並びに物品の輸入者であり、個人・法人を問わず納税義務が発生します(59条)。
また、代理人や支店を通じてカンボジア国内で事業を営む外国法人にもVATの納税義務があります。

・納付税額の計算
カンボジア企業が顧客から販売・サービス等の対価を受け取る場合、その対価の額に税率を乗じた付加価値税(売上VAT)を徴収し、また購入・サービス等の対価を支払う場合、同じくその支払われる対価の額に税率を乗じた付加価値税(仕入VAT)を支払うことになります。
納付すべき税額については、毎月受け取った売上VATから、支払ったVATを控除して算出します。(控除方式)(66条2項)

●計算式
納付税額=売上VAT-仕入VAT

・税率
付加価値税の税率は、通常10%が適用されますが、カンボジアからの輸出取引及び国外で提供されたサービス並びに国際的な運送サービスについては0%の税率が適用されます(64条1項、2項)。

●税率0%と非課税の違い
・0%……課税対象ではあるが、実税率は0%であるため、結果税額が生じない
・非課税……そもそも、VATの課税対象とはならない

・申告・納税
VATの納税義務者は、原則として納付すべきVATがある場合には、翌月20日までに所轄税務署へ申告書を提出し、納税を行う必要があります(70条)。

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