カンボジア進出支援

カンボジアの会社法

目次

1. 株主(株主総会) ■株主の人数 ■株主総会
2. 取締役(会) ■取締役の人数 ■取締役の国籍・居住地 ■取締役の選任・解任
3.監査役 ■監査役の選任・解任 ■監査役の権利と義務
4.株式 ■株式の種類 ■株式の発行 ■その他の個別規定

1. 株主(株主総会)

■株主の人数
非公開会社は1名以上30名以下の株主により設立することができます(86条)。株主が1名の場合は、一人会社(single member private limited company)と呼ばれます。なお、公開会社の場合の株主の人数については、規定されていません。 カンボジアの企業法においては、一人会社と通常の非公開会社の要件は同じものと規定されているため(86条)、一人会社を含め、非公開会社として記載していきます。

非公開 公開
株主数 1~30名※ 規定なし

※株主が1名の場合は、一人会社(single member private limited company)という

■株主総会

●株主総会の種類
カンボジアにおける株主総会は、会社の設立後1年以内に開催される創立総会、その後、一年に一度開催される定期株主総会、取締役が必要と認める場合などに開催される臨時株主総会の3つの種類があります。
創立総会は、会社設立が完了した後1年以内に開催しなければなりません。
定時株主総会については、創立総会の後年に一度開催する必要があります(117条)。定時総会では、株主への決算報告や定款の変更、配当金の変更などが主な決議事項となります。なお、定款の変更とは、社名の変更、会社の目的、定足数の変更、資本金の減少などが含まれます(238条)。

●株主総会の決議方法

[定足数]
定款に特に定めがない限り、株主総会の定足数要件は、議決権株式の過半数を保有する株主又は代理人の出席、となります(217条)。株主総会の開会時に定足数に足りていれば出席した株主は会議の議事を進めることができます。株主総会開会時に定足数に足りていない場合、出席した株主は日時と場所を定めて会議を延期することができますが、他の議事を処理することはできません(217条)。
[決議要件]
株主総会の決議には、普通決議と特別決議があります。
普通決議とは、決議に票を投じた株主の議決権の過半数の賛成による決議をいいます(88条7項)。
一方、特別決議とは、決議に票を投じた株主又は当該決議への議決権を有する株主の議決権の3分の2以上の賛成による決議をいいます(88条10項)。特別決議事項として会社法に定められているのは、増資及び減資(150条)、会社定款の改正(236条)、合併の承認(245条)、清算及び解散の提案(252、252条)、などがあります。
【普通決議と特別決議の決議要件】
普通決議 特別決議
定足数 議決権の過半数 同左
決議要件 議決権の過半数 3分の2以上

2. 取締役(会)

取締役については、非公開会社と公開会社で、最低人数の規定が異なりますが、その他の項目については、大きな違いはありません。

■取締役の人数
非公開の場合、取締役は1名以上設置しなければならず、公開会社の場合には3名以上の取締役を設置しなければなりません(118条)。

■取締役の国籍・居住地
会社法上、居住地や国籍、本籍についての明文規定はありません。したがって、実務上カンボジア国内に居住していない日本人が取締役になることが可能です。

■取締役の選任・解任
議決権を持つ株主は、株主総会の普通決議によって、取締役を選任しなければなりません(118条)。任期が同時に終了しないように、取締役の任期を交互に設定することができます(122条)。また、解任方法は、株主総会の普通決議によります。この場合、取締役は理由の有無に関係なく解任されます(124条)。

3. 監査役

有限責任会社は、原則として監査役を設置しなければならないとされていますが、非公開会社の場合は、監査役を設置しないことができます(230条)。

非公開 公開
設置義務 任意 必置
人数 規定なし 同左
選任方法 株主総会普通決議 同左
解任方法 株主総会普通決議 同左

■監査役の選任・解任
監査役の選任は、株主総会の普通決議によって行われます(229条)。監査役の任期は1年間ですが、株主総会で後任の監査役が選任されない場合には、現職の監査役の任期が自動的に継続されます(229条)。
解任方法としては、株主総会の決議により監査役を解任することができます。この場合、同時に新しい監査役を選任します。ただし、裁判所によって指名された監査役あるいは臨時株主総会によって指名された監査役は、解任することができません(232条)。
監査役の欠員が生じた場合、取締役は、欠員が生じた日から21日以内に株主総会特別決議を開催しなければなりません(232条)。会社に監査役がいない場合、株主又は取締役の要請を受けて、裁判所は監査役を指名することができ、当該監査役は後任の監査役が選任されるまで、監査役となります(233条)。

■監査役の権利と義務
監査役は株主への監査報告のために、調査を実施する必要があります。監査役は前任者を含む取締役、執行役、従業員などの業務の状況を聴取して、業務が適正に行われているかを監督する責任を有します。
また、監査役は株主総会に出席し、監査役としての義務に関わる問題について質問をする権利を有しています。取締役は、株主総会の10日前までに監査役又は前任の監査役に質問を渡さなければなりません。監査役又は前任の監査役は会社の決議に参加し、監査役としての義務に関する質問に答えなければなりません(234条)。

・株主への報告のための調査権
・株主総会での意見陳述権
・株主総会での質問への回答

4.株式

■株式の種類
定款に定めることで、普通株式の他に種類株式を発行することができます。種類株式とは、議決権や配当の分配について、普通株式とは異なる権利を有する株式のことをいい、会社法では、優先株式、転換株式、償還株式、譲渡制限株式の発行を認めています(145条)。種類株式を発行する場合は、種類株式が持つ権利、制限、その他条件を定款に記載しなければなりません。

【株式の種類】
株式 内容
普通株式 普通株主は、主に以下の権利を有します(144条)。
・株主総会での投票
・配当を受け取る権利 ・解散に際して会社の残余財産を受け取る
※定款に記載がない限り、会社の株式は普通株式とみなされます。
種類株式 会社法が規定する種類株式は、以下の4つです。
転換株式
転換株式とは、定めておいた事項が発生した時点で、当会社又は他の会社の株式や社債に転換することができる株式のことをいいます(145条a)。
優先株式
優先株式とは、配当金や会社清算時の残余財産を普通株式に優先して受取る権利を有する株式をいいます(145条b)。
償還株式
償還優先株主とは、保有主の要求又は償還優先株主の株券に規定された条件に従って、出資の償還が受けられる株式のことをいいます(145条c)。
譲渡制限株式
譲渡制限株式は、株主が他者に対して株式を譲渡する権利を制限された株式のことをいいます(145条d)。

■株式の発行
株式の発行は、取締役(会)の意志決定により行うことができます(146条)。取締役は発行価額を定めますが、対価の種類は、現金の他、商標権、著作権、特許権、その他の無形資産の使用権、役務提供なども認められています。対価の支払が完了した後、株式を発行できます。ただし、公開会社の場合には、対価を役務とすることはできません。
定款に別段の定めがない場合には、1株あたりの額面金額4,000リエル、最低発行株式数が1,000株以上となります。額面金額よりも低い金額で株式を発行する割引発行は、カンボジア会社法では認められておりません(143条)。

●その他の個別規定

増資
会社は、特別決議の承認を得ることによって増資を実施することができます(150条)。資本金の変更は、会社の基礎的重要事項の変更と考えらえるために、特別決議が要求されていることに注意が必要です。
減資
減資を行う場合には、資本金の減少により、会社資産が流出することになります。そのため、意思決定は特別決議により行わなければなりません(150条)。さらに、以下の要件に該当する場合には、仮に特別決議の承認を得ても減資をすることができません。

・減資を行った後、債務が支払えなくなる場合
・資産の正味実現可能価額(realizable value)が債務額を超えない場合

この条件に違反して払戻しが行われた場合には、会社の債権者は金銭又は現物による払い戻しの返還を直接裁判所に訴えることができます。債務の強制執行は、申し立ての日から2年後に行われます。

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